要約
- AFRINIC理事会の決議201106.117は、AFPUB-2010-GEN-006-draft-02を批准した。これは民間組織の内部統治上の実在する行為だが、AFRINICに国家主権、規制管轄、警察権、処罰権、没収権または裁判権を与えるものではない。
- 批准された政策の実質は、inetnum、inet6num、aut-numから参照でき、Whoisで照会できる専用の連絡先を設けることにあった。個人的な連絡向けの
e-mailと、自動報告向けのabuse-mailboxを分ける設計は、届け先を明確にするためのものだった。 - 連絡窓口が存在し、技術的に利用できることは重要である。しかし、連絡可能性は、苦情が真実だという判定、受信者の回答義務、顧客への措置、コンテンツ削除、発言統制、制裁または資源の剝奪を意味しない。
- 批准と実装は別の状態である。6月19日の署名付き通知は、スタッフが今後実装に取り組むと述べた。実装は2012年に続いたが、公開されたAFRINIC資料は3月と5月の複数の日付を示し、正確な稼働日は確定できない。
- 2011年の文書には、定期的な検証周期、応答期限、通報内容の審査、違反認定、警告段階、サービス制限、資源取消し、上訴手続はない。記録衛生のための薄い機能を、後から実体的な執行権へ膨らませて読んではならない。
一行の決議が承認したもの
決議201106.117の短い批准文は、狭いが現実の効果を持っていた。AFRINICの理事会記録によれば、理事会はAbuse Contact Policyと呼ばれたAFPUB-2010-GEN-006-draft-02を批准した。記録は、RPDメーリングリストとヨハネスブルクの会合でコンセンサスに達し、PDP共同議長が提案を提出した、とする。したがって、この決議は単なる意見表明ではない。AFRINICという民間のレジストリ組織の政策過程において、提案を承認し、スタッフによる実装へ移す内部統治上の行為だった。
同時に、その一行から読み取れる権限には限界がある。理事会はAFRINICの政策を承認でき、AFRINICのシステム、フォーム、支援業務、研修を変更するようスタッフへ方向を示すことができた。だが、理事会が名簿を管理しているという事実だけで、アフリカのネットワーク上の行為一般を規制する公権力が生まれるわけではない。IPアドレス資源に関する重要な台帳を維持することは、国家の立法でも、行政処分でも、捜査でも、裁判でもない。
ここで承認されたものを最も正確に表す比喩は、警察署ではなく呼び鈴である。苦情を持つ者が、どの窓口へ知らせればよいかを探しやすくする。自動化された報告を、人同士の通常連絡とは別の入口へ届けられるようにする。それは有用な配送機能である。しかし、呼び鈴が鳴ったことは、扉の内側にいる者が有罪であることを示さない。呼び鈴を設置した者が、家の中へ入り、事実を認定し、罰を科す権限を得ることもない。
専用オブジェクトという発見
政策案が解こうとした問題は、通報の内容より先にある。ネットワークの異常、迷惑通信、侵害の疑いなどを見つけても、報告を受け取る適切な担当者がどこにいるか分からなければ、情報は誤った窓口を巡回する。一般的な連絡先や備考欄に頼れば、担当部署へ届くまでに時間がかかり、技術運用の連絡と管理上の連絡が混ざる。draft-02は、この探索費用と誤配送を減らすため、公開される不正利用連絡情報の「好ましい場所」となる専用オブジェクトを構想した。
そのオブジェクトは、アドレス空間を表すinetnumとinet6num、自律システムを表すaut-numから参照できる設計だった。資源の記録を照会した人が、そこから専用窓口へたどれるようにする。専用の一意な参照を置き、連絡情報をWhois経由で公開するという構造は、誰が何を裁くかを決めるものではない。情報の配送経路を標準化するものだ。
政策案はさらに、AFRINICがベストプラクティス文書を公表し、会員に対してこのオブジェクトの使用を積極的に知らせ、奨励することを求めた。ここでも動詞の射程が重要である。提供し、公開し、知らせ、奨励する。これらはレジストリの記録形式を普及させるための行為であり、苦情の中身を判断し、特定の回答を命じ、従わない者を処罰する行為ではない。
