要約

  • RIPE-865には、原則として会員へ通知する通常経路と、会員への通知ができないeEvidence経路が併存する。後者でも、命令ごとの審査、要件を満たさない命令への異議、規則に沿って発行された命令への対応という手続きは残る。
  • 旧手続きRIPE-836には、Dutch の拘束力ある命令とMLATを中心とする経路、および一般的な会員通知方針があったが、確認した本文に明示的なeEvidence分岐はなかった。RIPE-865で確認できるのは公開手続きの変更であり、命令の受領実績ではない。
  • 2025年を対象とするRIPE-854はRIPE-865より前に公開されている。その99件やDutch の要請件数をeEvidenceデータとして読み替えることはできず、2026年以降の利用を予測する根拠にもならない。
  • 個別通知が使えない経路では、公開証拠の負担が、会員への直接通知から、合法的に公表できる集計、区分定義、異議結果、抑制規則、方法注記、訂正履歴へ移る。ただし、どの項目を、どの粒度で、いつ公表できるかは、資格ある法的審査が認めた範囲に限られる。
  • 最低限必要なのは、要請、拘束命令、異議、保存、提出、特定行為、通知、公表を別々の状態として記録することである。これらを一つの件数へ圧縮すると、受領数を有効な命令数と誤認したり、保存を提出と取り違えたり、秘密保持を審査の不存在と誤読したりする。

RIPE-865は、2026年7月27日に公開されたRIPE NCCの手続きであり、Executive Boardの承認を受けている。対象は、RIPE NCCがRIRとして保有する会員の公開情報と機密情報である。同文書はRIPE-836、RIPE-675、RIPE-588を更新し、LEAからの情報要請、命令、捜査への対応経路をまとめ直した。

その一般則では、非公開情報の提供や登録情報に対する特定の行為には、オランダ法の下で拘束力と執行力を持つ裁判所命令などが必要になる。そして、通知が明示的に禁止されていない限り、RIPE NCCは関係する会員へ知らせる。ここでの通知は、単なる事務連絡ではない。会員自身が、自らに関係する権限行使があったことを知るための、個別的な説明責任の経路でもある。

RIPE-865は、非公開情報と特定行為を扱う直接経路として、少なくとも二つを区別している。一つは、拘束力あるオランダの命令を持つDutch のLEAである。もう一つは、eEvidence Regulationに基づいて行動するEU当局である。非EU当局からの要請と、eEvidence Regulationの外にあるEUからの要請については、適用されるMLAT手続きを使うとしている。

この区別は重要である。EUから来たというだけで、すべての要請がeEvidence経路へ入るわけではない。RIPE-865自身が、eEvidence Regulationの下にあるEU経路と、その外にあるEU要請のMLAT経路を分けているからだ。同様に、LEAから届いた文書を、ただちに拘束命令や対応義務と同一視することもできない。公開手続きは、要請の発信主体だけでなく、法的経路と文書の性質を識別する必要を示している。

eEvidence節では、EUのLEAまたは司法当局が、刑事捜査や訴追のため、電子証拠の保存または提出を命じ得ると説明される。RIPE-865は規則全体の解説書ではなく、RIPE NCCがその経路から受ける命令をどう扱うかを示す手続きである。本稿が検証できるのも、その公開手続きに書かれた範囲までである。

RIPE NCCは、eEvidence経路の各命令を個別に評価するとしている。規則の要件を満たさない命令には従わず、規則に基づいて異議を申し立てる。他方、規則に沿って発行された命令には従う。この三つの状態――受領、審査、結果――は分けて読む必要がある。命令を受け取ることは、その命令が適用範囲内であることを意味しない。適用範囲内であることも、異議がないことを意味しない。異議を申し立てる権限があることは、実際に異議を申し立てたという証拠ではない。

ここに、eEvidence節のもう一つの条件が加わる。秘密保持規則が適用され、この節で受け取るいかなる命令についても、RIPE NCCは会員へ通知できない。一般則では通知が原則であり、禁止が例外として働く。eEvidence節では、当該経路に属する命令について通知不能があらかじめ手続きの状態として示される。同じ文書の中で、個別通知を利用できる状態と利用できない状態が分岐している。

