要約
- ICANNの再考請求、IRP、オンブズマンは、異なる行為や扱いを対象とする別個の説明責任経路である。
- いずれの経路も、利用可能性だけで元の識別子調整や政策上の決定が停止・撤回されることを意味しない。
三つの経路を同じものとして扱えない理由
ICANNの定款と説明責任資料は、再考請求、独立審査、オンブズマンによる検討、理事会の説明責任を、契約執行や各国裁判所による司法審査とは区別している。[https://www.icann.org/resources/pages/governance/bylaws-en] [https://www.icann.org/resources/pages/accountability-2016-06-28-en] したがって、ICANNの内部的な審査経路を、一般的な行政不服申立てや裁判上の上訴制度とみなすのは正確ではない。
実務上の違いは、次の五つの要素で把握できる。すなわち、何が発動条件になるのか、誰が申し立てられるのか、どの行為または扱いが争われるのか、誰が審査するのか、そして結果が元の決定にどのような効果を持ち得るのかである。
再考請求:政策・手続との不整合を問う経路
再考請求は、ICANNのスタッフまたは理事会による行為・不作為が、確立された方針、手続またはプロセスと矛盾すると主張する場合に、重大な影響を受けた個人または組織が利用できる可能性がある。[https://www.icann.org/resources/pages/reconsideration-2016-06-28-en] ただし、申立人の資格と提出期限があり、すべてのICANNの判断について本案を再審理する一般的な上訴ではない。[https://www.icann.org/resources/pages/reconsideration-2016-06-28-en]
この区別は救済の範囲に直結する。再考請求が可能であることは、申立人が望む実体的な結果を得られることを意味しない。制度の対象、適格性、期限、利用できる救済を、問題となる行為ごとに確認する必要がある。
IRP:理事会の行為・不作為と制度文書との適合性
独立審査プロセスは、適格な当事者が、一定の理事会の行為または不作為について、定款、付属定款、適用される方針または手続に照らして争うための経路である。[https://www.icann.org/resources/pages/irp-2016-06-28-en] IRPの対象範囲と救済は、付属定款および適用されるIRP規則によって定められる。[https://www.icann.org/resources/pages/irp-2016-06-28-en] そのため、立場、提出期限、審査基準、救済の内容は、制度上の一般論ではなく、適用される文書と個別手続を読んで判断しなければならない。
ICANNはIRPの提供者や手続に関する資料を公開しているが、実際のIRP案件や判断は、立場、期限、審査基準、救済がどのように運用されるかを確認するための追加資料になる。[https://www.icann.org/resources/pages/irp-providers-2016-06-28-en] 逆に、公開された制度案内だけから、特定の最近の案件の結論や、実務上どれだけ早く決定が変わるかを推定することはできない。
オンブズマン:扱われ方を検討するが、裁判所ではない
ICANNのオンブズマンは、スタッフ、理事、または支援組織による扱いについての苦情を受け付ける、独立した中立的な経路である。[https://www.icann.org/ombudsman] しかしオンブズマンは裁判所ではなく、通常、ICANNの政策判断や技術的判断を自らの判断に置き換える権限を持たない。[https://www.icann.org/ombudsman]
このため、オンブズマンへの申立ては、特定の扱いに関する懸念を検討してもらう手段にはなっても、再考請求、IRP、契約執行に代わるものではない。申立人が求める結果が「手続上の対応」なのか、「扱いに関する説明」なのか、「元の決定の変更」なのかを区別しなければ、経路の選択を誤る。
管理上の問いは「どの経路があるか」から「何が変わるか」へ
ICANNの説明責任アーキテクチャは、異議を申し立てるための複数の入口を提供する。しかし、資料が示すのは、経路ごとに異なる発動条件、審査対象、手続、限界があるということだ。経路が利用可能であることから、元の識別子調整や政策決定が自動的に停止、撤回、置換されるとはいえない。[https://www.icann.org/resources/pages/governance/bylaws-en] [https://www.icann.org/resources/pages/irp-2016-06-28-en]
影響を受ける当事者にとっての実務上の順序は明確である。第一に、争いたいのが方針との不整合、理事会の行為、スタッフによる扱い、契約上の義務、または国内法上の権利なのかを特定する。第二に、申立人の資格と期限を確認する。第三に、その経路が元の決定に対してどのような効果を持ち得るのかを、適用文書と個別案件の記録で確認する。
不確実性
現在の条文、提出期限、立場の要件、救済に関する正確な文言は、実際に適用される現行の定款、付属定款、規則、手続資料で確認する必要がある。今回の資料は、特定の最近のIRPまたは再考請求の結果を示していない。また、救済が運用上の変更に間に合うかどうかは、案件ごとの事実、手続段階、必要な決定によって異なる。
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