会員への影響について、提案は「直ちに影響が生じる」とは説明しなかった。むしろ、専用の不正利用連絡先を公開し、その利点を得る機会として描いた。すべての既存資源オブジェクトに直ちに参照を付ける普遍的義務が、批准時点で置かれたと読む根拠はない。後の実装資料も、IRTオブジェクトをmnt-irtで参照する仕組みを示しつつ、その参照を任意として扱っている。設計が実用化されたことと、全記録への一律強制は別である。
e-mailとabuse-mailboxを分けた理由
この政策の最も具体的な部分は、二つの電子メール属性を分けた点にある。e-mailは個人間の通常連絡に使い、abuse-mailboxは自動化された報告を受け取る。単に「メールアドレスを一つ置く」のではなく、通信の性質に応じて入口を分けることで、大量の機械報告が一般連絡を埋め尽くすのを避け、報告処理の担当経路を明確にしようとした。
2011年1月のスタッフ影響分析は、inetnum、inet6num、aut-numへ、abuse-cのような名前の追加属性を任意で置き、人またはロールのオブジェクトを参照する案を示した。参照先は一度現れ、そこに二つの必須属性としてe-mailとabuse-mailboxを持たせ、その値を有効な電子メールアドレスとする、という読みだった。ただし、これはスタッフによる実装分析であり、決議の一行に新たな文言を足すものではない。
提案者はabuse-cという名前の分かりやすさを認めながら、通常のpersonまたはroleオブジェクトを使うことには懸念を示した。照会回数の制限にかかる可能性があり、複数のabuse-mailboxが併存して衝突する可能性もある。そのため、必須のabuse-mailboxを備え、Whois照会に制限のない特別なロールアカウントを好んだ。ここには、抽象的な「不正利用対策」ではなく、公開ディレクトリをどう照会可能に保つかという、かなり具体的な設計上の争点が見える。
この区別は、政策の本質をさらに明らかにする。議論の焦点は、苦情が正しいかどうかを誰が決めるかではなく、機械と人がどのフィールドを使い、照会制限をどう避け、参照をどう一意にするかだった。つまり、批准された核は、連絡情報の構造と発見可能性である。内容規制の手続、証拠評価の基準、違反認定の要件は、この設計からは出てこない。
実装はフォームから研修まで広がった
薄い政策でも、実装が小さな一か所の変更だけで済むとは限らない。スタッフの分析は、新規会員のフォームで詳しい不正利用連絡情報を集めることを想定した。既存会員が追加資源を申請する際には、参照先オブジェクトを作成するか、AFRINICが作成できるよう情報を提供するよう求める案もあった。MyAFRINIC、Whois、資源申請用のテンプレート、ウェブサイトのヘルプ、研修資料、内部ガイダンス、支援手順が変更対象となった。
この広がりは、政策が「何もしなかった」ことを意味しないと示す。公開連絡先を正しく収めるには、データベースのスキーマだけでなく、情報を収集する入口、会員が更新する画面、スタッフが説明する言葉、問い合わせに応える手順まで合わせる必要がある。スタッフは完全実装まで約60日と見積もり、長期的な内部影響を最小、すなわち0か月から3か月の分類とした。
ただし、60日は予定であり、実際の稼働日を証明しない。影響が最小と分類されたことも、権限上の意味が小さいこととは別である。技術的には限られた変更でも、公開ディレクトリの入口は、運用者、顧客、通報者、サービス提供者を結ぶ接点になる。だからこそ、実装範囲は丁寧に把握しながら、そこから内容判断や処罰の権限を推論しないことが必要になる。
提案から批准までの権限の鎖
政策が効力を持つまでには、複数の主体が異なる役割を担った。提案者は専用連絡機構を提案したが、提案しただけで政策になったわけではない。AFRINIC-13では、暫定共同議長が、提案をLast Callへ進めるコンセンサスがあると判断した。会合で変更案は示されなかった。Last Callは2011年3月18日に始まり、実質的な意見の期限は4月4日とされた。4月3日の告知は期限を再確認し、会合での意見と実装議論をコンセンサス判断で考慮すると伝えた。
スタッフはその前段で実装影響を分析し、提案者はオブジェクトモデルの一部に異論を示した。これらは、政策を実装可能な形へ近づける設計上の入力だった。PDP共同議長が提案を提出し、最終的にAFRINICの民間理事会が決議201106.117で批准した。その後は、スタッフがデータベース、ポータル、フォーム、研修、サポートを整える役割を負った。
