Summary
- OME Data Center#07の事業予算31.42億円に対し、出資総額は25.92億円。差額の5.5億円は、土地建物の売却代金から支払う工事残金に当たる。
- 公開されたリスク説明では、その残金の支払いが投資家への分配に先行する。約5%の劣後出資も、年15.5%という想定利回りも、元本や予定どおりの換金を保証しない。
「金融機関からの借入なし」という説明だけでは、建築費を誰がいつ負担するのかは見えない。TECROWDの新たな OME Data Center#07 計画には、買い手からの売却代金を待つ5.5億円の工事残金がある。初期の出資額を抑える仕組みだが、出口で得る現金には、工事代金の精算と投資家への償還・分配という二つの役割が残る。
9月11日の103号ファンド情報公開のお知らせは、一般募集を9月25日18時に始める予定としている。詳細ページでは先行抽選の登録期間を9月11日から15日までとし、当選だけでは出資が確定せず、契約と入金が必要だと説明する。募集日程と、資金が実際に集まった事実は別である。
差額は消えた費用ではない
公開ファンドページによると、事業総額は31.42億円、出資総額は25.92億円。この出資を優先出資24.62億円と劣後出資1.3億円に分ける。事業総額との差額5.5億円は、後払いにする建築工事費として説明されている。
工事費の内訳でも計算は一致する。総額23.1億円のうち17.6億円を着工時に払い、消費税を含む残り5.5億円を土地建物の売却代金で払う計画だ。予算上の不明な穴ではなく、支払時期によって調達資金を補う構成になっている。
ページは金融機関から借り入れないとする一方、工事残金を TECRA株式会社 がゼネコンの バルボア工務店株式会社 に対して負う通常の支払義務と位置づける。優先出資者に追加負担は生じないという説明もある。しかし、追加の支払いを求められないことと、出資済み元本が損失を受けないことは同義ではない。
売却代金には使う順序がある
リスク問答は、土地建物の売却による回収額をまず工事残金の支払いに充てると説明する。売却額が想定を下回れば、投資家に分配できる額が減り、元本割れも生じ得る。これは発行側が公表した売却時の資金の流れであり、倒産手続きにおける法的な優先順位を独立に検証したものではない。
出資総額の約5%に当たる劣後出資は、別の働きをする。公開された優先劣後構造では、劣後側が先に損失を負担する。ただし吸収できる額には限りがあり、売却価格や工事の履行、償還時期を保証するものではない。5.5億円の残金と1.3億円の劣後額だけを比べて、投資家の損失発生ラインを計算することもできない。工事費自体は既に事業予算に含まれているためだ。
TECROWDを運営するTECRA株式会社は、対象土地の売主でもある。また、ファンドから同社へ支払う1.2億円の組成手数料について、利益相反が明示されている。土地取得と手数料の前提を事業収支の中で確かめる理由になるが、それだけで不正を示すわけではない。
受電の回答と、買い手の決済は違う
土地取得は2026年10月1日、竣工は2027年2〜3月、売却は7月31日までを予定する。償還と分配は8月31日の予定で、工事残金の支払表も同日を記す。いずれも今後の計画であり、完了した工程ではない。
建物完成後は運営会社とフリーレントの賃貸借契約を結び、開業準備を経て運営を始め、売却を目指す構想だ。10カ月の運用中に配当を重ねる仕組みではなく、土地建物の売却代金が償還・分配の原資になる。表示された15.5%は税引き前の想定年利であり、10カ月で確実に15.5%を受け取れるという意味ではない。
発行側は売却先への営業を始め、複数の有力候補があると説明する。ただし、確認した公開資料は、想定売却代金39.52億円で拘束力ある売買契約が成立したことを示していない。東京電力から約2MWの受電が可能との回答を得たという説明もあり、細部調整の可能性が残る。発行側が報告する供給条件を、実際の通電や稼働、売却の確実性へ読み替えるべきではない。
販売が難航した場合には、運用期間の延長、別の買い手の検討、自社固有資産への振替という選択肢も公表されている。出口の候補があることは、予定日や回収額の無条件保証ではない。本稿は公開情報に基づき、ログイン後に提供される契約書面の確認を前提としていない。銀行借入を使わなくても、投資家が予定する現金を得る前に精算すべき工事代金は残る。
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