要約

  • 2023年11月8日の全国障害と2025年9月18日の緊急通報障害は、いずれも計画された変更を起点としている。
  • 豪州の通信規制当局ACMAは、2023年の障害について、事業者自身が自社ネットワークを監視・管理するためのアウトオブバンド接続を十分に持っていなかったと認定し、「この障害は防げたはずだ」と述べた。
  • 政府は2024年、ネットワーク管理ツールへの遠隔アクセスと十分な冗長性、6か月ごとのエンドツーエンド試験、障害後の報告義務を含む18の勧告をすべて受け入れた。しかし2025年9月の変更では、通話を迂回させないままゲートウェイを閉鎖し、作動した警報のエスカレーションと顧客対応にも失敗したと、事業者自身が説明している。

同じ種類の失敗が二度起きた

2023年11月8日の障害について、Optusは「午前4時5分ごろ、Optusのネットワークは、定例のソフトウェア更新のあと、国際ピアリング網から経路情報の変更を受け取った。これらの経路情報の変更はネットワーク内の複数の層に伝播し、主要ルータの事前設定された安全水準を超えた。その結果、これらのルータは自己を保護するためにOptusのIPコア網から切断された」と説明した。この説明は豪州上院の委員会報告が引用している(上院委員会報告)。同社の上院提出文書は、100台を超える機器がIP経路情報の過負荷から身を守るために自動的に自己隔離したこと、その自己保護の上限値が機器ベンダーが提供する初期設定であったこと、復旧には全国14拠点の100台を超える機器での作業が必要だったことを記している(Optus提出文書)。同社のネットワーク部門責任者は、事前設定された安全上限に達した、あるいは超えた約90台のルータが影響を受け、いっせいに停止したと述べ、変更に対する「防御が期待どおりに働かなかった」と認めている(上院委員会報告)。

原因の帰属は当事者間で一致していない。親会社Singtelは、経路情報の増加が事前設定されたフェイルセーフを作動させたとしつつ、「そのアップグレードは根本原因ではなかった」と述べ、Reutersもこの否定を報じている(上院委員会報告、Reuters)。機器ベンダーのCiscoは「Ciscoのルータは設定どおりに動作した」と述べた(上院委員会報告)。Optus自身の説明でも、北米のSingtelインターネット交換点でのソフトウェア更新は経路情報の変化を引き起こしたが、2023年障害の原因ではなかったとされる(Optus提出文書)。つまり「変更が引き金であり防御が失敗した」という点では広く一致する一方、根本原因が何かについては、事業者・親会社・機器ベンダーがそれぞれ異なる説明を保っている。

2025年9月18日の障害についても、起点は計画された変更だった。Optusの提出文書によれば、同日00時17分から14時34分(AEST)まで14時間を超える障害が発生し、南オーストラリア州、西オーストラリア州、ノーザンテリトリー、およびニューサウスウェールズ州極西部で、緊急通報の発信を試みた605の固有サービス番号が緊急サービスに接続できなかった。同文書は、この作業のなかで、セッション・ボーダー・ゲートウェイ(SBG)と呼ばれる機器に「ソフトロック/ハードロック」の変更が、プラットフォームからトラフィックを迂回させないまま実施されたと記している(Optus提出文書)。2025年の障害は、Regency Park交換局における定例かつ計画されたファイアウォール更新の際に誤った手順が踏まれたことにより発生し、さらに作動した警報のエスカレーションの失敗と、障害を通報する顧客への対応の失敗によって深刻化した(Optus提出文書)。

この障害に関する独立報告書は、18日午前0時直後に実施された典型的なファイアウォール更新のあいだ、緊急通報を含む音声通話を迂回させないまま、ファイアウォールを切り離すために交換局のゲートウェイを閉鎖した結果、トリプル・ゼロ通話が遮断されたと述べている。同報告書は、この失敗が、Optusの従業員と請負業者Nokiaによる少なくとも10件の誤りによって生じたとし、その誤りは「重要サービスへの注意の欠如と、手順への規律ある従事の欠如」によってのみ説明できるとしている。また、OptusがNokiaに与えた変更指示が誤っており、その手順から生じうる結果について、NokiaもOptusも適切な見直しを行わなかったと指摘している(2025年障害に関する独立報告書)。

規制当局が認定し、政府が求めたこと

ACMAは、Optusの子会社が緊急通報規則違反により総額1,200万豪ドルを超える違約金を支払ったと発表した。同発表は、2023年11月8日の全国障害のあいだ2,145人が緊急通報サービスに到達できず、緊急通報を試みた人について369件の安否確認が行われなかったとしている。ACMAは自らの認定として、「当社の認定は、Optusがネットワークの管理において複数の領域で失敗し、この障害は防げたはずだったことを示している」と述べた(ACMA発表)。事業者が制裁金を科された事実は報道でも伝えられている(iTnews)。

