要約
- 最終データ概要によると、中国語の文字専門家は意見募集後に四つのAI支援手法で追加分析を行い、漢字類似ケース1,612件を特定した。専門家との追加協議を経て、中国語、日本語、韓国語のSSEデータに保守的な方針で反映された。
- 追加されたのは判断ではなく入力である。SSEツールが潜在的な競合集合を抽出し、独立パネルが追加、削除、調整を行って文字列全体の結論と理由を示す。申請者には事実、手続き、システム上の誤りを21日以内に争う限定的な経路もある。
「1,612」という数字だけを見ると、評価結果の件数のように読める。公開資料が述べているのは、そうではない。これは、2025年の意見募集に出されたデータから2026年7月の確定データへ移る間に増えた漢字の類似ケース数である。
確定版のデータ概要は、増分の発見方法も説明している。中国語の文字専門家が、畳み込みニューラルネットワーク、筆画構造分析、ゼルニケモーメント、グリッドヒストグラムを用いたAI支援の追加分析を実施した。その結果、漢字に関する新たな類似ケースが1,612件見つかり、文字専門家との追加協議後、中国語、日本語、韓国語のデータに取り込まれたという。
この変更には実務的な意味がある。新しい対応関係が加われば、ツールが後段へ送る比較候補が増える可能性がある。一方、資料は、1,612件の申請が競合したとも、1,612個の文字列が拒否されたとも、追加された全ケースが実際の申請に一致したとも述べていない。
探索の拡大と権限の移転は別である。
意見募集版から何が動いたのか
2025年10月に公開されたデータは、当初から取りこぼしを避ける設計だった。二つの文字が似ているか判然としない場合、評価パネルが検討できるよう類似集合へ含める。変体関係や推移性を保つため、専門家が直接「紛らわしい」と評価していない組み合わせが機械的に同じ集合へ入ることもあり、その由来と弱い類似度はデータ上で区別される。
公開対象は、共通データ一つと文字体系別の26ファイルだった。Root Zone Label Generation Rulesの全レパートリーを扱い、SSEツールが膨大な比較を事前抽出し、潜在的な競合集合をパネルへ渡す仕組みである。草案にも、ツールの集合は最終結果ではなく、パネルが変更できると明記されていた。
意見募集は2025年10月16日から12月4日まで行われ、11件の提出があった。特定の文字ペアの追加・削除、ツールの公開、継続的なデータ更新、曖昧な場合の保守的な分類などが論点になった。ICANNは、ツールを一般または申請者向けに提供できるか技術面と運用面から検討するとし、このラウンドでは確定版を固定して使い、後から届く情報は将来の作業へ回す方針を示した。
7月の確定版は、意見募集後の漢字分析を隠していない。手法、1,612件という規模、反映先の三ファイル、専門家との追加協議を記載している。「募集締切後の変更」という事実だけで、募集が無視された、あるいは再度の意見募集が当然に必要だったとは言えない。意見を分析し、修正して確定する作業は締切後に行われるからだ。
ただし、確認した公開資料には、1,612件を一件ずつ意見募集版と結び、変更前後の分類、発見経路、専門家の処置を機械可読で示す差分ファイルは見当たらない。また、どの追加関係が将来の申請文字列に実際に作用するかも、まだ分からない。これは公開情報の限界であり、内部に変更履歴や検証がないことの証明ではない。
重要なのは、変更の存在を煽ることではなく、重大な変更から結果までを後からたどれることである。
固定されたデータと動かせる判断
確定データと確定ガイドラインは、ともにバージョン1.0、日付は2026年7月23日である。ガイドラインは、この二つを2026年ラウンドに適用すると定める。新しい意見は引き続き受け付け、関連専門家と議論するが、このラウンドのデータやガイドラインは更新しない。
固定には公平上の利点がある。同じラウンドの申請が、申請時期によって異なる比較データにさらされれば、結果の再現も説明も難しい。共通の版を指定すれば、少なくとも入力の基準はそろう。
しかし、入力を固定しても、パネルの判断まで自動的に固定されるわけではない。SSEツールは潜在的な競合集合の事前抽出レポートを作る。パネルはこれを一つの材料として扱い、必要に応じて追加分析も見る。ツールが示した集合を調整し、加え、外すことができ、最終決定の責任を負う。
ガイドラインが要求するのは、文字単位の分類をそのまま読み上げることではない。データはコードポイントまたはその列の類似度を扱うが、最終判断は文字列全体について行われる。関連する文字体系を母語として読めるパネリストの参加も求める。ツールの結果から外れるときは理由を説明し、難しいケースでは似ていると扱う保守的判断を検討する。
