要約
- 2025年10月13日、AFRINICのBoardとReceiverはBen Robertsを委員長とする法務委員会を発表し、進行中の全訴訟の把握と法務資源の最適化を委ねた。
- 同委員会は、6月の中止選挙で不正なPower of Attorneyまたは「Power to Vote」文書が使われたとの疑いも検討し、初期調査後と全件検討後の2回、会員に報告するとされた。
- 現行の委員会ページはBenjamin Mark Roberts、Kaleem Ahmed Usmani、Dewole David Ajao、Fiona Makokha Asongaを掲載するが、規程・憲章欄は「N/A」である。
- AFRINICは番号が95まで続く訴訟一覧を公開している。ただし、委員会の成果とは表示されず、弁護士、予算、指示、利益相反、判断、成果との案件別の接続もない。
- NRSはC&A Lawの開示済み契約書に1時間1,000ドルの料率があると報告する。料率だけで違法性は証明されないが、「最適化」の判断過程を検証可能にする必要性は高い。
調査の約束は二段階だった
2025年10月の共同声明は、法務委員会に二つの仕事を与えた。一つは、AFRINICが抱えるすべての継続案件を把握し、法務資源を最適化して、同組織が「適切で一貫した」と表現する法的戦略を整えること。もう一つは、同年6月に中止された選挙で、不正な委任状または「Power to Vote」文書が使われたとの情報を検討することだった。
不正は確定事実ではない。声明自体が疑惑として記し、文書はモーリシャスの関係捜査当局にあると「報告されている」と述べた。固定した19件の資料には、文書を偽造と認定した裁判、警察、規制当局の判断はなく、責任を負う人物も特定されていない。
一方、報告の約束は明確だった。予備的な調査が完了すれば会員に知らせ、委員会がすべての訴訟と関連法務を検討した後には包括的な更新を出す、という二段階である。
2026年8月11日までの固定資料には、受領した捜査機関、移送日、文書の範囲、証拠保全の方法、予備調査の完了、委員会名義の中間報告も包括報告もない。外部に非公開の手続が存在する可能性はある。確認できるのは、公開された約束と公開された結果を結ぶ記録がないという点である。
委員会は存在する、公開規程が存在しない
法務委員会そのものが消えたわけではない。AFRINICのBoard Committeesページは、Benjamin Mark Robertsを委員長として、Dr Kaleem Ahmed Usmani、Dewole David Ajao、Dr Fiona Makokha Asongaの3人を委員に掲げる。
しかし、隣の「Terms of Reference / Charter」欄は「N/A」である。同じ表では、他の委員会にPDFの憲章へのリンクや具体的な規程が表示されている。N/Aが、公開版がないことを意味するのか、規程が適用されないという意味なのか、準備中なのかについて説明はない。
AFRINIC定款15.3条は、取締役が必要または望ましいと考える理由とTerms of Referenceに基づき委員会を設置できるとする。この条文は、すべての規程を必ず公開せよとは書いていない。また、特定のBoardや任命の権限を司法的に確定するものでもない。それでも、規程が委員会権限の構成要素であることは示している。
公開規程がなければ、会員は任期、定足数、会合頻度、委任された権限、報告先、機密保持、BoardやReceiverとの役割分担、法律顧問への指示権を確認できない。
定款15.5条は、Boardの案件について実際または潜在的な利益相反を持つ取締役に開示と投票回避を求め、残る取締役は議論からも外すことができると定める。固定資料には、法務委員会向けの相反規則、申告、回避記録、会合日、出席、採決がない。誰かに相反があった証拠ではない。相反が生じた場合の処理を外部から検証できないという証拠である。
95までの訴訟一覧は重要な反証だ
「AFRINICは訴訟を何も公開していない」という批判は正確ではない。2026年6月15日更新のCourt Casesページには、終結・継続案件が番号95まで並ぶ。92番は重複している。Receiverの解任申立ても継続中として記載される。
一覧は当事者、事件番号、手続の性質、状況を示し、命令へのリンクを伴うこともある。紛争の規模を把握するうえで価値がある。
ただし、そのページは法務委員会による棚卸しだとは名乗っていない。各事件を担当する弁護士、指示を出した者、権限の根拠、予算、請求と支払、戦略目的、委員会の勧告、利益相反、成果、次の判断にも接続していない。
訴訟一覧は「何が起きているか」を示す。資源台帳は「なぜその事件に、その弁護士と金額を配分したか」を示す。10月の任務は両方に関わっていたが、公開資料で見えるのは前者だけである。
Board Documentsページも空白を埋めない。固定時点で掲載されているのは2019年と2020年の4文書だけで、法務委員会の憲章、任命決議、議事録、投票記録、報告書はない。記録が内部や別の場所にある可能性は否定できない。ここでの結論は19件の公開資料に限られる。
財務監査と委員会監督は別の統制だ
AFRINICは2022年と2023年の監査済み財務諸表を公開した。PDFは画像スキャンのため、本調査では表紙、監査意見、訴訟注記をページ画像で直接確認した。Forvis Mazarsは両年に無限定適正意見を出した。同時に、訴訟結果の不確実性が財務状態に重大な影響を及ぼし得るとして、注記22を「強調事項」に挙げた。これを理由に意見を修正したわけではない。
注記22は、経営陣が法律顧問と案件の状態や内容を評価し、継続して監視すると記す。2025年に設けられた委員会が、その後どの事件を優先し、どの弁護士を維持し、どの予算を割り当て、何を成果とみなしたかは説明しない。