実装後の連鎖では、資源保有者とネットワーク運用者が連絡情報を提供し、維持し、届いた報告をそれぞれの運用上・法的な責任の範囲で扱う。通報者、顧客、上流や下流の提供者、セキュリティ担当、裁判所、適法な公的機関は、疑われる行為の真偽、深刻さ、救済をそれぞれの役割で扱う。この鎖のどの段階も、AFRINICを主権者、一般規制者、警察、処罰者、没収者または裁判官へ変えない。
コンセンサスへの参加も、地域全体に対する主権の委譲ではない。共同議長の手続判断は、政策過程を次へ進めるための判断であり、刑事・民事の事実認定ではない。理事会の批准は組織内部で重要だが、国家法上の立法権を創設しない。スタッフの実装は運用上の仕事であって、苦情の正しさを審理する行政手続ではない。役割を一つずつ分けて読むと、権限の膨張を防げる。
6月の批准と19日の通知
日付を滑らかに一つへまとめることはできない。決議201106.117は、番号と理事会記録上の配置から、2011年6月の決議群に属する。同じ群の終わりには、6月6日にダルエスサラームで開かれた対面会合を閉会した決議201106.123がある。さらに、当時のActing CEOであるAlain Ainaが6月19日に送ったPGP署名付き通知は、理事会がそのダルエスサラームの対面会合でdraft-02を批准したと述べる。
この記録に基づけば、統制する出来事は6月の理事会による批准であり、6月19日はその通知が送られた日と理解するのが妥当である。ただし、現在の政策アーカイブは理事会批准の履歴日を6月19日と表示しており、通知日を採ったように見える。後年の実装案内は、さらに異なる2011年5月2日を批准日として記している。この5月の日付は、決議記録と6月の署名通知に衝突するため、確定事実として採用できない。
ここで大切なのは、分単位の年代記を作ることではなく、異なる資料が異なる日付を述べるときに、都合よく統合しないことである。理事会決議の連番、6月6日の会合系列、6月19日の署名通知は、批准が6月の理事会過程に属することを支える。6月19日を会合日そのものと置き換える必要もなければ、後年の5月表記を遡って優先する理由もない。
批准済みと稼働中は同義ではない
6月19日の通知は、批准済みの政策についてスタッフが実装作業を行い、適切な時期にコミュニティへ知らせるとした。したがって、批准の瞬間にWhoisの新しい仕組みがすでに稼働していた、とはいえない。政策の有効状態と、ソフトウェアや業務手順の配備状態を分けなければならない。
後のAFRINIC資料は、実装が2012年に行われたことを示す。ただし、2012年年次報告は3月に実装したと述べ、政策アーカイブは5月12日を実装済みの履歴日とし、別の案内には5月5日という記述もある。公開記録だけでは正確な本番稼働日を解消できない。本稿で確実にいえるのは、2011年6月の批准後にスタッフの作業が続き、2012年に実装が行われた、という範囲までである。
この時差は、権限分析にも意味を持つ。理事会の承認は、組織に実装の方向を与える。だが、承認文そのものがデータベース行を作り、会員フォームを書き換え、照会経路を開通させるわけではない。反対に、後の技術実装が存在するからといって、批准文に書かれていない内容審査や制裁まで、2011年に承認されていたことにもならない。政策状態、技術状態、権限状態は別々に確認する必要がある。
七つの箱を混ぜない
決議の射程は、少なくとも七つの箱に分けると見誤りにくい。第一は理事会の権限である。AFRINICの民間理事会は、組織の政策過程で提案を批准し、スタッフに実装を進めさせることができた。これは内部統治の権限であり、公共法上の主権や一般的な規制管轄ではない。
第二は批准・有効状態である。draft-02は2011年6月の理事会系列で批准された。しかし6月19日の通知時点では、スタッフの実装は未来の仕事として語られていた。批准は完了、配備は未完了という状態があり得る。2012年の実装資料を、2011年の決議と同じ瞬間へ圧縮してはならない。
