要約

  • almazcloud.networkのアイデンティティ鎖(ブランド→ドメイン→ASN→スポンサーLIR→法人登記)は、各リンクが個別に公開源で検証できる一方、鎖を一つにつなぐ橋渡し証拠は2026年10月4日時点で確認できていない。
  • 運営者サイトはYandex、Sberbank、Rostelecomとの「直接的な物理ピアリング接続」を謳うが、到達可能なルーティング証拠にはその根拠が観測されない。
  • 法人登記のOGRN 1196501003357はユジノサハリンスクの「AO ALMAZ」に対応づけられており、モスクワ志向のクラウド・プロファイルと地域的に不一致。

五つのリンク、個別には検証可能

最初のリンクはブランドとドメインだ。運営者サイトalmazcloud.networkは事業を「DIAMOND(露語でALMAZ)」として提示し、「brand new progressive cloud services provider」と自称する。価格のついた製品は正確に五つ確認できる。10G物理ポートで月499ドルからのCloud Connect、アナウンス接頭辞あたり月99ドルからのBGP Announcements、100Mbpsあたり月99ドルのNo-BGP GREトンネル、ユーザーあたり月9ドルの企業向けCloud VPN、接続クラウドあたり月99ドルのCloud Resellingである。同じサイトはCloud Connectについて「Yandex、Sberbank、ROSTELECOM、Selectedおよびその他の著名クラウド事業者との直接的な物理ピアリング接続」を主張する。連絡先としてhello@、network-admin@、buhgalteriya@、director-maksim@、claims-abuses-reports@の各メールボックスが掲載される一方、容量、施設一覧、顧客数、参考顧客、SLA文書、トラフィック統計は一切示されていない。

第二のリンクはASNだ。Hurricane ElectricのBGPツールキットHurricane Electricによれば、AS210328は三つのIPv4接頭辞(77.91.65.0/24はIP-FI-FotonTel名義、185.136.15.0/24と185.218.138.0/24はVlad Cojuhari名義で登録)をオリジネートし、うち二つをアナウンス、IPv6はゼロ、オリジネートIPv4アドレスは512個、観測ASパスは717本、平均ASパス長は5.319である。観測された隣接関係はAS202425(IPV)、AS201814(MEVSPACE sp. z o.o.)、AS48693(Rices Privately owned enterprise)のトランジット三社のみで、ピアは観測されない。

第三のリンクは経路検証の状態だ。ping.peは接頭辞ごとのRPKI状態を示す。77.91.65.0/24はVALID、185.136.15.0/24はVALID、185.218.138.0/24はNOT-FOUNDである。集約サイトIPtraceは「RPKI有効率50%」と商用項目(トラフィック10〜20Gbps、ピアリングポリシーはRestrictive)を示すが、これらは集約側の推定値であり、同サイトの「RPKI Invalid 1」の数値はping.peでもHEでも再現されない。

第四のリンクはPeeringDBのセルフ申告だ。ネットワーク記録19111はAS210328を組織AO ALMAZ、正式名「ALMAZ (DIAMOND) CLOUD NETWORK」、ウェブサイトalmazcloud.networkに結びつける。ネットワーク種別はNSP、IPv4・IPv6接頭辞はゼロと自己申告し、トラフィックは10〜20Gbpsの均衡、地域スコープ、モスクワの三施設(Berzarina Data Center、IXcellerate MOS1、Moscow M9)を申告する。実質的フィールドの最終更新は2022年7月27日05:36:11Zのまま止まっている。

第五のリンクはRIPEデータベース上の登記だ。サードパーティーのミラーwhois.ipip.netが示すaut-numオブジェクトでは、as-nameはALMAZ、orgはORG-ZA238-RIPE、import「from AS48693 accept ANY」、export「to AS48693 announce AS210328」、ステータスはASSIGNED、メンテナーはRIPE-NCC-END-MNTとALMAZ-MNT、作成は2021年12月27日、最終変更は2026年8月21日04:38:32Z、スポンサー組織はORG-DNJ1-RIPEである。組織オブジェクトORG-ZA238-RIPEはorg-name AO ALMAZ、国RU、登記番号1196501003357、org-type OTHER、abuse-c ZAN42-RIPEを示す。ただし重要な制約がある。権威あるRIPE Database Web UIは本調査の両パスでアプリケーション・シェルしか返さず、RIPEオブジェクトの全文はすべて第三者ミラーに依存している。さらにミラー間で矛盾がある。admin-c/tech-cのハンドルはwhois.ipip.netとIPGeolocation.ioではZAN42-RIPE、Hurricane ElectricとIPtraceではDUMY-RIPE(個人データ匿名化のremark付き)である。Robtexはさらに古いスナップショットを持ち、as-name ALMAZCLOUD、説明almazcloud.network、2021年当時のAS12695相手のポリシー、最終変更2021年12月28日という履歴ずれを示す(Robtex)。RIPEstatの断片はas-name ALMAZとORG-ZA238-RIPE、ALMAZ-MNTを裏付けるが、取得はスニペット断片に限られ、接頭辞表は77.91.65.0/24(50% RU)と185.136.15.0/24(50% KZ)の二件、データ日付は2026年9月30日15:37:00である。

鎖を閉じる証拠がない

ここまでの各リンクは単独で検証できる。しかし鎖として成立するには、隣接するリンクをつなぐ文書が必要だ。本調査が到達したすべての公開源において、次のいずれも確認できなかった。Yandex、Sberbank、Rostelecomへの稼働中BGPセッション、IXPポート、クロスコネクト記録、顧客、納品記録、そしてブランド・ドメイン・ASN・ORG-DNJ1-RIPE・AO ALMAZをつなぐ契約、スポンサー状、法人提出書類、支払い痕跡である。つまり鎖は「リンクごとには検証可能、鎖としては未検証」の状態にある。

最後のリンクに固有の問題がある。ロシア企業登記の集約サイトaudit-it.ruとfish-sakh.ruはOGRN 1196501003357をユジノサハリンスクの「AO ALMAZ」(INN 6501304360)に対応づけ、監査・地域ビジネス登録に同社を記載する。この地域プロファイルは、モスクワ施設とモスクワ向けマーケティングを掲げるクラウド事業者の姿と一致しない。取得した文書のいずれも、登記上の法人名とネットワーク運営者を結ぶ橋渡しを示していない。なお、この対応づけ自体が第三者集約に基づき、一次のEGRUL/FNS抽出ではない点は証拠境界として明示しておく。

購買判断者に残る問い

カタログは「物理ピアリング」を中心に販売する。しかし到達可能なルーティング証拠では、その中心的な主張に対応する観測事実が見つからない。トランジット三社だけの隣接関係、二接頭辞のアナウンス、そして法的に紐づく登記主体の地域不一致──これらは単独では違法でも異常でもない。だが顧客が月499ドルの物理ポートを購入する判断をするとき、契約相手が誰なのか、SLAの履行主体が誰なのか、そして宣伝されたピアリングが実際に存在するのかを、公開証拠からは確認できない。この記事が示すのは違法性ではなく、検証可能性の構造である。欠落しているのは一つの文書、すなわち鎖の隣接リンクを結ぶ単一の橋渡し証拠だ。それが現れるか、あるいは運営者が自ら提示するかが、次に観察すべき事象である。

なお、BTWはこれまでにカタログと実測フットプリントの監査、2026年8月のレジストリ編集、ルーティングポリシー変更の分析、クレーム台帳を公表しており、本稿の新規の問いはアイデンティティ連鎖そのものである。