要約

  • 現在の基準である2018年Interim Supplementary Proceduresは、申立人が重大な影響を知ってから120日以内の提出を求める一方、ICANNの作為または不作為から12カ月を超える提出を認めない。
  • IRP-IOTの2024年案は、通常の起点を「自らが重大な影響を受けたことを知った、または合理的に知るべきだった時」と明確化する。外側の期限は24カ月へ延び、絶対的な上限は4年となる。
  • 二つの期限は異なる出来事から始まる。決定が段階的に実施される場合、Bylaws上のClaimantに必要な、違反との直接かつ因果的な損害が後から生じることがある。
  • Rule 4Dは24カ月後の救済経路だが、自動延長ではない。本人の原因ではなく支配も及ばない例外的事情を明白かつ説得的な証拠で示し、争議書案を添え、別の30日以内に申請する必要がある。
  • 終局性には正当な価値がある。ALACは24カ月を予見可能性との均衡として支持する。LINXは適格性より先に期限が切れ得ると批判し、NCSGは例外を残した36カ月を提案した。
  • ICANNは、行為、実施、通知、重大な影響の主張、120日と24カ月、RFR、CEP、Rule 4D、4年境界を一つに結ぶ「二重時計通知記録」を公開すべきだ。適格性と期限の判断権はIRP Panelに残る。

時計は決定書の上だけで動くのではない

期限を「24カ月」とだけ読むと、問題は単純に見える。起算日を一つ選び、暦を進めればよい。しかし、Rule 4案で扱われる時間は少なくとも四種類ある。

一つ目は制度の時間である。ICANNのBoardまたはStaffが行為をし、あるいは行為をしない。案では、この日が通常の24カ月のreposeと、例外でも越えられない4年の境界を始める。

二つ目は影響と認識の時間である。ある者が行為または不作為によって重大な影響を受け、その事実を知る、または合理的には知るべき状態になる。通常の120日はここから始まる。単にICANNの決定を読んだことでは足りない。BylawsがClaimantに求めるのは、主張される違反と直接かつ因果的につながる傷害または損害である。

三つ目は別の説明責任手続の時間である。同じ争いについて先にRequest for Reconsideration(RFR)を利用した場合、Rule 4C案は、入口要件を満たす申立人に、RFRの最終処分または略式却下の公表後、少なくとも30日を残す仕組みを置く。全面的な時効停止ではなく、固定の追加期間である。

四つ目は例外の時間である。24カ月を過ぎた者は、Rule 4Dにより単独のPanelistへ遅延提出の許可を求め得る。ただし4年以内でなければならず、重大な影響を知った時、または提出可能になった時から30暦日以内に、争議書案とともに申請しなければならない。

数字を一列に並べるだけでは、この四つの時間の所有者が違うことを見落とす。ICANNは行為日を知る。当事者は影響を経験する。RFRの機関は処分を公表する。Panelistは例外を判断する。時間の設計は、権限と立証負担の設計でもある。

2024年案はまだ現行規則ではない

現在と提案を混同してはならない。2024年の文書はパブリックコメントに付された案であり、採択済みの最終Rule 4ではない。本稿の現行基準は、2018年にBoardが採択したInterim Supplementary Proceduresである。

現行の暫定Rule 4も二つの起点を持つ。Claimantが作為または不作為の重大な効果を知ってから120日以内、かつ、その作為または不作為から12カ月以内に提出する。案は外側の期間を倍にし、通常の起点を本人の適格性に近づける。

「重大な効果を知る」という現行文言では、本人が影響を受けていなくても一般的な効果を知っている場合がある。IRP-IOTはこの曖昧さを認め、「本人が重大な影響を受けたことを知る」へ変更した。作為と不作為も別々に書いた。

さらに、RFR後の固定追加期間と、24カ月後の限定的な許可手続を設ける。4年の絶対境界を示すことで、例外の終点も明らかにする。これらは現行の12カ月ルールより申立て可能性を広げる実質的な改善である。

それでも、通常の起点と外側の起点は一致しない。前者はClaimantの状態、後者はICANNの行為に結び付く。

IRP-IOTの説明資料は、この不一致が妥協の結果であることを明記する。最初の相談では12カ月のreposeへの強い反対があり、次の相談ではreposeをなくす案に相当の支持が集まったが、全会一致ではなかった。12カ月より長い外側の期間を求める声もあった。2024年案はRule 4について完全な合意ではなく、意見募集に出すことのできる妥協である。

適格性が後から生まれる場面

LINXの提出意見は、時間差を具体化した。ICANNが方針やプログラムを決定しても、実施が長く遅れることがある。実施が特定の者に届いた時には、決定日から24カ月が過ぎているかもしれない。その者は初めて重大な影響を受け、初めてBylaws上のClaimantになり得るのに、通常の外側の期限は終わっている。

