要約

  • 2026年9月25日(UTC)時点の公開記録で、AS211392 の自己申告は IPv4 プレフィックス50本・IPv6 プレフィックス3本。レジストリのミラーは IPv4 ルート16本を報告し、独立系パネルは IPv4 を19本・22本と数え、IPv6 はどの記録にも現れなかった。
  • RIPE データベースの自由記述欄にある as-name は「softbank」で、同名の企業との関係を裏づける資料は今回の資料群にない。登録国は英国、観測されたトラフィックの大半は日本と香港に位置し、RPKI の状態もプレフィックスごとに揃っていない。

レジストリに残る記録

IPGeolocation が映した RIPE データベースの aut-num オブジェクトによれば、AS211392 の保有組織は DREAM CLOUD INNOVATION LIMITED(ORG-DCIL3-RIPE)、登録国は英国(GB)、ステータスは ASSIGNED。オブジェクトは2021年5月3日に作成され、同日に最終変更された。as-name フィールドの値は「softbank」で、import/export ポリシーは AS59117 と AS4809 の2つだけを対象とし、管理は RIPE-NCC-END-MNT と英国の LIR メンテナに委ねられている。同じミラーは IPv4 ルート16本、IPv6 ルート0本を報告する。

ここで注意したいのは、as-name が自由記述のラベルにすぎない点である。レジストリは文字列を保管するが、その文字列と実在する企業との関係を検証してはいない。検証されないまま置かれた文字列が、後述するように多数の第三者ツールへそのまま伝播していく。

運営者自身が登録した数字

PeeringDB のネットワークレコード28020は第三者による観測ではなく、運営者側が登録・更新する自己申告である。組織名は DREAM CLOUD LIMITED、ネットワーク種別は NSP、IPv4 プレフィックス50本、IPv6 プレフィックス3本、トラフィック量50〜100 Gbps、比率は balanced、対象範囲はアジア太平洋、ピアリングポリシーは open。IRR as-set は AS211392:AS-CUSTOMERS で、運用拠点として日本の AT TOKYO(CC1/CC2)が記載されている。レコードの最終更新は2025年6月6日、RIR ステータス「ok」の最終更新は2024年6月26日と表示される。

自己申告である以上、この数字が示すのは「そう登録されている」ことであり、「その通りに運用されている」ことではない。供給済みの容量なのか、将来の意図なのか、更新の止まった古い記述なのかは、この資料だけでは決められない。

独立系パネルが観測した数字

Hurricane Electric の BGP ツールキット(ページ末尾のデータ更新は2026年5月7日)は、AS211392 が発信元(origin)として広告している IPv4 プレフィックスを19本、うち RPKI で origin valid とされるものを17本、IPv6 プレフィックスを0本、観測された BGP ピアを7、発信元として観測された IPv4 アドレスを4,864本と数える。同じページは、この ASN に対応する2つ目の IRR オブジェクトも再掲する。RADB の aut-num で、as-name は DREAMCLOUDINNOVATIONLIMITED、管理は MAINT-AS59117-1。1つの ASN に、出自の異なる2つの記述が併存していることになる。

ping.pe の記録は、AS211392 の広告済みプレフィックスを22本とし、表示名に「softbank - DREAM CLOUD INNOVATION LIMITED」を充てる。プレフィックスごとの RPKI 状態には VALID とされるものが並ぶ一方、154.83.23.0/24 は NOT-FOUND と記載される。同じ ASN を扱いながら19本と22本に分かれるのは、観測地点、観測時刻、そしてどのプレフィックスを発信元と数えるかの扱いが異なるためだ。どの本数が正しいかを、この資料だけで決めることはできない。

IPinfo の AS ページは別の角度から同じ ASN を描写する。3,566のホストドメイン、2,048本の IPv4 アドレス、IPv6 アドレスは0本、ネットワーク種別は Hosting、RIPE による割り当て日は2021年5月3日、観測されたピアは6、上流は3(AS23764 CTGNet、AS58453 China Mobile International、AS139076 EnjoyVC Japan)。トラフィックの位置は約54%が日本、約44%が香港で、登録国である英国は0%とされる。

IPinfo の「IPv4 アドレス2,048本」と Hurricane Electric の「発信元として観測された IPv4 アドレス4,864本」は、名前は似ているが別の量である。前者は AS に紐づけられたアドレス空間の集計、後者は観測された発信元アドレスの集計で、大小を直接比べることはできない。

隔たりをどう読むか

説明は少なくとも三つあり、互いに排他的ではない。第一に計測方法の差。パネルごとに観測地点と集計規則が違い、同じネットワークでも本数は動く。第二に記録の鮮度の差。PeeringDB の最終更新は2025年6月6日で、その後の変更が反映されていない可能性がある。第三に、自己申告と実際の広告の差そのもの。ただし、この資料群は「真の発信元プレフィックス集合」を確定してはいない。一致する数字を探すのではなく、複数の観測点を重ねて読むべき対象である。

名前は所有の証拠にならない

本稿の対象は、BTW の公開ディレクトリに softbank DREAM CLOUD INNOVATION LIMITED として登録されている組織である。だが、その名前に含まれる「softbank」という文字列がどこから来たのかは、今回の資料群では確認できない。RIPE の as-name に記された自由記述であり、RADB 側のオブジェクトでは同じ ASN に DREAMCLOUDINNOVATIONLIMITED という別の as-name が付いている。パネルやツールが表示する名称は、こうした登録済みの文字列をそのまま引き写したもので、独立の検証を経たものではない。

したがって、「softbank」という文字列を、同名の企業との資本関係や契約関係、ブランドの同一性の証拠として読むことはできない。表示名が一致することは、出所の同じ文字列が複製された結果を意味しうる。名前ではなく、登録主体、管理責任、そして観測された経路そのものを分けて確認する必要がある。

組織と所在地のねじれ

PeeringDB の組織レコード30519は DREAM CLOUD LIMITED の名で、米国ネバダ州ラスベガスの住所を持ち、2つのネットワークを掲載する。AS211392(表示名 DREAM CLOUD)と、「DREAM CLOUD INNOVATION AS135074」である。登録国は英国、組織レコードの住所は米国、観測トラフィックの大半は日本と香港。同じ表記の組織が複数の法域にまたがって現れるが、これらの記録が同一の法人を指すのか、関連する別法人を指すのか、単なる表記の揺れなのかは、この資料群では確定しない。AS135074 や MAINT-AS59117-1、英国の LIR メンテナを誰が制御しているかも、同様に不明である。

何が言えて、何が言えないか

確認できること。第一に、2026年9月25日(UTC)に取得した各ページが、以上のような記述を実際に掲載していたこと。第二に、レジストリのミラー上で AS211392 の保有組織が DREAM CLOUD INNOVATION LIMITED とされ、登録国が英国であること。第三に、as-name という自由記述欄に「softbank」という文字列が入っていること。第四に、自己申告の50本・3本に対して、レジストリのミラーが16本、独立系パネルが19本と22本を数え、IPv6 がどこにも現れなかったこと。

確認できないこと。真の発信元プレフィックス集合。文字列と実在企業の関係。PeeringDB の数字が供給容量・意図・古い記述のどれを表すのか。AS135074、MAINT-AS59117-1、英国の LIR メンテナの支配関係。顧客向けのクラウド製品や契約、企業開示の存在。記載された日付は記録の日付であり、運用上の出来事の日付ではない。ルーティングの観測値は変動するため、本稿の数字は取得時点の一断面にすぎない。