要約

  • ICANN理事会は公開会合の開催地を変更する権限に基づき、ICANN87をマスカットからバリへ移すことを承認し、公開意見募集を要しない組織上の行政機能と分類した。
  • スタッフと理事会財務委員会は候補地、費用、財務リスクを審査したが、現在の公開決議は会場・ホテルの支出上限を伏せ、候補地を比較できる資料も示していない。

ICANNの10月公開会合をバリへ移す決議には、いまも伏せられた金額が残る。理事会は2026年5月3日、会場とホテルの契約を承認したが、現在閲覧できる文書では支出上限が「交渉上の機密情報」とされる。その一方で、誰が決め、どの審査を経て、なぜ公開意見募集を行わなかったのかは、かなり詳しく記されている。

理事会は2025年10月30日、ICANN87の開催地をオマーンのマスカットに決めていた。2026年5月3日にインドネシアのバリへの移転を承認し、ICANNは6月2日に新会場を公表した。日程は10月17日から22日のまま維持された。理事会はCEOに対し、オマーン電気通信規制庁と協議し、将来オマーンで公開会合を開く双方合意の日程を探るよう求め、現地ホストと施設がすでに行った準備に謝意を示した。決議は地域情勢に伴う渡航と安全の不確実性を移転理由に挙げ、オマーン側の責任ではないと明記した。

理事会の説明から、統制の流れをたどることができる。ICANNの権限委任ガイドラインは、すでに告知された公開会合の移転、または会合戦略からの逸脱を理事会の承認事項としている。契約・支出方針は75万米ドルを超える支出にも理事会承認を求める。スタッフは公開された開催地選定基準に沿い、世界各地の代替地を調べたと説明し、地理的ローテーションにも合うバリを選んだ。理事会財務委員会は財務リスクと軽減策を検討し、合理的で許容できると判断した。理事会も情報と費用を確認したとしている。

ここから確認できるのは、正式な内部審査であり、外部の読者が再現できる比較ではない。決議は検討された全候補、採点表、詳しい費用前提を示していない。会場とホテルの支出は承認されたが、その上限は伏せられている。脚注によると、交渉情報の一部を公開するため決議は6月1日に再掲載された。それでも、現在の公開版では上限額はなお非公開だ。この証拠から、財務審査がなかったとは言えないし、外部から価格を検証できるとも言えない。

手続き上の分類も重要だ。理事会は移転を、公開意見募集を必要としない組織上の行政機能と記した。会場を変更する権限は明示され、スタッフと財務委員会の審査も説明されている。だからといって、法律上、意見募集が必要だったと証明されるわけではない。ここに見えるのは、日常の組織運営と政策決定の境界をICANNがどこに引いたかだ。会場は費用や参加条件に影響しうるが、この選択は政策変更ではなく組織運営の問題として扱われた。

理事会はICANNの支出とコミュニティの渡航費を認めたうえで、開催地にかかわらず発生し、承認済みのFY27予算に計上されていると述べた。これは予算上の扱いを示すが、負担の配分は示さない。候補都市ごとの渡航費比較も、どの集団が多く負担するかの測定も公開されていない。移転が特定集団を排除した、あるいは参加状況を変えたという証拠はない。同時に、予算の一項目から誰がより多く支払ったかも分からない。

三つの問いを分けて考える必要がある。会場を移す理事会の権限は文書にある。内部審査、支出基準、財務委員会の役割も記録された。一方、公開記録には再現可能な費用比較も、承認された上限もない。この区別を保てば、機密扱いだけで不正を断定することも、内部承認が済んだのだから外部への説明は不要だとすることも避けられる。

主な資料は、5月3日の理事会決議と理由、2025年10月30日の当初選定決議、6月2日の移転発表、開催地選定基準、ICANN87会合ページだ。これらは最終支出、全候補地、実際の渡航費負担や参加者の結果を明らかにしていない。5月3日の会合議事録にも理事会の決定が記録されている。