要約

  • RIPE NCCは2026年5月総会の案内で、会員が提案した決議を議題に加えるには5月6日までに394会員の支持が必要だと告知した。
  • 定款15.6条は基準を「投じ得る全票数」の2%とし、決議文を一字一句確定したうえで、総会の少なくとも2週間前に理事会へ提出するよう求めている。
  • 総会後の資料には、適格会員19,415、投票登録3,421、実投票3,049という別々の数がある。後二者を議題要件の母数に置き換えることはできない。
  • 会員名を公開せずとも、母数のスナップショット、丸め、決議文のハッシュ、支持と撤回、資格成立時刻、最終処理を一つの受領記録にできる。

投票箱が開く前に、すでに一つの判定が終わっている。

RIPE NCCの2026年5月総会の議題案内は、会員決議を議題に載せる条件を394人の支持と示した。締切は5月6日。ここで問われたのは決議への賛否ではなく、決議を総会の正式な問いにする資格だった。

議題化への支持と、決議内容への賛成は同じではない。反対する会員でも、曖昧な議論を正式な文面に固定し、全会員に配布し、投票で結論を出すことに賛成できる。入口で両者を混同すれば、論争を公開の検証にかけたい人ほど政治的な誤解を負う。

394人は票決の多数ではない。扉を開けるための数である。だからこそ、扉の鍵がどの母数から作られたかを残す必要がある。

2%の防波堤には理由がある

RIPE-818の定款15.6条は、理事会の裁量だけに入口を委ねていない。投じ得る全票数の2%以上を共同で持つ会員グループが書面で申請すれば、別の事項を議題に追加できる。申請には決議案の逐語的な本文が必要で、総会の2週間前までに理事会へ届かなければならない。理事会はその本文を直ちに全会員へ送る。

15.7条は、所定の方法で本文が送付された決議だけを採決できるとする。15.8条は、10%以上の会員が総会自体の招集を求められる別の経路を用意し、理事会が14日以内に応じなければ申請者が招集できるとしている。

この設計は単なる障壁ではない。総会の直前に文面が変わることを防ぎ、全会員が同じ案を読む時間を確保し、わずかな人数による無制限の議題投入を抑える。その一方で、理事会が提案しない案件にも会員から直接到達する道を残す。

したがって、2%をなくせば自動的に参加が改善するわけではない。突然の動議や曖昧な標題もまた力になる。適切な門は会員の発案権と、他の会員が準備する権利を同時に守る。

検証すべきなのは基準の存在ではなく、394という出力の由来である。どの時点の全票数を使い、どの会員状態を含め、端数をどう処理したのか。この三点がなければ、同じ定款を読んでも同じ整数に到達できない。

19,415、3,421、3,049は同じ列の数字ではない

定款16.7条は、停止されていない各正会員に一票を与え、候補会員には投票権を与えない。16.8条は、一人の代理人が行使できる票を全可能票の1%以内に制限する。「全可能票」は参加予測ではなく、会員資格の状態である。

公式投票報告によれば、3,421会員が投票登録し、3,049会員が投票した。RIPE Labsの事後分析は、適格会員19,415、登録3,421、投票3,049、投票率15.7%とする。また、複数のLIRアカウントを持っても、一会員一票であると説明している。

数 手続上の意味 代用できないもの
394 その回の会員提案が議題資格を得る支持数 後日の投票者数
19,415 事後分析が示した適格会員 394算定時の厳密なスナップショット
3,421 投票登録を完了した会員 提案締切時の全可能票
3,049 実際に票を投じた会員 定款15.6条の母数

提案締切と総会は同じ日ではない。候補会員が正会員になり、会員が停止、終了、回復する可能性がある。本稿が確認した資料は、その変化が394を誤らせたとは示していない。ただし、394に使った時点を示していない。

394人の支持者が後の3,049人に全員含まれるとも限らない。議論を望んでも総会に登録しない会員はあり得るし、投票しても提案支持をしなかった会員もいる。名簿を得なければ成立しない論点ではない。

395、397、394という移動

2025年5月の案内は395人、同年10月の案内は397人、2026年5月は394人を要件とした。

395 → 397 → 394

母集団が変われば2%の整数も変わる。これは異常の証拠ではない。むしろ、整数だけを恒久的な規則のように扱えないことを示す。定款の版、母数の基準時、含有状態、丸めを添えて初めて、各回の数字が意味を持つ。

公開資料には丸め方がないため、394から正確な母数を逆算することもできない。逆算は検証に見えて、実際には資料にない精度を作る。

確認時点の会員提案ページは、5月総会の2週間の登録期間が終了し、全会員に定款15.6条に基づく提案権があったと表示する。しかし、提案ID、本文、支持数の推移、締切時の結果は残していない。この表示だけから内部記録がないとは言えない。公開面で過去の状態を再現できない、という限定した事実である。

支持数はイベントの結果である

最終表示が394でも、その前には追加、撤回、重複訂正、資格状態の変化があり得る。本文が修正されたとき、旧本文への支持が新本文へ移るのか、新しい提案として扱うのかも規則を要する。締切前に閾値を超え、その後に下回った場合、ピーク値と締切値のどちらを使うかも明示が必要だ。

これは2026年に問題が起きたという主張ではない。問題が起きる前に定義しておくべき通常の状態遷移である。

必要な連鎖は短い。

定款版 → 母数スナップショット → 閾値 → 決議文 → 支持イベント → 締切状態 → 理事会受領 → 全会員への送付 → 議題処理

途中を現在のデータで上書きすると、過去の資格判定は再現できなくなる。

個人名を出さない閾値受領記録

公開に必要なのは支持者一覧ではない。手続を再実行できる最小の情報である。

記録項目 公開する値 確認できること
総会・規則 総会ID、定款版、開始・締切時刻 適用手続
母数定義 含める会員状態、除外状態 「全可能票」の意味
スナップショット 時刻、状態別件数、ダイジェスト 名簿を出さず母集団を固定
算式 2%、丸め、算出整数 394の再計算
提案 固定ID、逐語本文のハッシュ 支持対象の同一性
イベント 有効追加、撤回、無効理由別件数 最終数の照合
資格 基準時刻の有効数、到達時刻 門を越えたか
理事会 受領、形式確認、配布時刻 資格から通知への接続
終了状態 議題化、未達、撤回、置換、訂正 手続の完結
採決 行われた場合の投票IDと結果 入場と採択の分離

保護された母数のダイジェストがあれば、後日の監査で同じスナップショットを使ったことを証明できる。公開面では状態別の集計だけを出し、会員との対応は権限ある確認者に限定できる。支持イベントも理由別件数で足りる。

この記録は394を疑うためではなく、394を強くするためにある。母数と本文と締切状態が一致していれば、現行制度の正確さが可視化される。数字が制度の記憶を単独で背負わなくて済む。

情報源