Summary

  • Denis Walker が2013年に説明した reclaim は、RIPE NCC から発行されたアドレス資源の保有者が、親オブジェクトの maintainer 認証で対象の下位レコードを削除できる仕組みだ。
  • 対象はより細かいアドレス記録、経路オブジェクト、逆引き委任などに限られる。内容の修正、親資源の削除、AS番号や人物レコードの削除には使えない。

経路変更を止めた、たった一枚の古いカード

ネットワークの変更を進めようとすると、同じプレフィックスの route オブジェクトが既にある。新しい記録を登録できず、古い方の mnt-by は別の管理者を指している。番号資源の責任を負う側に、障害物を取り除く権限がない。従来は RIPE NCC に頼み、認証を手作業で乗り越えてもらう場面があった。

Denis Walker は2013年4月、この繰り返しを止める仕組みを説明した。RIPE Database の reclaim は、RIPE NCC が割り当て・指定した親資源にある mnt-by や mnt-lower の maintainer を、下位オブジェクトの削除を認める認証先として追加する。利用者は通常の更新で delete: reason を付ける。特別な道具より大事なのは、親と子の間で誰の権限を数えるかというルールの変更だ。

発端は、いかにもありふれた共同管理かもしれない。二者を mnt-by に並べれば、片方がもう片方を外せる。運用担当の交代で古い資格情報だけが残ることもある。正確に一致する経路オブジェクトが新規作成を妨げれば、小さなデータの行が移行日程を握ってしまう。Walker の設計は、その都度レジストリに特例を求める代わりに、保有者が自分で片付けられる範囲を決めた。

範囲は広げ放題ではない。より具体的な inetnum と inet6num、同じかより具体的なプレフィックスの route と route6、in-addr.arpa または ip6.arpa の逆引き委任が対象となる。RIPE NCC が管理する親の割り当てや指定そのもの、aut-num、ENUM、person や role のような二次オブジェクトは対象外だ。reclaim は削除だけを許し、子の内容や認証をその場で書き換えない。下位の再割り当てを受けた者にも、親の持つ権限が自動的に移るわけではない。

データベースから経路オブジェクトを消しても、ルーターの転送動作が即座に変わるわけではない。それでも、次の正しい記録を作るための障害は取り除ける。帳簿の一行が実務上の拒否権に化けたとき、だれがそれを片付けられるのか。この問いを Walker は認証規則に落とし込んだ。

RIPE NCC の2013年年次報告書は reclaim を同年の新機能として挙げる。Walker 自身の解説は、その適用範囲を具体的に示す。地味な「削除」こそ、番号資源を持つ側にとっては重い動詞だった。

RIPE の一次資料