要約

  • ケニア高等裁判所は、旧契約者の十分な説明を受けた上での確認可能な同意、または連絡不能・明確な権利放棄を示す記録のある確認手続きを、番号再割当ての条件とした。旧契約者のデータを漏らさない技術的措置も求めている。
  • 通信当局の案は六カ月の通知期間と番号照会用の中央システムを盛り込む。番号が再利用された事実は示せても、それにひも付くすべてのアカウントが切り離された証拠にはならない。

長く使われていない携帯回線を見ると、まず「まだ利用者がいるのか」と考える。番号を別の人に渡す段階では、別の問いが浮かぶ。同じ数字を、旧利用者本人を示すものとして扱い続けているサービスはどこに残っているのか。

携帯番号には二つの顔がある。通信網にとっては限りある資源であり、通信会社はSIMを停止して番号を次の契約者に回せる。一方、銀行、勤務先、学校、行政ポータルなどにとっては、長く保存される連絡先やアカウント復旧手段でもある。新しい契約者が電話やSMSを受け取るようになっても、旧利用者と各サービスの関係が同時に終わるとは限らない。

ケニア高等裁判所は Odhiambo & another v Attorney General & another で、このずれを憲法上のプライバシー問題として扱った。服役中に番号が使えなくなり、再割当てによって情報が第三者に渡る恐れがあると、二人の受刑者が訴えた。裁判所は、登録済みの携帯番号を個人データにつながるデジタル識別子と認め、憲法第31条に基づく保護を求めた。番号を再割当てできるのは、旧登録者が内容を理解した上で確認可能な同意を示した場合、または相当な期間と公示を経て、記録に残る調査でも所在が分からない、もしくは権利を明確に放棄したと確認できた場合に限る。旧利用者の個人データが無断で露出・移転しない技術的措置も必要とした。

判決は刑務所当局にも別の役割を課した。服役中の番号を守り、通信会社に通知する仕組みを作って官報で公表することだ。命令が実施されなければ、2026年9月19日午前0時をもって、以前に登録された番号の再割当てを自動的に停止するという条件も置いた。これは判決に記された法的な条件であり、その日までに最終規則や中央データベースが稼働した証拠ではない。

ケニア通信庁(CA)が公表した CA.G.520:2026 は、番号の再利用手順を示す案だ。収益につながる利用が3カ月ないと、手続きが始まる。通信会社は、登録時の本人確認(KYC)情報にある連絡先を使って利用者に接触し、さらに3カ月の再利用猶予を設ける。次の期間が終わる30日前には、対象番号の一覧を公表する。一般向けの告知には、USSDによる状態確認方法も載せる。

通知期間が過ぎたら、通信会社は自社システムにある旧利用者の個人データ、キャッシュ情報、サービスを切り離して安全に保管し、新しい契約者が引き継がないようにする。その上で、停止・再利用番号を四半期ごとに中央システムへ登録する。銀行などの第三者は、その番号に関する義務の連絡を送る前に登録状況を照会し、自社記録を更新する想定だ。通信会社は登録後に再利用へ進める。ただし中央システムに依存する条項は、データベースが整備されてから適用される。

この案は、番号の再利用を通信会社内部の処理だけで終わらせず、記録に残る受け渡しに変える。作業の分担も明確にしようとしている。通信会社は自社データを整理し、中央システムは番号の状態を示し、外部サービスは照会して自らのアカウントを管理する。意見募集のまとめによると、CAは中央の再利用番号リストと定期照会を支持した。モバイル決済や銀行との個別確認を求める意見に対しては、通信会社は利用者が登録したすべての付加価値サービスを把握できないと答えている。

ただし、「再利用済み」という状態表示は、銀行の顧客記録が「本人は番号を変更済み」と更新されたことと同じではない。照会結果は古い番号を連絡先として扱わないよう促せるが、各銀行のプロフィールを自動修正するわけではなく、すべてのアカウント復旧手段から番号が外れた証明にもならない。四半期ごとの登録では、照会時点の最新状態が常に見えるとも限らない。意見募集では、中央システムの導入前に管理・安全ルールを決めるよう求める声も出た。CAは、詳細はシステム構築段階で扱うと回答した。

公開資料を読む際には、規則の状態にも注意が要る。CAの公開相談ページは今もこの文書を「草案」と呼び、意見締切日を9月11日と記載している。一方、意見結果ページには9月1日から11日までの提出内容をまとめた資料が掲載された。ケニア議会が10月9日の公聴会について出した報告では、CAの長官が手続きを策定したと述べ、3カ月の連絡期間、一般告知、USSD確認、特別な保留措置を説明した。同じ審議では、亡くなった利用者への通知方法も問われ、KYC登録時に代替連絡先が必ずしも収集・確認されないとの説明があった。

これらの記録は、規制当局の作業と公聴会での説明を示している。しかし、CA.G.520:2026 の最終的な法的地位、裁判所が求めた受刑者向け制度の官報掲載、中央システムの運用開始までは確認できない。すでに停止した番号へSMSを送っても、旧利用者には届かない。予備連絡先も、登録され、更新され、代理の権限がある場合にしか役に立たない。

次に必要なのは待機期間を足すことより、受け渡しの各時点を確かめることだ。不使用の判定、本人への接触、公示、自社データの切り離し、中央登録、そして初回の再割当てを別々のイベントとして記録する。外部サービスも、通知を受ける番号と、本人確認やアカウント復旧に使う番号を区別しなければならない。再利用番号の照会は誤った請求通知を防げても、重要なアカウントの復旧まで止めるとは限らない。

これはケニアの案がすでに失敗したという指摘ではない。公表資料が示すのは予定された手順であり、施行後の実績ではない。データベースが稼働していることも確認されていない。最終規則、システム、各サービスの運用によって、番号の持ち主が変わった事実を関係者へ伝えつつ、旧利用者の履歴を新しい利用者に見せずに済むか。それが実務上の問いだ。

Heng Lu の第72号ノートは、ここでは編集上の視点に限って使える。共通の登録簿は正確な状態を保ち、監査可能な連携を助けるべきだが、個々のサービスを実際に制御する組織は自らの判断に責任を持つ。これはケニアの法的ルールではない。中央システムが番号の状態を権威的に示すことと、すべてのアカウントが修正済みだと証明することは別だ、という設計上の確認である。

出典と限界:高等裁判所の判決、通信庁の草案 CA.G.520:2026、意見募集のまとめ、公開相談ページ、10月9日の議会報告。Heng Lu 第72号ノートは編集の参考に限る。中央システムが稼働中であること、アカウント乗っ取りが発生したこと、草案だけで裁判所の命令が満たされたことは主張しない。