要約

  • ARCEPの試算では、公設FTTH網の半数強で現行の月額卸料金がモデル上の維持費を下回る。対象網の大半では、差額は稼働回線1本当たり月0.50〜2ユーロとされる。
  • 提案額は網ごとの契約交渉を助ける目安であり、自動的な契約改定でも、消費者料金の引き上げでもない。耐障害性強化の投資も含まない。

開放型の光ファイバー網でも、障害修理や設備点検、卸注文の処理、新築物件への引き込みに誰が払うのかは、契約を見なければ分からない。フランスの通信規制当局ARCEPは、この運用費を共通の基準で捉え、インフラ事業者と小売事業者の契約協議に持ち込もうとしている。

ARCEPは2026年10月15日、公設FTTH網を対象とする運用維持費モデルの改訂版と料金ガイドライン案を公表した。インフラ事業者が提供したデータに基づく試算では、対象網の半数を超えるネットワークで、現行の月額卸料金がモデル上の運用維持費を下回る。該当ネットワークの大半では、費用を賄うための調整幅は稼働回線1本当たり月0.50〜2ユーロと推計された。これは対象網の試算であって、成立済みの値上げや全国一律の命令ではない。

卸料金には維持費以外も含まれる。インフラ事業者は受動設備を運用し、小売事業者はアクセスを購入して通信サービスを販売する。小売事業者には初期建設を共同負担して長期使用権を得る方式も、回線を賃借する方式もある。ARCEPは共同出資の権利を初期建設への支払いと位置づけ、日々の維持費とは分けている。運用費は主に共同出資方式の継続料金と、契約方式に応じた賃借料金の一部で回収される。個別請求のサービスは別扱いだ。総月額をそのまま維持費と比べると、建設費や他の義務を混同しかねない。

提案手法は、全国平均の単価を一律に当てはめず、個々の網の特性を使う。固定回線の光への移行が進んだ時点の年間維持費をモデルから求め、個別請求や共同出資で回収されない適格費用を加え、目標稼働回線数で割る。その後、25年間の平均と立ち上げ初期の高い単位費用を反映する係数を適用し、Orangeのローカルループ管路使用料と初期展開の金融費用を加える。目的は現在の契約料金で維持費が賄えるかを見分け、双方が協議する土台を作ることだ。

改訂モデルには、前回の公開協議で寄せられた36件の意見が反映された。ARCEPは故障対応のモデル件数を、データを提供した事業者の観測値に近づけるよう見直し、いくつかの間接費や情報システム費用の前提を引き上げた。補足資料は、相互接続点の点検、設備の適合化、分岐点の監査などを予防保守の要素として挙げる。いずれもモデルの入力であり、個々の網の実支出を監査した結果ではない。

対象範囲は意図的に限られている。予防・事後保守、卸販売、一定の土木設備費、税・占用料、共通管理費、新築建物への延伸は含む。一方、埋設工事や経路変更は地域の判断に左右され、地域間で費用が10倍超異なることもあるためモデル化していない。通常運用を超える将来投資、たとえば耐障害性の強化も、この最低維持費の計算には入らない。複雑な引き込みや未完了の整備は別途扱う必要がある。

この案に拘束力はない。月額の最低参照値は費用不足の識別と交渉のための基準で、協議を置き換えたり、全契約にそのまま書き写したりするものではない。規制原則に照らして説明できるなら、別の計算方法を選ぶ余地もある。具体的な料金の妥当性は契約ごとに検討される。

意見提出期限は2026年11月16日18時(パリ時間)。とくに最低月額料金の計算を定める第3.1.4節への意見を求めている。他の部分はすでに前回協議の対象だった。結果が出れば、規制当局がモデルをどう修正し、交渉の参考値をどう扱うかが明らかになる。2026年6月末時点で、フランスの住居等の95.3%は光に接続可能で、固定ブロードバンド契約の85%が光を利用していた。この全国値は普及度を示すが、各地方網の維持費を賄えるかまでは示さない。

案は運用赤字を見える形にするが、誰が負担するかは決めていない。契約改定、既存料金項目の再配分、個別の規制判断のいずれになるかは、網ごとの協議次第だ。小売価格への転嫁も別に確認する必要がある。焦点は、公共投資が支えてきたオープンアクセスを損なわず、維持費を透明に分担できるかに移る。

出典: Arcepの10月15日発表, 料金ガイドライン案, モデルの解説資料, コストモデルの表計算ファイル.