Summary
- APNICの移転条件は、APNICの口座から他のRIRの会員へ資源を送り出す場合、APNIC側の口座が手数料を払うと定める。元のWhoisにある関連オブジェクトは削除され、再割り当て、経路、ドメインが例示されている。
- 保有者の登録先変更と、経路や顧客への割り当て、逆引きDNSの公開情報の引き継ぎは別の作業だ。移転前の一覧と移転後の照合先を決めておく必要がある。
- APNICの説明では、
routeはプレフィックスを発信するASを示し、逆引きのdomainは委任先のネームサーバーを示す。それぞれ読者も更新権限も違う。
IPv4の買い手は新しい保有者名がいつ登録されるかを気にする。APNICの移転条件を読むと、もう一つの問いが浮かぶ。元のデータベースで、そのアドレスに付いていた記録はどうなるのか。APNIC口座の保有者から別の地域インターネットレジストリの会員へ移す場合、APNICは関連するWhoisオブジェクトをすべて削除すると書いている。再割り当て、経路、ドメインが具体例だ。手数料はAPNIC口座が払う。移転完了後、元の主体は資源に対する権利を失い、受け手に登録される。保有者の交代は一行で表せても、周囲の運用記録には何枚もの引継書が要る。
アドレスブロックのWhoisには、保有者名以外の情報が載る。下位の範囲を使う顧客、どの自律システムから経路が始まるかという登録上の宣言、逆引きゾーンを任せるネームサーバー。これらを読むのは経路運用者、顧客対応者、DNS担当者などだ。移転契約がプレフィックスと対価だけを記すなら、古い記録が消える時に必要な情報を取りこぼす。元のAPNIC口座から一覧を取り出せる段階で、各オブジェクトの担当者と移転先での受け皿を決めるべきだ。
適用範囲はAPNICの移転一覧で確かめられる。APNIC口座同士、国別インターネットレジストリとの間、他のRIRとの間など、五つのシナリオがある。ここで扱う削除規則は、APNIC口座から他のRIRの会員へ出ていくケースだ。前の記事で扱ったAPNIC域内移転の30日確認期限とは、工程も当事者も違う。国内で同じレジストリに残る取引へ、この退出規則を横滑りさせれば、交渉表が最初から間違う。
経路オブジェクトから見る。APNICの作成案内によると、Whoisのrouteまたはroute6はASを起点とするドメイン間経路を記述する。作成には、対象アドレスのinetnumまたはinet6num、ASのaut-num、そして整合したmnt-routes権限が必要だ。元のrouteを消すことは、APNICのデータベースからその宣言を退場させることを意味する。買い手が確認すべきは、移転先のどの登録先に新しい経路情報を置き、誰がその権限を持ち、いつ外部の利用者が照会できるかだ。新保有者の名札だけでは、登録データを利用するネットワークの問いに答えられない。
再割り当てには別の面倒がある。一つのブロックの一部を顧客が使っている場合、その範囲と連絡先は保有者全体の情報より細かい。APNICはこうした関連オブジェクトも削除対象に挙げる。移転後に初めて顧客一覧を探し始めれば、元の公開記録を照合する作業は難しくなる。事故報告が特定のIPアドレスに関わるとき、必要なのはブロックの親会社だけでなく、その部分を実際に扱う担当者だ。事前の一覧には、範囲、利用者、連絡先、移転先で登録する主体を残しておく。
domainという名前も誤解を誘う。ここではウェブサイトのドメイン売買を指すのではなく、逆引きDNSの委任オブジェクトを指す。APNICの逆引きDNS案内では、in-addr.arpaやip6.arpaのゾーンについて、権威ネームサーバーを示す情報をWhoisに置く。APNICはそのデータから逆引き委任を生成し、自身のネームサーバーを二時間ごとに更新する。その後にはDNSのキャッシュと更新間隔が続く。保有者は自分のPTRデータと権威ゾーンを管理し、APNICはそこへの道筋を公開する。元のdomainが削除されるなら、移転先での委任記録と名前解決の確認を独立した工程にしなければならない。
手数料の支払いも同じ発想で分ける。APNICの退出条件では、支払う口座は元のAPNIC保有者だ。売買契約が最終的な費用負担を買い手に振り向けても、APNICが扱う口座は変わらない。支払証明、移転完了、受け手の登録、経路と再割り当てと逆引きの新記録は、それぞれ違う証拠である。取引管理の画面で「完了」を一度押すだけなら、最も時間のかかる運用上の仕事が見えなくなる。
APNICの公開ページは、個別の移転で受け手側RIRが代替オブジェクトを作る時刻を示していない。受け手側の日時付き登録記録が、そのプレフィックスの引き継ぎを確定する。
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