非開示部分を含む形で公表されたACMAの調査報告書は、Optus Mobileが電気通信・郵便・通信サービス法148条1項に4,560回違反したと認定し、Optus Networks、Optus Internet、Optus Fixed Infrastructureにも少数の違反を記録している。同報告書は、障害当時、Optusが管理網へのアウトオブバンド接続を実効的に整備するための実行可能な措置を取っておらず、自社の被管理ネットワークや設備を監視・管理するためのアウトオブバンド接続が不十分だったと評価している(ACMA調査報告書)。あわせて、中核ネットワーク・ルータを保護し合理的なトラフィック増に対応できるだけの冗長性と、移動基地局を含む設備の監視・管理に必要な適切なアウトオブバンド経路の確保を怠ったとして、決定11条1項の違反も認定している(ACMA調査報告書)。

政府は2023年11月9日、障害後の調査を実施すると発表し、ACMA前副議長のRichard Bean氏を責任者に指名した。同氏は2024年3月21日に最終報告書を提出し、18の勧告を行い、政府はその18すべてを受け入れた(所管省のページ)。受け入れは公表された政府の回答文書にも示されている(政府回答)。上院の環境・通信委員会は2024年9月27日に報告書を提出し、政府の回答は2025年1月28日に提出された(所管省のページ)。

Beanレビューの勧告には、中核網への接続が失われた場合でもトリプル・ゼロへの通話が他の網で運ばれるよう義務を明確に定めること、6か月ごとのトリプル・ゼロ生態系のエンドツーエンド試験(障害時のネットワーク挙動を含む)を行うこと、大規模障害後は定められた期間内に原因・解決手順・トリプル・ゼロへの影響・再発防止の期限付き計画を規制当局と所管省に報告すること、障害中および障害について顧客に伝えるべき情報を特定すること、そして中核網障害時にネットワーク管理ツールへ遠隔からアクセスして起動できる能力と、それを展開するための十分な冗長性を確保することが含まれている(Bean最終報告書)。

証明されていないこと

公開文書からは、次の点は確定できない。第一に、レビューが求めた冗長な遠隔管理アクセスが、2025年9月までに実際に配備され、試験され、動作していたかどうかは、本稿が確認した資料では示されていない。第二に、2025年のRegency Parkでのファイアウォール更新について、ゲートウェイを閉鎖する判断を誰が承認し、どのような迂回計画が存在したかを示す変更承認記録は見当たらない。第三に、2025年の障害について義務づけられた障害後報告が実際に行われたか、行われたとすればどの期間内だったかは、確認した資料からは分からない。第四に、OptusとNokiaの契約が、変更の承認、トラフィックの迂回、警報のエスカレーションを請負業者に割り当てていたのか、それとも事業者に留保していたのかは示されていない。第五に、独立報告書の「少なくとも10件の誤り」は件数の記述であり、Optusの従業員とNokiaの間の責任配分ではない。加えて、ACMAの調査報告書は非開示部分を含む版が公開されており、2025年の独立報告書は政府やOptusの公式アドレスではなく報道機関が公開した写しで確認できるものである。本稿に挙げた数値と引用は、それぞれの発行主体と文書名に帰属させている。

修理が効いたと言える条件と、そうでない徴候

変更管理が実際に効いていることを示す観測可能な条件は、抽象的でない。変更の実施前に、変更対象のプラットフォームからトラフィックを迂回させたことが、記録された手順として確認できること。迂回が緊急通報の経路を含むこと。警報が作動した場合に、誰が、どの権限で、いつまでに対応するかが当番体制として明示され、時刻付きで記録されること。管理用の経路が、変更対象から独立して存在し、変更作業の一部として検証されること。試験が、正常時の通話到達だけでなく、変更中や障害中の挙動を含むこと。そして障害後の報告が、原因と影響と再発防止の日程を示して公表されることである。

逆に、修理が効いていない徴候も具体的である。「手順が守られなかった」という種類の認定が、別の日付、別の交換局で繰り返されること。迂回計画の存在を事後に説明できないこと。警報が記録されていながら対応に至らなかったこと。責任の説明が、法令違反の認定から請負業者との契約問題へ移っていくこと。これらは、対策が存在しないことを意味しない。対策が、次の変更を実際に止められていないことを意味する。 本稿が扱う事業者のディレクトリ項目はSingTel Optus Pty Ltdである。