要約
- JANOG58は7月15日から17日まで、愛媛県民文化会館の別館に設けたスポンサー会場へローカル5Gによる無線接続を提供した。
- 公式ニュースレターによれば、実験試験局免許の下で実機のローカル5Gを運用したのはJANOGで初めてで、愛媛CATVが免許人だった。
- Celona 5G LAN、別館をカバーする無指向性アンテナ、ローカル5G SIMを入れたCPEルーターが接続経路を構成した。
- 3日間の通信量は上り約30GB、下り約140GBとされた。ただし、帯域幅、遅延、損失、同時接続数、Wi-Fiとの比較は公表されていない。
会場の別館は、ふつうなら導線と配線の話で終わる。JANOG58では、そこが無線局をどう運用するかという話になった。
当初は愛媛県民文化会館の本館のみで開催する予定だった。しかしスポンサー応募が集中し、ホストのアリスタネットワークスジャパンは別館にもスポンサー会場を広げた。本館と同じ目的の無線環境を短期間で用意する必要が生じた一方、別館だからといって、電波利用の責任、免許の対象区域、設備管理、利用者への受け渡しを曖昧にできるわけではない。
8月13日に公開されたJANOG58のニュースレターは、愛媛CATV、双日テックイノベーション、アリスタが別館にローカル5G環境を構築した経緯を記す。愛媛CATVを免許人とし、別館を基地局設置エリアとする実験試験局免許を取得した。四国総合通信局への事前相談を含め、免許取得には約2か月を要したという。ただし、周波数、帯域幅、申請日、干渉調整の詳細は公開されていない。この事例から一般に「ローカル5Gの免許は短期間で取れる」とは言えない。確認できるのは、今回の会場サービスが許可された実験運用として組み立てられたことだけだ。
電波を「ブースで使える接続」に変える
構成の要点はCPEにある。基地局装置にはCelona 5G LANを使い、別館全体へ電波を届けるために無指向性アンテナを天井から吊り下げた。各スポンサー会場では、ローカル5G用SIMを挿した5G対応CPEルーターを置き、その先を通常の無線LANに近い形で使えるようにした。ローカル5G対応のウェアラブルカメラもデモ用途で用いられた。
ここで分けて考えるべきなのは、無線側とテナント側の運用面である。無線側には免許人、設置エリア、アンテナ、基地局、SIM、無線従事者がいる。スポンサー側にはCPEから先の接続、利用者の問い合わせ、端末の切り分けがある。どの部屋にどのCPEを置くか、どのSIMがどの回線に紐づくか、障害が無線区間なのかCPEの先なのかを誰が判断するか。臨時の会場拡張ほど、この境界を明確にする必要がある。
ニュースレターは「実機運用はJANOG初」と表現する。その価値は、基地局を見せたことではなく、認可された無線設備をスポンサー会場のサービスとして運用したことにある。デモは電波を出せる。運用は利用者、機器、許可、監視、障害対応を同時に成立させなければならない。
公表値は利用実績であって性能比較ではない
公開された通信量は限定的だが具体的だ。7月15日には、1台のCPEルーターで上り11.46GB、下り27.15GB、計38.6GBが記録された。会期3日間では上り約30GB、下り約140GB、計約170GBだった。スポンサーからは「快適」「安定している」との声があり、大きなトラブルなく任務を完遂したと報告されている。
これは会場で実トラフィックが流れた証拠である。しかし、ローカル5Gが会場Wi-Fiより優れていたことの証明ではない。公表資料には、稼働CPE数、同時接続数、無線利用率、電波品質、アプリケーション種別、遅延、パケットロス、最大速度、Wi-Fiとの同条件比較がない。170GBの内訳も、スポンサー利用、デモ、運用トラフィックに分かれていない。数字を速度や効率の評価に置き換えることはできない。
むしろ、この記録が残すべき教訓は、会場の容量不足を「つながる」という抽象語で処理しなかった点にある。免許人、認可区域、基地局、アンテナ、SIM、CPE、スポンサー支援を一つの責任連鎖に置いた。ネットワーク運用者が次に問うべきなのは、ローカル5Gが常に速いかではなく、どの会場制約の下で、この責任連鎖を作る費用と複雑さが、有線やWi-Fiの拡張より妥当になるかである。
次回は、CPE台数、同時接続、可用性、遅延の分位点、損失、障害チケット、復旧時間、そして比較可能なWi-Fiまたは有線の基準を公表できれば、運用記録はさらに強くなる。JANOG58はそこまで主張していない。それでも、別館という急な制約に対して、免許付きの無線と会場サービスを実際に結びつけたという事実は、十分に検討に値する。

