要約

  • AS142207の公表経路は2026年7月8日を最後に消えたが、IRT検証(8月4日)とAPNIC-HMオブジェクト更新(8月26日)はその後も続いた。
  • 自己申告容量と観測容量の間には大きな落差がある。
  • 集約データ層の帰属・分類は相互検証が必要であり、単一ソースへの依存は誤帰属を伝播させる。

経路が止まり、レジストリは動き続けた

APNICに登録された AS142207(WJY-AS-AP)は、登録者名に WJY (Shanghai) Technology Co., Ltd.、組織コード ORG-WTCL6-AP、LIRタイプ、上海市浦東新区京諾路310号5階という住所を持ち、2026年1月14日に最終更新された(BTW先回簡報)。RIPEstatのルーティング状況によれば、このASは2026年2月2日 16:00 UTCに初めて可視化され、2026年7月8日 16:00 UTCを最後に公表経路が消えた(RIPEstat routing-status)。最後に見えたプレフィックスは IPv4 の 151.158.14.0/23 であり、2026年8月2日時点では公表プレフィックスも隣接ASもゼロと表示された(RIPEstat routing-status、announced-prefixes)。

しかし、ルーティングの沈黙とは対照的に、レジストリ側の記録は更新を続けていた。IRT-WJY-CN は2026年8月4日に運用者の連絡先を検証し、同日に最終更新されている。さらに APNIC-HM オブジェクトには 2026年8月26日 00:40:00Z の最終更新が残る。つまり、公表経路が消えた後も、運用者または代理者がレジストリ上の連絡先検証とオブジェクト保守を行っていたことになる。

自己申告と観測の落差

PeeringDB の net 41314 は、このASを Cable/DSL/ISP、グローバルスコープ、オープンポリシーとして自己申告し、IPv4で100、IPv6で1000のプレフィックス、5〜10Gbpsの容量、ウェブサイト wjy.me を掲げている(最終更新 2026年1月25日、PeeringDB net 41314)。一方、実際に観測されたのは IPv4 /23 1件と IPv6 /32 1件のみである(IPinfo)。この落差自体は珍しくないが、経路停止後にどの層がどのように更新されるかを追うと、データ層ごとの信頼性の違いが明確になる。

集約データ層の乖離

第三層の集約サービスは互いに矛盾する描写を示す。iamroot.tech は AS142207 を「CERNET New Technology Co., Ltd」に誤帰属させ、大きなプレフィックス数を表示した(iamroot.tech)。IPinfo は曖昧な「Hosting」分類を示した(IPinfo)。IPGeolocation は IPv4・IPv6 ともに経路数0を報告した(IPGeolocation)。Hurricane Electric のスタンプは2026年7月8日(Hurricane Electric)、Qrator Radar の表示窓は2026年9月6日で終わる(Qrator Radar)。

さらに細かい矛盾もある。PeeringDB の org 43054 は街路を「Jinhao Road」と表記するが(PeeringDB org 43054)、APNIC登録は「Jingao Road」である(whois.ipip.net)。また wjy.me は WJY (Hong Kong) Limited という別法人格を掲げ、香港・アムステルダム・日本・ドイツでのLIR・クラウド・コロケーション・IaaS提供とRIPE NCCのLIR志向を示す(wjy.me)。公的な記録には、上海の登録者と香港の事業体を結ぶものが確認できていない。

何が読者に役立つか

  • 「経路が見えない」は「登録が無効」を意味しない。レジストリ層は独自の更新サイクルを持つ(whois.ipip.net)。
  • 自己申告容量(PeeringDB)と観測容量(ルーティングデータ)は常に乖離しうる(PeeringDB net 41314)。
  • 集約層の帰属・分類は相互検証が必要であり、単一ソースへの依存は誤帰属をそのまま伝播させる(iamroot.tech)。