ここで「申立人」という語を先取りしない注意が必要だ。直接の損害がない段階では、その者は潜在的な申立人でしかない。本稿の見出しは、後にClaimantとなる当事者を指す便宜的な表現であり、standingを認めるものではない。

遅れて届く効果は特別な想像ではない。Boardの決議後にStaffが実施計画を作ることがある。契約変更は更新時に初めて作用することがある。プログラムは地域や対象ごとに段階展開される。inactionも、必要な判断が行われないまま時間が経過し、特定の当事者に直接の制約が生じた時に初めて損害として現れる。

個別案件でどの出来事が「争われる作為」なのかは別問題であり、Panelの判断対象になり得る。ここで確定できるのは、決定日、実施日、影響日、認識日を同義語にしてはならないということだ。

Rule 4D自身も分離を想定する。申立人の原因ではなく、かつ支配の及ばない例外的事情が、行為の認識またはClaimantとしての適格性を通常期間内に得ることを妨げた場合を明記している。案は、すべての損害が決定日に見えるとは仮定していない。

ただし、例外を条文に置くことと、利用可能な経路を運用上見えるようにすることは違う。後から影響を受けた者は、どのICANN行為を争うのかを特定し、実施の経緯を集め、因果関係を示し、遅延が自らの支配外だったことを証明する。その時にはRule 4D自身の30日が進んでいる。

終局性の要求は正面から認めるべきだ

24カ月を批判するだけでは、制度が抱える別の損失を無視する。ICANNの決定を永遠に暫定状態へ置くこともできない。

決定は契約、評価、予算、申請計画、技術的な実施を動かす。第三者は決定が確定したと考えて投資する。Staffは人員を配分する。申請者や契約相手は、過去の争いがまだ開いているのかを知る必要がある。後のあらゆる効果が、あらゆる新しい主体について期限を無制限に再開するなら、一つの行為が何十年も争われ得る。

IRP-IOTの理由はcertaintyとforeseeabilityを掲げる。ALACも、24カ月が申立ての機会とICANNの運営の予見可能性を均衡させると評価し、Rule 4CとRule 4Dを保護策と見る。4年境界は、例外があっても最後の終点があることを示す。

この論考は、無期限のdiscovery ruleを提案しない。下流の経済効果がすべて新しいIRPを作るとも主張しない。外側の期限がBylawsに違反するという法的結論も出さない。ICANN Legalは外側の期限が許されるとの立場を公にしており、現在の資料は論争を示すが判決を示さない。

焦点は、終局性が検証できるかである。どの行為が時計を始め、どの実施段階が影響を生み、何が誰へ通知され、どの例外が開かれ、なぜ最終的に閉じたのか。この経路が見えるほど、決定に依存する第三者の確実性も強くなる。

Rule 4Dは別の短い時計を持つ

24カ月後にも手続は残る。Rule 4D案では、例外的事情が認識、適格性または提出を妨げた場合、Panelistが遅延提出を許可できる。

しかし、通常の延長とは違う。申立人はclear and convincing evidenceを示し、standingの説明をし、提出予定のwritten statement of Disputeを添付する。認識または提出能力の回復から30暦日以内に行動しなければならない。ICANNには反論する権利があり、PanelistはIRPの目的と関連する先例を考慮する。4年を越える余地はない。

高い基準には合理性がある。単なる放置を例外的事情へ置き換えることを防ぎ、遅延を行政的に免除せず、判断者へ委ねる。

同時に、申立人へ圧縮された作業を課す。30日のうちに、過去の制度行為を特定し、実施の証拠を集め、損害の直接性を説明し、例外の要件を証明し、IRP本体の文書まで完成させる必要があるかもしれない。

ALACはRule 4Dを支持するが、「limited circumstances」をもっと明確にし、適用のばらつきを減らすよう求めた。NCSGは通常の外側を36カ月へ延ばし、支配外の遅延には例外を残す案を出した。結論は違っても、手続の状態と必要証拠を事前に見えるようにする必要性は共通する。

公表と通知を一つの出来事にしない

Rule 4CはRFRを先に利用する者を扱う。RFRが同じ争いを完全には解決せず、開始時にRule 4B内であれば、最終処分時の残存期間が30日以上ならその期間が残る。そうでなければ、Boardの承認済み処分またはBAMCの略式却下の公表から30日が与えられる。

IRP-IOTはRFR中の全面停止を検討したが、計算の複雑さと総期間の長期化を懸念し、固定追加期間を選んだ。この選択は理解できる。だが、公表が新しい重要な起点になる。

理由文書は、公表なら誰でも利用できる情報だと説明する。一部のIRP-IOTメンバーは、当事者にICANNサイトの監視を強いるべきではなく、直接通知から始めるべきだと主張した。Nikesh B Simmandreeの公開意見も通知を支持した。

公表は共通の公開版を作る。通知は、期限に拘束される特定の当事者へ情報が届いたかを記録する。二つを同じとみなす必要はない。法的起点を公表に置くとしても、記録には正確な公表時刻、安定したURL、通知先、通知方法、配達状態を残せる。Panelは法的効果を判断し、証拠は失われない。