第三はオブジェクトとフィールドの設計である。専用の参照可能な連絡先、個人連絡用のe-mail、自動報告用のabuse-mailbox、Whoisからのアクセスが核だった。スタッフの読みでは、専用オブジェクトの内部に二つの必須属性を置く。一方、各既存資源オブジェクトからの参照が批准と同時に普遍的に必須となったわけではない。オブジェクト内の属性必須性と、すべての資源に参照を付ける義務は、同じではない。
第四はデータ検証である。スタッフは値を有効な電子メールアドレスと表現した。しかし「有効」が、構文の正しさ、実際の配送可能性、メールボックスの所有確認、受信者の応答能力のどこまでを意味するかは定義されていない。政策自身は、一般的なWhoisデータ精度の問題に新オブジェクトも直面し、この提案ではデータ精度を改善しないと明記した。不正確または機能しないオブジェクトの報告方法は示唆されたが、それは別の提案に属するとされた。
第五は内容執行である。2011年の政策には、通報が真実かを判定する手続がない。受信者に一定時間内の回答を求める規則も、回答の質を測る基準も、顧客に措置を取る義務も、コンテンツを削除する権限も、言論を制御する規則もない。メールが届く入口の存在と、届いた主張の当否は別である。
第六は救済である。この文書は、不利な内容判断や資源制裁の決定を作っていないため、その判断に対する聴聞、実体審査、独立した上訴の場も定めていない。上訴条項がないことを、誰にも覆せない執行権が暗黙に存在した証拠へ反転させてはならない。そもそも争うべき制裁決定が政策に書かれていない。
第七は罰則である。罰金、警告の段階、サービス拒否、契約終了、登録抹消、資源取消し、RPKIへの措置、逆引きDNSへの措置、移転拒否、没収などは規定されなかった。応答しないことや連絡先に問題があることを理由に、資源を害する連鎖も置かれていない。後の時代の議論を2011年へ持ち込めば、この空白を架空の権限で埋めることになる。
データ精度を解かなかった政策
連絡先政策で最も見落としやすいのは、政策自身が自らの限界を書いていた点である。新しい専用オブジェクトを設けても、Whois全体にあるデータ精度の問題は残る。政策案は、新オブジェクトがその一般的問題に直面し、この提案はWhoisデータの正確性を改善しないとした。この率直な限定は重要である。
専用フィールドがあれば、検索する側は迷いにくい。しかし、そこに文字列があることだけで、現在も使われているメールボックスだとは限らない。配送に成功しても、担当部署が適切とは限らない。受信されても、誰かが読んだとは限らない。読まれても、通報の内容が真実とは限らない。回答がなくても、受信者が不正を認めたことにはならない。各段階は異なる事実であり、一つの緑色の状態へまとめられない。
スタッフ分析の「有効な電子メールアドレス」という表現も、そこを超えない。定期的に配送試験を行う周期、所有者を証明する方法、障害時の猶予、誤検知を訂正する過程、応答期限、回答内容の合格基準は示されていない。文言のない場所へ、後世の運用常識を足してはいけない。
不正確または作動しないオブジェクトを報告する仕組みが望ましいという示唆はあった。しかし提案は、それを別の政策課題として切り離した。この切り分けは欠陥の隠蔽ではなく、問題の種類を分けたものと読める。連絡先を置く設計、連絡先の鮮度を検証する制度、通報の内容を審査する制度、違反へ対応する制度は、それぞれ異なる権限、証拠、手続、救済を必要とする。
連絡可能性は判決ではない
公開連絡先が役立つことに疑いはない。障害や侵害の兆候を見つけた運用者が、相手方の適切な窓口を素早く見つけられれば、誤配送が減り、対応開始までの時間を短くできる。知らない者同士が接触するインターネットでは、公開記録は取引関係のない相手へ到達するための共通面になる。BTWの隣接研究が示す苦情配送の経済と、公開記録が見知らぬ者に与える証拠価値は、この有用性を理解する助けになる。
しかし、公記録は所有権証書でも、警察の認定でも、裁判所の判決でもない。連絡先の一覧は、「この窓口へ届けられる」と示す。そこから「この組織が通報された行為を行った」「回答が遅いから違反した」「十分な説明がないから資源を制限してよい」という結論は出ない。配送の成否、応答の有無、主張の真偽、法的責任、技術的救済は、すべて別の問いである。
