要約

  • LEIデータの毎日配信と、企業情報を少なくとも年に一度確認し直す仕組みは別物だ。ファイルの日付だけでは、その企業をいつ確かめたのかは分からない。
  • LAPSEDは更新期限を過ぎた登録を指す。企業の活動停止、親会社情報の申告不足、特定取引の受付条件まで、一語に代弁させると修復先を間違える。

新しいファイルは気持ちがいい。取得日時が今朝なら、取引先の確認も今朝済んだように見える。だが、その安心感をデータは約束していない。ファイルが届く時計と、中の事実を確かめる時計は別々に動く。

企業などの法人を識別する20文字のLEIには、名称や登記情報だけでなく、状態と日付が付いている。識別子の役割は、別々の記録が同じ主体を指していると分かるようにすること。更新期限の役割は、その主体についての情報を手入れすることだ。期限が来るたびに主体まで消してしまえば、名寄せのために作った仕組みが名寄せを壊す。

今朝の配信、いつの確認か

GLEIFのデータ品質管理の説明では、情報を正確に申告する出発点は登録する主体にある。発行機関は、国の企業登記など現地の権威ある情報源に照らして確認する。変更があれば主体が管理発行機関へ通知し、年次更新では少なくとも年に一度、双方が情報を見直して再確認する。

一方、発行機関は管理するLEIのファイルを毎日公開する。GLEIFも日次でファイルを集約、公開し、公開後の情報には自動の品質検査を毎日行う。日次の配信と検査は、年次の確認を置き換えない。昨日の新聞を今日の封筒に入れても、取材日が今日になるわけではない。

この区別を消すと、緑も赤も読み違える。「今日更新されたデータだから、その会社は今も確実に活動中だ」と考える側も、「期限を過ぎたから、その会社はもうない」と考える側も、記録が答えていない問いに答えを作っている。

会社の状態と登録の状態

LEI-CDF 3.1の定義は、EntityStatusとRegistrationStatusを分ける。前者のACTIVEは、直近の報告・更新時点で、主体が適法に登録され活動していると報告したことを表す。INACTIVEは、閉鎖や合併などにより、適法な登録や活動が続いていないと確認された状態だ。

後者に属するLAPSEDは、NextRenewalDateまでに登録が更新されず、公開情報から活動停止が判明しているわけではない状態を指す。更新の遅れを報告する欄である。会社の死亡届ではない。

ISSUEDも、確認され発行された登録が、直近の更新時点で活動していた主体を識別するという定義になっている。時間の条件を外して読むと、古い確認に現在の保証まで背負わせることになる。支払い能力や契約の履行能力をこの語で測ることもできない。

RETIREDは合併によらず活動を終えた主体の登録、DUPLICATEは使うべきでない重複側の登録、ANNULLEDは発行後に誤りや無効が認定された登録を示す。全部を「無効」にまとめた画面はすっきりする。すっきりした分だけ、窓口で説明が長くなる。

日付にも仕事の分担がある。LastUpdateDateは管理発行機関が情報を最後に更新した日、NextRenewalDateは主体が次に更新・再確認すべき期限。登記機関とその機関における主体番号は、元の記録をたどる足場になる。法人に関する出来事には、法的な効力が生じる日と、その出来事が記録された日を分ける項目もある。問い合わせを一つ減らしたければ、こうした差を隠すより残した方がよい。

親会社が見えない理由も一種類ではない

Policy Conformity Flagは、さらに別の条件を伝える。適合には、登録が適時に更新されていることと、直接・最終の親会社に関する情報が申告されていること、または認められた非申告理由があることが必要だ。

認められた理由は、制度が想定した正規の結果である。親会社名が画面に出ていないだけで隠蔽と決めれば、利用側が勝手に新しい条件を追加する。逆に非適合なら、更新または情報の補充が必要だと分かる。どちらが欠けているかを調べず、毎回「更新してください」と返すだけでは、別の穴を同じ道具で埋めようとすることになる。

GLEIFはこのフラグと技術的なデータ品質管理も区別している。データ形式や状態遷移の規則を満たすこと、これらの申告条件を満たすこと、企業の商売が健全であることは、それぞれ別の判定だ。企業の格付けに見える一つの印に集約すると、情報の用途が元の証拠を追い越す。

取引の入口を閉じるのは利用側だ

公式のLEI検索ガイドは、主体のLAPSEDも、関係情報のLAPSEDも、それぞれの活動停止を意味しないと説明する。利用者は用途に応じて許容する状態を判断する。ISSUEDやPUBLISHEDの情報だけを採用する用途もある。

特定の業務が最新の登録を求めるなら、その条件を満たすまで受け付けない判断には具体的な理由がある。理由は「この取引に必要な登録の更新が済んでいない」で足りる。「会社が消滅した」と言い換えた瞬間、別の主張が加わる。同じ取引を一時止める場合でも、前者なら更新確認へ、後者なら取引先の廃止や再登録へと仕事が流れる。

仮に調達部門がLAPSEDだけを理由に仕入先の履歴を切り離したらどうなるか。更新が完了しても、過去の発注、契約、請求とのつながりを戻す作業が残る。この例の追加費用は、更新制度そのものに加えて、調達側の分類方法から生じる。外部データを使ったというだけで、判断の責任まで外部へ移せるわけではない。

実際の損失額を算出するには、拒否された取引と訂正処理の記録が足りない。それでも、疑問を絞れば処理先を絞れるという関係は変わらない。無料で登録不要の検索、変更履歴、証拠に基づく異議申立ては、そのための材料になる。情報への異議は発行機関へ送られ、主体とともに修正の要否が扱われる。

手入れされた情報を要求することと、識別の連続性を保つことは両立する。日付を読み落として会社を消し、次の日に同じ会社を探し直す。そんな忙しさに予算を付ける必要はない。