この分岐を、命令の実績と取り違えてはならない。RIPE-865にeEvidence節があることは、RIPE NCCが実際に命令を受領した証拠ではない。異議を申し立てた証拠でも、保存や提出を行った証拠でも、命令への対応を拒否した証拠でもない。確認資料には、そのような事例報告は含まれていない。

同時に、通知不能を、審査不能と読み替えることもできない。RIPE-865は、秘密保持を記した同じeEvidence節で、各命令を個別に評価し、要件を満たさない命令には異議を申し立てる手続きを示す。したがって、公開文書が支える狭い結論は、会員通知が使えない一方、命令の審査と異議の経路は残る、ということである。秘密保持によってRIPE NCCの評価責任そのものが消える、という結論は支えられない。

説明責任の状態は、なぜ変わるのか。

一般的な個別通知が行われる経路では、少なくとも関係会員は、自らに関係する要請または命令が存在したことを知り得る。通知内容に制限があり得るとしても、通知という行為自体が、一件ごとの外部観測点になる。会員は、自らに関係する事実をRIPE NCCの年次集計だけに依存せず把握できる。

eEvidence経路では、その観測点が使えない。外部から見た沈黙は、命令がなかったこと、受領したが適用範囲外だったこと、異議を申し立てたこと、対応したこと、あるいは公表が禁じられていることのどれも示さない。沈黙はゼロではなく、区別不能な状態である。

そこで失われるのは、RIPE NCC内部の審査手続きだと確認されたわけではない。失われるのは、会員への個別通知を通じて外部に生じていた、案件単位の観測可能性である。説明責任の負担は、会員が直接受け取る通知から、法的に許される別の証拠へ移る。

その別の証拠として考えられるのが、将来の透明性報告における経路別・結果別の集計である。ただし、集計なら自動的に許されるわけではない。件数が少なければ、経路、時期、結果を組み合わせることで、会員、捜査、当局、証拠に関する推測を誘発するおそれがある。公表項目、粒度、公表時期、抑制方法は、資格ある法的審査によって認められなければならない。

集計は個別通知の代替物でもない。個別通知は当事者に対する説明であり、集計は制度全体に対する観測手段である。両者の受け手、精度、時期、目的は異なる。eEvidence経路で個別通知ができないからといって、集計が通知と同じ効果を持つことにはならない。それでも、合法な集計は、公開証拠が完全に失われることを防ぐ補助線になり得る。

RIPE-836との比較で確認できること。

RIPE-836は、RIPE-865の前の手続きである。確認した本文では、Dutch の拘束力ある命令に基づく経路、非オランダ当局が利用するMLAT経路、そして明示的に禁止されない限り会員へ通知する一般方針が示されていた。一方、RIPE-865にあるような明示的なeEvidence節は確認できない。

ここから確実に言えるのは、公開手続きの記述が変わったことだけである。RIPE-865では、eEvidence Regulationに基づくEU当局の直接経路と、その経路に属する命令についての通知不能が明示された。旧文書にその明示がなかったことは、過去の権限、将来の利用件数、特定命令の存在を証明しない。

したがって、比較の単位は事件ではなく手続きである。RIPE-836からRIPE-865への変更によって、読者が識別できる法的経路が一つ増え、その経路では通常の個別通知が使えないと明記された。これが説明責任設計上の新しい対象になる。

RIPE-854は、eEvidenceの空欄を埋めない。

RIPE-854は、2026年3月31日に公開された2025年のLEA要請報告であり、合計99件を報告している。その本文には、拘束力あるDutch の要請8件にすべて対応したこと、非オランダ当局による拘束力のない非公開情報要請2件には公開情報だけを提供したこと、手続きに関する照会4件があったことなどが記録されている。

また、RIPE NCCが保有していないとする利用者特定情報への要請81件と、法的根拠のない非オランダ当局による記録変更要請1件も示される。これらの区分は、要請の性質やRIPE NCCの対応を一定程度分けている。少なくとも、届いた連絡をすべて同じ種類の命令として扱っていないことは読み取れる。

しかし、RIPE-854はRIPE-865より前に公開されている。RIPE-854が扱う2025年には、RIPE-865の公開も、その文書上のeEvidence分岐の明示もまだ行われていない。この時間的な順序だけでも、RIPE-854の数値をRIPE-865のeEvidence件数として転用することはできない。