Heng Luの枠組みは、この有用な核を薄いレジストリ機能として位置づける。正確な公開連絡先と客観的な連絡可能性は、民間の帳簿管理者が担える。だが、連絡可能性を行為規制、苦情の裁定、処罰、没収、取消しの梃子へ変えることはできない。これは一つの外部意見を紹介するというより、本件で権限のカテゴリーを組み立てる直接の枠組みである。
AFRINICはこの場面では、あくまで民間の帳簿管理者かつ調整者である。重要な資源台帳を扱い、ネットワーク運用に影響し得るからこそ、その機能は重大である。しかし重大性は主権ではない。技術的な依存があるからといって、警察権、処罰権、没収権、裁判権が自然発生することもない。接触可能性の提供は正当な薄い機能であり、それ以上に膨らませないことが制度の強さになる。
最も強い反対論にも境界がある
反対側の最も強い主張は、単なる空欄の連絡先では政策目的を果たせない、というものだ。公開窓口が役立つには、ネットワークが情報を提供し、変更時に更新し、技術的に利用できる形を保つ必要がある。スタッフが、新規会員フォーム、追加資源申請、MyAFRINIC、Whois、申請テンプレート、研修、サポートを一体で変えようとしたのは合理的である。レジストリは、自らの記録形式が完全で、少なくとも客観的に使用可能な値を持つことを求め得る。
この運用上の主張は軽視すべきではない。記録が空、構文が壊れている、参照が存在しないといった客観的な不備まで放置すれば、専用オブジェクトは見せかけになる。一般連絡と自動報告を分ける設計も、実際の値がなければ働かない。レジストリが自身のデータベース整合性を保つことは、帳簿管理の中核に近い。
それでも、その主張が証明するのは記録衛生までである。メールアドレスの形式が整っていることは、通報内容が真実であることを証明しない。配送可能であることは、受信者が一定の結論を出す義務を証明しない。受信者が異論を述べることは、連絡不能を意味しない。応答が遅いことも、それだけでは違法行為や契約違反の認定にならない。まして、資源を停止または奪う権限にはつながらない。
強い実装と弱い権限は両立する。AFRINICは、参照が正しい形式か、専用オブジェクトに必要な属性があるか、公開照会が機能するかを管理できる。一方で、届いた苦情について、どちらの説明が正しいか、ネットワーク運用者が顧客へどの措置を取るべきか、法的責任があるかは、それぞれの契約関係、提供者、顧客、裁判所、適法な公的機関の領域に残る。境界を守ることは、連絡先政策を弱めるのではなく、その正当な目的を守る。
チョークポイント化の危険
NRSが示す資源保有者の観点は、レジストリの決定がネットワーク継続性のチョークポイントになり得るという構造的な警告である。LARUSの運用継続性の観点も、レジストリ層の判断が、その上に築かれたインフラの依存関係へ伝播し得る理由を示す。これらは2011年の理事会の動機や特定の違反を証明する資料ではない。だが、なぜ連絡記録の訂正と資源への不利益を分けなければならないかを説明する。
台帳上の一項目に問題があるとき、自然な救済はその項目を直すことだ。連絡先の欠落なら連絡先を補い、参照の誤りなら参照を修正し、形式不備なら形式を整える。もしその軽い不備を、ネットワークを動かす基盤資源への不利益へ直結させれば、記録管理上の小さな争いが、利用者や顧客を巻き込む大きな停止リスクへ変わる。
特に危険なのは、配送失敗、沈黙、意見の不一致を一つの「不服従」へまとめることである。アドレスの誤記、メールシステム障害、担当交代、迷惑メール判定、言語の違い、事実関係への反論は、互いに異なる。2011年の政策は、これらを審査する制度を作っていない。にもかかわらず、連絡先フィールドを行為評価の代理変数にすれば、客観的な帳簿機能が、実体的な裁定面へ変質する。
この変質は、政策文に明示の警察権と書かなくても起こり得る。重要な資源への依存が高ければ、「任意の協力」が実質的な強制に見えることがある。だから制度分析では、何が便利かだけでなく、誰がどの不利益を決められるか、その決定にどの証拠と救済があるかを分けて問う必要がある。2011年の決議は、その後半を承認していない。
反実仮想で見える薄い機能の価値
専用設計がなかった場合を考えると、政策の正当な価値が見えやすい。不正利用に関する報告は、一般的な電子メール、備考、運用連絡先へ送られ続ける。大量の自動報告が個人向けの窓口へ流れ、担当者を探すために複数の連絡先を試す。送信者は時間を失い、受信側では必要な報告が他の通信に埋もれる。責任ある当事者へ到達する前に、通報の鮮度が落ちる。
