Summary

  • RIPE NCCの2026年10月の財務報告は、会費776万1000ユーロを回収リスクのある金額とした。うち663万4000ユーロはイランとシリアの776のLIRに対応し、全口座が未払いで請求書も発行されていない。
  • 2025年の財務報告は、これらの会員へのサービスと法的な支払い義務が続く一方、入金時期の不確実性から未請求分を貸借対照表の外に移したと説明する。
  • 2022年から2026年の対象額について、460万7000ユーロは稼働中の口座に結び付く「回収可能性あり」と分類された。口座が存続することと銀行に現金が入ることは別の出来事だ。

会費を払っていない会員がいる。普通なら請求書の支払期限を確認する。RIPE NCCの10月28日付財務説明資料では、最初の一歩から事情が違う。イランとシリアの776のLIRアカウントについて、RIPE NCCは請求書を発行していないと明記した。支払い義務は残り、登録サービスも提供し続けるという。番号資源の記録は維持されているが、請求と送金をつなぐ銀行側の経路が見つかっていない。

資料の表では、2026年までに積み上がったリスク対象の会費は計776万1000ユーロ。未払いのLIRアカウントは970、三つの区分に属するLIRは1240に達する。最大の区分はイランとシリアで、663万4000ユーロ、776口座すべてが未払いだ。制裁に関連する区分は72万4000ユーロ、126口座すべてが未払い。ウクライナは40万3000ユーロで、338のLIRのうち68口座が未払いとなる。2026年分の列に載るのは182万1000ユーロであり、776万1000ユーロという累積額をそのまま単年度損失として扱うことはできない。

三つの区分は、料金の扱いも違う。イランとシリアは、オランダの主要銀行三行が「超高リスク国」と定義する地域だ。RIPE NCCは請求書を出さず、今も実行可能な回収策はないと述べる。ウクライナなど困難な地域については2026年分を請求済みで、申請に応じて支払期限を年末まで延長する。制裁に関連する案件では、その会員が制裁対象ではないと確認できるまで請求を留保する。総会の速記録にも財務責任者による説明が残る。「約780万ユーロの未回収」という一行に圧縮すると、未発行、期限延長、資格確認待ちという三つの判断が見えなくなる。

2025年の財務報告書は、さらに厄介な問いに答えている。請求できないのに、なぜ会員をサービスから外さないのか。報告書は、対象会員へのサービスを続け、法的な支払い義務も残ると記す。保守的なリスク基準の下で資金を受け取れるようになった時点で請求書を発行し、収益として認識する。以前は未請求分が資産と負債を押し上げていたが、銀行規則や制裁によって入金の時期が極めて不確かだとして、2025年には累計519万7000ユーロを貸借対照表に載らない取り決め・約束の注記へ移した。会計上の場所が変わっても、登録された番号資源の持ち主が記録から消えるわけではない。

10月2026年の説明資料では、イランとシリアに関する累計額が663万4000ユーロになった。519万7000ユーロは2025年決算の数字であり、663万4000ユーロは翌年の第3四半期時点の数字だ。差額を論じるなら、この時点の違いが先に来る。債権の増加は、同額の現金が失われたことを示す数字でも、銀行経路が再開したことを示す数字でもない。サービスの時間は進み、支払いの時間は止まっている。

資料の次の表は「回収可能性」という言葉の重さを測る。RIPE NCCは2022年から2026年のイラン・シリア分648万9000ユーロを対象に分類した。この母数には、前の表にある2021年分14万5000ユーロは含まれない。口座閉鎖に結び付く98万4000ユーロ、15%は回収の見込みが極めて低い。制裁対象の口座に対応する89万8000ユーロ、14%は見込みが低い。稼働中の口座に対応する460万7000ユーロ、71%が「潜在的に回収可能」とされた。稼働中という口座状態を、送金できるという銀行の判断に読み替えてはいけない。

RIPE NCCの清算準備金の目標文書は、2022年から2025年にかけて制裁と銀行側の国別分類による資金受領の遅れが年100万~150万ユーロ生じたと説明する。3360万ユーロの準備金で年150万ユーロの遅れを埋めるなら22.4年に相当する、という静的な例も載せた。これは耐久力の算式であり、22.4年後に入金されるという予測ではない。準備金は登録サービスを維持する時間を買えるが、銀行の送金承認を作り出せない。

公表資料には、銀行がいつ資金を受け付けるか、どの経路で支払えるか、個々の口座を「潜在的に回収可能」から「入金済み」に変える条件が示されていない。その具体的な記録が出れば財務判断も変わる。現在の記録が示すRIPE NCCの選択は明瞭だ。サービスを維持し、法的な請求権を残し、現金化できない額を通常の資産から外して会員に開示する。776のLIRは小さな例外ではない。登録機関としての責務と徴収機関としての限界が、同じ表の上でぶつかっている。