要約

  • Georgia PowerはVogtleとHatchの増出力によって系統に約96MWを加えると説明し、Googleは新料金NU-1を通じて増分発電に伴うゼロ排出クレジットを受け取るとしている。
  • 約9億ドルは発電所の残存運転期間にわたる顧客便益の予測であり、実現済みの値引きでも、公開資料から再計算できる金額でもない。
  • ジョージア州公共サービス委員会の審査はこれからだ。2025年の資源計画にある112MWと、今回の約96MWの差も説明されていない。

この契約を「Googleが原発から96MWを買う」と要約すると、取引の核心を取り違える。Georgia Powerの説明では、VogtleとHatchの同社持分に対する増出力工事によって、約96MWの容量が電力系統に加わり、同社の顧客に供給される。一方、Googleは新しい原発増出力料金NU-1に加入し、増分発電に結び付くゼロ排出クレジット(ZEC)を受け取る。系統が確保する容量、特定の時間に発電された電力量、環境価値を示すクレジットは、関連していても別々の商品だ。公開された説明は、Googleに96MWの専用電源を物理的に割り当てるとも、需要と原発出力を毎時照合するとも述べていない。

したがって評価すべきなのは設備容量の大きさだけでなく、三つの勘定をつなぐ料金の設計である。Googleの支払いが増出力工事のどの費用を負担するのか。残りの資本費や運転費は誰が負担するのか。設備の完成が遅れたり、実際の出力が予測を下回ったりしたとき、料金とクレジットはどう調整されるのか。Georgia Powerは、参加しない顧客を追加費用から保護する構造だと説明しているが、価格、契約期間、費用超過の負担、精算方法、属性の算定式までは公表していない。保護の意図と、保護が実際に機能する仕組みは分けて考える必要がある。

両社が合意を発表したのは2026年9月21日で、ジョージア州公共サービス委員会(PSC)の承認が条件だ。Georgia Powerによると、Googleの加入によって発電所の運転期間中に顧客便益約9億ドルが可能になるという。この金額は会社側の長期予測であり、料金値下げとして実現した額でも、委員会が確定した便益でもない。発表はNU-1料金とHatch 1・2号機の拡張出力増強(EPU)申請についても説明している。Georgia Powerの発表

9億ドルを検証するには、比較対象と時間価値が要る。名目額なのか、割引現在価値なのか。Googleの加入がないケース、増出力工事を行わないケース、別の電源を採用するケースのどれと比べた便益なのか。建設費、資金調達費、運転維持費、発電量、料金収入はどう扱われるのか。どの顧客層が、どの料金項目や精算を通じて利益を受けるのか。今回確認できた公開情報だけでは、算定式を再現できず、総額を顧客間で割り振ることもできない。「予測」として引用することはできるが、すでに顧客に還元されたかのように表現するのは正確でない。

もう一つ、計画値の食い違いがある。Georgia Powerの2025年総合資源計画では、同社持分の原発増出力容量が2030年に92MW、2031~34年に112MWと予測されている。2026年の発表値は約96MWだ。利用可能な資料は、対象ユニット、計画時期、所有持分、算定基準のどれが差を生んだのかを説明していない。数字を憶測で調整するのではなく、申請資料でユニットごとの出力、持分、工事日程を対応づけるべきだ。2025年計画のPDFは今回の確認時に直接開けなかったが、Georgia PowerのIRP公式ページは残っている。IRP資料ページ · 2025年IRP PDF

規制上の出発点も二つの発電所で異なる。Georgia Powerは2025年7月、Vogtle 1・2号機のEPUについてPSCが承認し、54MWの増加を見込むと発表した。一方、Hatch 1・2号機について当時認められたのは、将来の増出力に向けた予備的な計画、許認可、エンジニアリングだった。今回のHatch EPU申請は別途審査を要する。PSCの記録番号228893はHatch 1・2号機の申請に対応するが、提出記録は承認の証明ではない。2025年IRP承認の発表 · PSC記録228893

EPUは新しい原子炉の建設を意味しない。Georgia Powerの説明では、タービン、ポンプ、モーター、冷却設備などを改良し、より高い認可熱出力で運転できるようにする。約96MWはGeorgia Powerの所有持分に関する数字で、複数の所有者がいる両発電所全体の出力ではない。Plant HatchとPlant Vogtleの公式案内も共同所有者の存在を示している。また、原子炉の出力増加に伴う連邦原子力規制委員会(NRC)の許認可審査と、州PSCの料金・顧客負担の審査は別の統制経路だ。連邦のライセンス変更だけで、州の料金負担が決まるわけではない。NRCの出力増加審査 · NRCの公衆参加案内

PSCが確認すべきなのは、最終的なNU-1料金の全条項、Googleの支払い額と期間、ZECの計量・移転、工事費の超過や遅延時の責任、予測を下回る発電時の調整方法である。運転開始後には、承認済みの基準値と実績の差、増分費用、実際に移転したクレジット、顧客層ごとの便益を定期公表できる形にする必要がある。支払いが追加費用を確実に負担し、増えた容量がシステム全体のコストを下げれば、共通利益になり得る。逆に、環境属性だけがGoogleに移り、建設・性能リスクが広い顧客層に残るなら、利益と負担は非対称になる。現時点の資料は、どちらの結論も確定させていない。

今後の監視項目

PSCが承認するNU-1の料金文書、96MWを各機ごとに説明する資料、IRPの92MW・112MWとの照合、Hatchの許認可・停止期間・工事日程、実際の出力・費用・ZEC移転・顧客還元を追うべきだ。計算方法と実績が独立に確認できるまでは、9億ドルは「見込み」のまま扱う必要がある。

主な資料:Georgia Power–Google合意発表、Georgia PowerのIRP資料、PSC記録228893、2025年IRP承認発表、NRCの出力増加案内。