とりわけ、拘束力あるDutch の要請8件をeEvidence命令へ置き換えることは、経路の違いを消してしまう。RIPE-865は、Dutch の拘束力ある命令、eEvidence Regulationに基づくEU経路、MLATを明示的に分けている。経路別に書かれた手続きを検証する際に、別経路の過去件数を流用すれば、まさに必要な区別が失われる。

RIPE-854の99件は、eEvidence件数の予測にもならない。要請数は、法的経路、対象情報、当局、手続き、報告範囲によって意味が変わる。2025年の総数から、2026年以降にeEvidence命令が何件になるかを導くことは、確認資料の範囲を超える。

さらに、RIPE-854とRIPE-865のどちらも、eEvidence命令の受領、異議、保存、提出、対応、拒否を実績として報告していない。どの集計項目が合法に公表できるか、どの程度の公表遅延が必要または許容されるか、少数値をどのように扱えるかも示していない。現時点で確認できるのは、経路と処理原則であって、利用実績や公表可能性の法的結論ではない。

経路不透明性は、どこで生じるのか。

説明責任の連鎖を分解すると、少なくとも、文書の受領、法的経路の分類、要請か拘束命令かの区分、適用範囲の審査、異議の判断、異議結果、保存または提出、登録情報への特定行為、会員通知、公表という段階がある。

一般通知が可能な経路では、この連鎖の後半に会員通知という外部接点がある。eEvidence経路では、その接点が手続き上利用できない。しかも、通知がない理由は個別案件ごとに外部へ説明されないため、外部の読者は、通知不能な命令が存在したのか、それとも報告対象そのものがなかったのかを区別できない。

この不透明性を減らすには、各段階を混同しない集計記録が必要になる。受領数だけでは、有効な命令数も対応数も分からない。対応数だけでは、保存と提出の違いが分からない。異議数だけでは、異議の結果が分からない。通知件数だけでは、通知できなかった理由が法的禁止なのか、通知対象がなかったのかを区別できない。

とりわけ、要請、拘束命令、異議、保存、提出、通知、公表は別の動詞である。一件が複数の段階を通ることもあれば、ある段階で終わることもある。これらを単一のLEA件数へ畳み込めば、読者は入口の数と出口の数を比較できず、対応の意味も検証できない。

次の表は、公表が合法であると仮定した一覧ではない。資格ある法的審査に付すために、まず別々に記録すべき最小項目と、その区分が必要な理由を示したものである。

記録項目 分けて記録すべき内容 検証上の役割 公表に必要な条件
報告期間 開始日、終了日、暦年か別期間か 年ごとの比較範囲を固定し、期間をまたぐ重複を防ぐ 期間定義と集計基準の明示
法的経路 Dutch の拘束力ある命令、eEvidence Regulation、MLATなど、公開手続きに沿った区分 別経路の件数を混ぜず、通知状態と審査基準の違いを保つ 経路名の公表可否を法的に確認
文書区分 情報要請、手続き照会、保存命令、提出命令、特定行為を求める命令 単なる照会を拘束命令として数える誤りを防ぐ 区分定義を方法注記に固定
受領数 各経路・各文書区分で受け取った件数 制度への入口を示す 重複、追完、再送の数え方を定義
適用範囲内数 審査後に当該経路または規則の要件を満たすと判断した数 受領数と処理対象数を分ける 法的判断の詳細を露出しない粒度
適用範囲外数 要件を満たさない、または別経路へ属すると判断した数 受領した文書がすべて有効な命令ではないことを示す 理由区分の公表可能性を確認
異議数 RIPE NCCが異議手続きを開始した件数 個別審査が実際の統制として働いたかを観測する 少数値による案件推測を防ぐ
異議結果 法的審査で承認された結果区分と未決件数 異議の存在だけでなく、その後の状態を示す 区分、時期、係属中情報の扱いを承認
対応数 審査と異議の結果を経てRIPE NCCが対応した数 受領数を対応数と誤認することを防ぐ 部分対応の数え方を定義
非対応数 適用範囲外、異議結果その他の理由で対応しなかった数 対応しなかった状態を、無視や未処理と区別する 理由の公表可否と粒度を確認
保存 データを保存した命令または処理の数 保存を提出と混同しない 保存対象や期間を推測できない集計
提出 情報を提出した命令または処理の数 情報が外部へ提供された状態を保存から分離する 情報種別や受領者を露出しない設計
特定行為 登録情報への変更など、情報提供以外の行為 情報開示と登録上の行為を分ける 行為の種類を公表できるか法的に審査
通知状態 通知済み、通知禁止、eEvidence経路では法的に通知不可など 通知ゼロを、対象ゼロや事務上の省略と誤解させない 公開手続きに沿った表現の承認
抑制・秘匿 件数抑制、区分統合、公表延期の根拠 少数値や組合せによる案件特定を防ぐ 閾値または判断根拠を事前に承認
公表権限・法的審査 公表を承認した主体、審査日、適用した基準 集計が便宜的判断ではなく統制を経たことを示す 守秘義務を害さない範囲で記録
方法・版注記 用語、重複処理、経路変更、集計方式、文書版 年次比較で定義が変わった場合に差を説明する 各報告に版を付与
訂正履歴 訂正日、変更した数値または定義、変更理由 過去報告の静かな書き換えを防ぐ 守秘義務を損なわない訂正説明