財務監査は、適用される会計枠組みに照らして諸表が適正に表示されているかを扱う。個々の委任の権限、調達、料率の妥当性、相反の不存在、法務サービスの価値を自動的に認定するものではない。
金額はこの違いを具体化する。AFRINIC自身は2026年3月、訴訟に数百万ドルを要したと述べた。NRSはAFRINICの開示から、2022~2025年の法務費を3,289,408ドル、うち2022~2023年にC&A Lawへ支払われた額を2,148,059ドルと集計する。また、開示された契約書に、付加価値税と実費を除く1時間1,000ドルの料率があったとする。
これはNRSに帰属する主張であり、司法判断ではない。NRS自身、2人分を合わせた1時間2,000ドルが立証されたとは言っていない。1,000ドルという料率だけで、過大請求、違法な支払、個人の不正は証明できない。だからこそ、どの事件のどの仕事を誰が承認し、どの請求書を払い、何を得たのかという記録が必要になる。
機密性は手続の無痕跡を意味しない
選挙文書をめぐる進行中の調査には、個人情報、署名、企業関係、証人、捜査手法が含まれ得る。証拠そのものを公開しない合理的な理由はある。
それでも、手続の輪郭は示せる。移送の法的根拠、受領機関、日付、資料の類型、保全措置、到達した節目、非開示の理由を公表しても、文書本文をさらす必要はない。委員会が予備情報を受け取ったか、追加付託を勧告したか、外部の判断を待っているかも、プライバシーを守りながら報告できる。
固定資料にはその輪郭がない。調査が始まらなかった、終了した、誰かが証拠を隠したとは結論できない。結論できるのは、会員に向けた更新の約束に検証可能な節目がないことだ。
損失を負う側から統制点を見る
Heng Lu doctrineは、制度の肩書ではなく、実際に選択肢を絞る場所を見る。法務委員会は判決を下さない。しかし、案件を分類し、継続・和解・撤退を勧告し、弁護士資源を配分し、Boardへ何を上げ、会員へいつ何を伝えるかを形づくることができる。正式決定の前にあるこの入口は、実務上の権力である。
費用を負担するのは会員である。ネットワーク事業者は登録機関の継続性を前提に設備、顧客、数資源を運用し、障害時の経済的損失を負う。訴訟当事者や選挙文書の検討対象者は、法的・評判上の影響を受ける。固定資料は、資源と情報を選ぶ側が、その下振れをどう引き受けるかを示していない。
RIRガバナンスがインフラ継続性に波及し得るというLARUSの分析は、この非対称性を測る文脈になる。特定の委員が被害を起こした証拠ではない。
AFRINICは、Boardが職務を回復し、訴訟は登録機関と地域を守るためであり、Receiverとの協働は安定回復の一部だと説明する。これはAFRINICの制度的主張である。同じ3月の更新は、Receiverの正式解任と裁判所の判断がなお待たれているとも認めた。判断台帳が公開されれば、いずれかの物語を先に信じなくても選択を検証できる。
公開すべき最小限の記録
まず、日付のある任命決議と委員会規程が必要だ。構成、任期、定足数、委任権限、報告義務、機密性、委員会・Board・Receiver・弁護士・捜査機関・裁判所の境界を示す。
次に、既存の訴訟一覧を案件別の資源台帳につなぐ。弁護士と料金体系、指示日と指示者、権限、予算、請求、支払、目的、状況、成果、次の判断、相反と回避を記録する。秘匿特権のある法的助言は、理由を示して編集できる。
選挙文書については、証拠保全と付託の手順、節目、プライバシーに配慮した中間報告、可能になった時点の最終報告が要る。議事録は助言内容を明かさず、日付、出席、決定、反対、回避だけを記録できる。
Brian Longweは委員会発表直後、通常の財務監査では自身の懸念に答えられないとして、独立したフォレンジック監査を求めた。これはLongweの見解であり、不正の証明ではない。ただし、約束と証拠の種類を一致させるという統制原則は妥当だ。
限定された結論は、委員会が架空だ、4人が不正をした、料率が違法だ、選挙文書が偽造だというものではない。AFRINICは実在する4人と長い訴訟一覧を公表している。欠けているのは、その二つをつなぎ、案件、金銭、疑惑を説明責任ある判断へ変えた過程を再現できる公開記録である。
AFRINICとLu Hengの紛争が広いガバナンス危機へ発展した経緯は、末尾のBTWによる別の調査で詳しく読める。これは追加資料であり、本稿は法務委員会の任務と公開記録を扱うニュース記事である。
情報源
- フォレンジック監査を求めたBrian Longweの返信
- AFRINICのBoardとReceiverによる共同声明
- AFRINICのBoard Committees一覧
- 共同声明のメーリングリスト添付
- AFRINIC Board Documents
- AFRINIC定款
- 安定性と法的課題に関するAFRINIC会員向け更新
- AFRINICの公開訴訟一覧
- AFRINIC 2022年監査済み財務諸表
- AFRINIC財務資料一覧
- AFRINIC 2023年監査済み財務諸表
- 2026年AGMMと法務費に関するNRS会員行動資料
- Gowtamsingh Dabeeに関するNRS公益プロフィール
- Heng Lu:大陸、コミュニティー、「エンドユーザー」を誰が代表するのか
- Heng Lu:登録機関の権力が責任から切り離されるとき
- Heng Lu:権力、正統性、AFRINICのロックイン
- Heng Lu:インターネットガバナンスの中心にある代理問題
- LARUS:RIRガバナンス判断がインフラに影響する仕組み
- BTW調査:AFRINICとLu Hengの紛争がガバナンス危機になった経緯