専用で到達可能な連絡先があれば、探索と誤配送は減る。e-mailとabuse-mailboxの分離により、人向けの通信と機械報告の流れを整理できる。資源オブジェクトから一意の窓口へたどる仕組みは、見知らぬ運用者同士の協力を助ける。これは、コンテンツを裁かなくても得られる利益である。
その後の判断は、窓口の外に残る。運用者はログや顧客関係を確認し、顧客は事実に答え、サービス提供者は契約の範囲で動き、必要なら裁判所や適法な公的機関がそれぞれの権限で扱う。AFRINICは、連絡先を公開する調整者として役立ちながら、通報の内容を判断する主権者にはならない。
この反実仮想は、「何もしない」か「すべてを執行する」かの二択を退ける。薄い制度は、責任放棄ではない。配送経路を整え、公開記録を読みやすくし、担当者を見つけやすくするだけでも大きな運用価値がある。権限を限定することで、むしろその機能への信頼を保てる。
分からないことを権限に変えない
公開記録には空白がある。決議201106.117について、理事会の出席者、投票、棄権、利益相反、当該決議だけを扱う署名済み議事抜粋は示されていない。理事会が批准する役割の正確な法的・定款上の根拠も、ここで確認できる資料からは確定できない。凍結された当時のdraft-02ページそのものは、歴史的な位置で現在確認できず、現行アーカイブと同時代のメッセージが公開記録として残る。
実装についても、抽象的な専用オブジェクトが、実際のIRTオブジェクトとmnt-irt参照へ変わった正確な時点を示す署名済みの配備変更記録はない。約60日という見積もりを裏付ける工数台帳や費用記録もない。批准時点の採用率も分からない。「有効なメールアドレス」の意味が、構文、配送可能性、所有確認、応答能力のどこまでだったかも定義されていない。
これらの空白は、疑惑を創作する入口ではない。2011年の理事会、提案者、共同議長、スタッフに詐欺、腐敗、乗っ取り、悪意、処罰意図があったとする根拠はない。逆に、空白があるから理事会に無限定の裁量があった、ともいえない。確認できないことは確認できないまま残し、確認できる権限だけを述べるべきである。
また、批准日と実装日の食い違いを、資料の一つを黙って消すことで整合させてはならない。6月の決議系列、6月19日の通知、後年の5月2日表記、2012年の3月と5月の実装表記は、同じ重みの証拠ではないが、存在する不一致である。統制する記録を明示し、下流の日付は未解決とする方が、制度の記憶を正確に保てる。
結論――扉を公開し、裁定席を作らない
決議201106.117は、取るに足りない文書ではない。RPDでの議論、AFRINIC-13での進行判断、スタッフの影響分析、Last Call、共同議長からの提出を経て、民間理事会がdraft-02を批准した。そこから、専用オブジェクト、二種類の電子メール属性、Whois照会、会員への案内、複数の内部システムにまたがる実装作業が生まれた。インターネット上で、正しい担当窓口へ報告を届けるための実務的な前進だった。
だが、実務的な前進を、実体的な統治権へ読み替えてはならない。批准されたのは、通報の配送先を示す公開の扉である。通報の真偽を判定する裁定席ではない。abuse-mailboxは受信口であり、違反認定ではない。Whoisの参照は道標であり、制裁命令ではない。連絡不能を直す手段は、まず記録を訂正することであって、資源を害することではない。
AFRINICがこの政策で担ったのは、民間の帳簿管理者と調整者の役割である。理事会の批准によって、主権、公共規制管轄、警察権、処罰権、没収権、裁判権は生まれなかった。政策には、定期検証、応答義務、内容判断、顧客への措置、警告段階、取消し、上訴がない。この不在は欠けた権限を推定する余白ではなく、批准の境界そのものである。
連絡可能性を強くし、権限を薄く保つ。この二つは矛盾しない。正確で見つけやすい呼び鈴を設けながら、誰が正しいか、どの救済が必要かは、運用者、顧客、提供者、裁判所、適法な公的機関の固有の役割へ残す。2011年の決議の価値は、まさにその狭さの中にある。
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