この記録で重要なのは、項目数の多さではなく、状態の分離である。たとえば、一件の提出命令を受領し、適用範囲について異議を申し立て、結果として命令が変更され、限定された範囲で対応した場合、受領、異議、異議結果、対応、提出はそれぞれ別の集計軸になる。単に一件対応と数えれば、審査と異議が見えなくなる。単に一件異議と数えれば、最終的な対応状態が見えなくなる。

反対に、一件の照会を受け取ったが拘束命令ではなく、公開情報への案内だけで終了した場合、それを提出命令への対応に含めるべきではない。RIPE-854が要請の種類と対応を一定程度分けていることは、この区別が実務上も意味を持つことを示す。ただし、RIPE-854の分類をそのままeEvidenceへ移植できるわけではない。新しい経路には、経路固有の通知状態と、保存・提出の区分が必要になる。

通知状態も、単なる付記では足りない。eEvidence経路で通知件数がゼロだったとしても、それだけでは、命令がゼロだったのか、すべての命令について通知が法的にできなかったのか分からない。そこで、該当する場合には、通知が法的に利用できない状態であることを、件数とは別の方法注記として明示する必要がある。

ただし、この明示も、公表可能性を当然視してはならない。経路別件数が少ない場合、報告期間、命令区分、異議結果、通知不能という情報の組合せが、外部情報との照合に使われる可能性がある。抑制閾値、区分統合、公表延期、複数期間の合算などが必要かどうかは、確認資料から判断できない。資格ある法的審査が、それぞれの項目、粒度、時期を認める必要がある。

同じ理由から、集計公表と遅延通知は分けなければならない。RIPE-865は、eEvidence節で受けるいかなる命令についても会員へ通知できないとしている。確認資料は、後日であれば個別通知できるとも、一定期間後に通知義務が復活するとも述べていない。したがって、将来の集計を検討することはできても、遅延した個別通知が許されると推定することはできない。

狭い主張が必要な理由。

通知は説明責任の重要な手段だが、唯一の手段ではない。個別通知が利用できない場合でも、命令ごとの審査、異議、Executive Boardが承認した公開手続き、将来の合法な集計、方法の版管理、訂正履歴、独立した方法確認など、別の統制を設計する余地はある。

しかし、それらの統制が現在すでに存在する、または特定の形で法的に許されるとは、三つの資料だけからは言えない。確認できるのは、公開手続きが通知不能な分岐を設けたこと、同じ分岐に個別審査と異議の原則が残ること、現在の公開証拠には利用実績がないこと、そして過去のLEA報告を新経路の実績へ転用できないことまでである。

この証拠境界を守ると、本稿の問いは簡潔になる。個別通知を持たない公開経路で、RIPE NCCは何を記録し、どの範囲を合法に集計し、どの定義と訂正履歴を残せば、会員、捜査、当局、証拠を露出せず、手続きが機能しているかを将来検証できるのか。RIPE-865が新しくしたのは、その問いを避けにくくしたことである。

出典