要約

  • AWSの現行の一般的な無料退出手順では、移行開始予定日の少なくとも2カ月前にサポートへ申請する。クレジット承認前に移行を始めないという条件も別にある。
  • 対象は適格アカウント全体からの完全退出、またはそれらのアカウントにまたがる特定サービスの全データの移行。通常のサービス料金や対象外の専用転送サービスまで無料になる仕組みではない。

クラウド移行の進捗会議で「もう転送できます」と聞けば、普通は喜ぶ。AWSの無料退出を使うなら、その前に確認する日付がある。サポートへの申請日はいつだったか。

10月30日時点の英語版EC2 FAQは、一般的な退出手順として開始予定日の少なくとも2カ月前に申請するよう求めている。さらに、クレジットが承認されるまで移行を始めないよう明記する。申請から時間が経過しただけで承認が発生するわけではない。移行先の検証が終わっても、それが請求処理の承認を兼ねるわけでもない。

技術的な準備と、料金上の準備がそれぞれ存在する。前者を終えた日に後者を発見すれば、せっかくの作業計画を見直すことになる。無料という言葉にも、始業前の事務仕事はある。

データの担当者と申請者をつなぐ

AWS Organizationsを利用している場合、依頼はManagement Accountから提出する。コピーを実行できる権限と、その依頼を出す立場は同じとは限らない。専任のAWSアカウントチームがある顧客は、まずそこに計画を伝える。個別に交渉した利用コミットメントがある場合の選択肢も、同チームとの相談対象になる。

サポートが求める情報には、移行するアカウントとその他の適格アカウント、開始日と完了日、転送量のGB、想定スループットのGbpsがある。出発元と移行先のリージョン、別のクラウドかオンプレミスか、残るデータの扱いも含まれる。必要な情報は顧客の種類や所在地によって多少変わる。

ここで「一つのサービスを移す」という社内用語が試される。ある部署にとっての一つのサービスは、複数のAWSサービスで動いているかもしれない。同じAWSサービスを別部署が使っていることもある。申請に必要なのは、プロジェクトの呼び名より細かな範囲だ。

出口は選べるが、選んだ範囲は全部

一般手順の対象は、すべての適格アカウントからAWSの全データを移す場合、または適格アカウント全体にわたって特定のAWSサービスの全データを移す場合だ。適格アカウントは良好な状態にあり、料金の支払いを担うpayer accountとして指定されている必要がある。

特定サービスを離れながら、ほかのAWSサービスを使い続けることはできる。会社としてAWSとの関係をすべて終わらせることが必須ではない。一方、移しやすいデータだけを選び、同じサービスの残りを引き続き運用する計画が、そのままサービス全体からの退出に当たることもない。

移行期間の終了までには、離れるサービスに残るデータとワークロードを削除するか、アカウントを閉じる。したがって計画には、最後の転送だけでなく出発元を退役させる作業も入る。移行先の検証と元データの扱いを別々の担当者に任せるなら、その引き継ぎを先に決めたい。

古い90日を新しい予定表に貼らない

2024年3月5日のAWS発表は、サポートを通す理由を説明している。日常業務のインターネット転送と、他社クラウドやオンプレミスへの一度限りの移行を、通常のトラフィックだけから見分けるのは難しいためだ。承認後に移行分のクレジットを付与する。

同じ発表には更新履歴が付いている。2026年10月8日と表示された更新は、EU以外の適格顧客に移行完了まで180日を認め、もっと時間が必要なら直ちにサポートへ通知するよう述べる。現行FAQは、クレジットと完了までの予定をサポートが知らせるとしている。以前の一般的な90日という説明を、そのまま現在の日程に持ち込むのは危うい。

適用経路にも違いがある。EU向け付属条項の基本移行期間は30暦日で、延長の仕組みがある。英国向けは180暦日だ。それぞれアカウントの国などの条件を定義している。開始前の2カ月と実施のための移行期間は別の段階であり、足し算だけで全顧客に自動的な8カ月を与えることはできない。

一般的な2カ月の事前申請が最初に加わった日付は、FAQの逐次改訂記録からは確認できていない。確認したのは現行英語版にこの条件があることだ。実務では、その版と自分のアカウントについて確定した予定を使う。

クレジットが消す費目

通常のAWSサービス利用料は残る。対象となるのは退出のための適格なインターネットへのデータ転送で、CloudFront、Direct Connect、Snow Family、Global Acceleratorなどの専用転送サービスは除外される。グローバルネットワークのFAQも、インターネット向け、アベイラビリティーゾーン間、リージョン間を別の転送として説明する。AWS内のリージョンを変える作業を、名前だけで退出プログラムにまとめられるものではない。

AWSは用途を確認し、退出以外に使われたクレジット相当分を請求し直すことがある。無料扱いは、認められた一つの取引に付く。普段の利用者向け配信まで、移行という名札で同じ扱いにできるわけではない。

個別の移行を評価するために必要なのは、情報のそろった申請、サポートの決定、該当アカウントの日程である。開始日を本気で議論する段階で、この3点を計画に入れておく。データが動いた後で無料という見出しを探すより、その方が工程表は静かに済む。

一次資料