したがって、少なくとも四つの状態を混ぜてはならない。
- 類似ケースが文字体系別データに存在する。
- 固定データを使うツールが潜在的競合集合を提案する。
- パネルが文字列全体の結論と理由を出す。
- 期限内の異議が、事実、手続き、システム上の誤りを検証し、維持または再評価につながる。
第一段階を第三段階と呼べば、データ記録に決定権を与えてしまう。第二段階を技術的に不可争な結論と呼べば、作業効率のための仕組みが制度上の権限へ変わってしまう。
申請を動かすのは最終結果
Applicant Guidebookによれば、視覚的類似性の結論は、比較対象に応じて申請を進行不能にしたり、保留にしたり、別の申請との競合集合を形成したりする。変体文字列集合に属する文字列は関連する結果を共有する。ICANNは評価結果と理由をEvaluation Results Pageで公表するとしている。
結果が重いからこそ、役割分担が必要である。データは見落としたくない関係を記録する。ツールは人手だけでは処理しにくい比較量を減らす。パネルは完全な文字列が同時に委任されたときに利用者の混同確率を生むほど似ているかを判断する。ICANNはプログラム上の効果を適用する。
申請者にはEvaluation Challengeがある。結果を受け取ってから21日以内に、事実、手続き、またはシステム上の誤りを主張できる。誤りが確認されれば、その発見を踏まえて再評価する。確認されなければ元の結果が維持される。これは無制限の再審ではなく、申請内容を実質的に変更するための機会でもない。
この設計は、全自動の判定より責任を明確にし、根拠のない専門家裁量より再現しやすい。それでも、層を結ぶ記録が失われれば弱くなる。どの固定版を使ったか分からない結果は再現できない。パネルがツールの表示を繰り返すだけなら、候補が権限のある判断に化ける。異議で訂正したのに旧結果との関係が残らなければ、将来の読者は何が変わったか分からない。
変更から決定までの受領記録
説明責任のために、公開前の申請情報や保護される審議を公開する必要はない。必要なのは、確定前の重大なデータ変更と、後に権限をもって出される結果を、適切な段階で接続することである。
Daniel Kadeが提案する「変更―決定受領記録」は、まずデータの版とファイルの指紋を固定する。意見募集版から確定版までの追加、削除、再分類ごとに、対象となるコードポイントまたは列、変更前後の状態、由来を記録する。由来は、意見募集への対応、専門家による訂正、専門家による追加探索、AI支援候補、推移性のための追加、機械変換などに分けられる。
さらに、入力日、分析法、理由、影響を受けた文字体系別ファイル、専門家協議の状態、実際の事前抽出に使う関係か説明用だけの関係かを残す。公開資料が全員一致を示さない限り、協議を全専門家の承認と書き換えてはならない。
追加関係が将来の潜在的競合集合に寄与した場合は、保護された記録でツール版と寄与を結ぶ。プログラムが公表を認める段階で、パネルの文字列全体の結論、適用したガイドライン、ツール提案を採用・追加・削除・変更した理由を外部記録へつなぐ。異議、誤りの認定、再評価、訂正、旧結果の置き換えも同じ系列に置く。
これはICANNが公表した要件ではなく、Daniel Kadeによる統制案である。ICANNはすでに最終データをHTMLとXMLで提供している。意見募集版との機械可読差分や、文字体系別・由来別の集計が加われば、保護すべき申請をさらさずに、重大な変更の範囲を評価できる。
1,612件の追加は、AIを拒む理由ではない。AIに判断を委ねる理由でもない。多数の候補を見つける仕組み、文字文化を理解する専門家、文字列全体を判断する独立パネル、限定的な訂正経路が、それぞれの役割を守って初めて一つの制度になる。
出典
- ICANN:文字列類似性評価データとガイドラインの公開、2026年7月30日
- ICANN:確定版String Similarity Evaluation Data概要、バージョン1.0
- ICANN:確定版String Similarity Evaluation Guidelines、バージョン1.0
- ICANN:String Similarity Evaluation資料ページ
- ICANN:SSEデータに関する意見募集
- ICANN:SSEデータ意見募集サマリーレポート
- ICANN:意見募集に付されたSSEデータ概要案
- ICANN:新gTLDプログラム2026年ラウンドApplicant Guidebook
- ICANN:文字列類似性評価結果への異議に関するFAQ
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