Summary
- RIPE-806は、RIPE NCCに登録された移転可能なIPv4、IPv6、ASNの保有者が自主的にロックを求める制度を定める。対象は割り振りまたは割り当ての全体で、一部だけは選べない。レガシー資源とLIRによる下位の再割り振り・割り当ては除外される。期間中、通常の移転申請は処理されない。
- 現行の申請案内では期間は6、12、24カ月。RIPE NCCが承認した日に始まり、保有者は途中で取り消せない。満了時に自動終了し、継続には新たな申請が必要だ。
- RIPE-831第5.1節は、会員企業の組織変更や差し押さえによる移転などで、承認済みロックをRIPE NCCが適用しない権利を明記する。保有者の撤回禁止とレジストリの例外判断は別の規定だ。
「取り消せない」という一語には説得力がある。保有者が資源を指定し、RIPE NCCが承認すると、通常の移転要求は止まる。アカウント侵害や偽造された権限書類でアドレスを動かそうとする相手には有効な時間の壁になる。ただし壁の管理者は保有者ではない。RIPE NCCは組織や法律上の出来事を理由に、壁を適用しない道も手続書に書いている。
2023年10月30日発行のRIPE-806は、対象をRIPE NCC登録の移転可能なIPv4、IPv6、ASNに限る。保有者はどの資源を選ぶか決められるが、一つの割り振り・割り当てから一部分だけ切り出すことはできない。レガシー資源やLIRが顧客に出した下位の資源も対象外だ。会社の資産一覧に同じ「IPアドレス」と並んでいても、ロック可能性は登録上の単位で異なる。
申請手順には具体的な書類が並ぶ。資源のリスト、期間、法人なら最近の登記書類、個人なら本人確認、法的権限のある署名者のフォームとその権限の証明だ。LIR会員は登録ユーザーがポータルから出す。エンドユーザーはスポンサーLIRが代理で提出する。申請した日にはまだロックはない。承認日が初日になる。
承認後は対象資源の移転申請を処理せず、保有者は早期解除を要求できない。期限が来れば自動的に終わり、続けるには改めて申し込む。政策は満了の少なくとも1カ月前に通知することを勧める。この硬さは防犯機能そのものだ。解除が簡単なら侵害されたアカウントからの一通で守りが消える。しかし売却を決めた経営陣にとっても同じ硬さが取引日程を縛る。
例外の条文はRIPE-831第5.1節にある。RIPE NCCは政策、手順または適用法に反する申請を拒める。さらに、承認後のロックであっても適用しない権利を留保する。例として、会員の事業構造の変更による移転と差し押さえによる移転を挙げ、同文書の第3.6節と第3.7節に結び付ける。RIPE-806自体も合併・買収や法的制約による狭い例外を想定し、手続に明記するよう求めている。
合併すれば自動的に解除されるわけではない。「適用しないことがある」という裁量の文言であり、書類と法的承継を審査する余地がある。重要な非対称性は、保有者が普通の売却のために気軽に解除できない一方、レジストリが特定の組織・司法上の出来事を例外と判断できることだ。レジストリは単にデータベースの凍結フラグを保存しているのではない。
エンドユーザーの独立資源には手続上の分岐がある。RIPE-831は会員向けの説明が独立資源のロックを扱わず、別の契約関係手続が適用されると明示する。公開申請案内ではスポンサーLIRが代理申請する。独立資源の保有者は、会員向け第5.1節の細部を自分のケースへそのまま移す前に、適用手続を確認する必要がある。
RIPE NCCは有効なロックを公開するとしている。今回確認した公開一覧ではIPv4、IPv6、ASの各欄が「n/a」だった。これは閲覧時点の表示であり、過去の申請数でも拒否件数でもない。買い手が必要とするのは公開一覧、署名済みの合意、資源番号、終了日をつなぐ確認だ。
ロックの安全性は解除を遅くすることで生まれる。その代わり、署名者の審査と例外の分類はRIPE NCCの手に集まる。通信が続くアドレスでも、企業の支配権が変わるとき資産を移せるかは、レジストリが受け取る証拠と手続上の判断に左右される。
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