Cooperative Engagement Process(CEP)の時間は未解決である。IRP-IOTはCEP規則を見直す際に固定追加時間を検討するとし、ALACも整合を求めた。明示的な保護ができるまでは、誠実な協議が時計を止めると推測してはならない。「時間への効果は確立していない」と記録することが、沈黙より公正である。

二重時計通知記録の設計

ICANNは、争われ得る効果を持つ作為または不作為ごとに、小さな公開記録を維持すべきだ。目的は全ての潜在的申立人の内心を推測することではない。制度側が保有する事実を保存し、当事者側の主張を同じ時間線へ置くことである。

最低限、次の項目が要る。

  • 作為・不作為の識別子、決定権者、公式時刻、根拠資料。
  • 実施の節目、発効日、影響が予想される主体の区分。
  • 公開通知と直接通知の時刻、経路、宛先、配達または公表の証拠。
  • 24カ月の開始、現在の状態、予定される終了日。
  • 重大な影響と認識に関する主張、主張者、出典。
  • 起点を確定できる場合の120日、できない場合の「不明」または「争いあり」。
  • 関連RFRの提出、最終処分、公表、直接通知。
  • CEPの状態と、適用規則上の時間への効果。
  • Rule 4Dの根拠、証明基準、30日の副時計、Panelistの判断。
  • 4年の絶対境界。
  • 訂正、差し替え、実施変更の履歴。
  • 通常の期限切れ、例外却下、期限判断、和解、取下げ、本案判断を区別した終了理由。

記録は事実と主張を区別する。ICANNはBoardがいつ行為し、文書をいつ公表したかを確定できる。外部企業がいつ損害を理解したかまでは通常わからない。企業が日付と証拠を示し、ICANNが反論し、Panelが判断する。

「不明」「申立てあり」「争いあり」は欠陥ではない。未確定の事実を確定日に見せかける方が危険だ。通知記録はStaffに裁判権を渡さず、後の判断に必要な資料の劣化を防ぐ。

終局を求める第三者にも利点がある。通常経路が終わったのか、例外申請が続いているのか、どの理由で完全に閉じたのかを確認できる。透明な状態は、争いを長引かせるためではなく、争いの有無を明確にするためにある。

参加は判断材料であって判決ではない

今回の相談には九つの提出があった。LINXは遅れて生じる影響を示し、NCSGは36カ月を提案し、ALACは終局性を支持しながらCEPとRule 4Dの明確化を求めた。これらは制度が比較すべき損失を豊かにする。

九件の提出は世界の投票ではなく、個別案件の期限を決めるPanelでもない。Heng Luが「Multi-Stakeholder Mirage」で示す区別はここで重要になる。参加は知識、警告、反対を提供するが、欠席者を拘束する権限へ自動的に変わらない。

IRP-IOTは案を作る。BoardがBylawsの枠内で採択を判断する。ICANNが自らの行為を記録する。Claimantが損害を主張して提出する。ICDRが運営し、IRP Panelがstanding、期限、Rule 4Dを判断する。第三者は終了状態に依存する。「community」という一語で役割を包むと、権限と損失の所在が見えなくなる。

基準日現在、ICANNのPublic Comment一覧は本件のsummary reportをpendingとし、期限を2026年9月1日と表示している。一方、古い手続ページは6月1日を残す。この違いは公開された状態であって、遅延の理由や不正を証明しない。最終文言も予測できない。

次に確認すべき資料は、summary report、IRP-IOT最終案、Boardの理由、移行条項である。2018年のBoard記録には、将来提出期間が拡大されるなら、潜在的申立人がその追加時間の利益を受け、不利益を負わないよう移行文言を置くとの約束がある。12カ月から24カ月への変更で、誰が利益を受けるか、既に期限を過ぎた案件をどう扱うか、採択前の行為に4年境界をどう計算するかを示す必要がある。

一つの規則に一つの時計しかないふりをする必要はない。行為の時計は制度が始める。影響の時計は争いから生まれる。例外の時計はPanelが扱う。絶対境界は規則が決める。四つを同じ記録へ置けば、終局は説明ではなく検証可能な状態になる。

出典

  1. IRP-IOT更新案に関するICANNパブリックコメント
  2. 第3回IRP-IOT公開相談の序文
  3. Rules 3、4、5B、7のクリーン案
  4. IRP-IOTの比較版と理由
  5. 2018年Interim Supplementary Procedures
  6. 2026年7月3日改正ICANN Bylaws
  7. 2018年10月25日のICANN Board決議
  8. London Internet Exchangeの提出意見
  9. ALACの提出意見
  10. NCSGの提出意見
  11. 全九件の提出意見
  12. ICANN Public Comment一覧
  13. Heng Lu — The Multi-Stakeholder Mirage
  14. Heng Lu — On the Agency Problem at the Core of Internet Governance