要約
- ComRegは、消費者、事業者、サービス提供者がAIで紛争資料を準備・整理し、表現や言語・アクセシビリティ上の障壁を改善できると認める。
- 通知26/66は、事実の正確さを提出者の責任としている。虚偽や不完全な事実・引用、法律用語の誤り、過度に長い書面をリスクとして挙げ、ComRegは説明や修正、短縮を求める場合がある。
AIの文章が滑らかでも、請求内容の裏づけが整ったとは限らない。例えば、通信料金の一項目を争う人が、請求書、契約条件、事業者とのメール、最初の苦情番号を提出するとする。AIはそれらを時系列に並べ、説明を読みやすくできる。一方、当人の推測を確定事実のように書いたり、存在しない規則をもっともらしく引用したりすることもある。ComRegの新しい指針は、こうして作られた資料が正式な紛争手続に入ったとき、誰がその内容に責任を負うのかを扱っている。
ComRegは「Guidance on the use of AI in end-user dispute resolution」をInformation Notice 26/66として掲載し、出版日は2026年10月6日としている。10月8日付の消費者向け発表では、電話、ブロードバンド、郵便サービスの消費者と事業者、そして紛争当事者となるサービス提供者を対象に挙げた。AIが資料準備、情報整理、明瞭化、言語やアクセシビリティの障壁の軽減に役立つ可能性を認める一方、誤り、誤解を招く記述、不完全な内容、捏造を含みうると説明している。
この立場は「AIを全面禁止するか、出力を信じるか」という二択を避ける。自動化支援を一律に排除すれば、散在するメールや領収書を整理するのが難しい利用者の負担が増えるかもしれない。無検証で受け入れれば、事実や法律の引用が誤ったまま、整った文章として記録される。ComRegはAIを使った人が正確さに責任を持ち、事実と出典を確認するよう求めている。ComRegは提出資料におけるAI利用の透明性も求めるが、公開要約は統一的な申告様式を示していない。適切な場合、AIの使い方について説明を求めたり、別の形式や短い形での再提出を要請したりできる。
苦情から正式手続へ
電子通信の紛争では、正式手続は通常、まず事業者に苦情を申し立てた後に始まる。ComRegは無料のConsumer Careサービスと、正式なエンドユーザー紛争解決手続を区別している。2023年法第47条は、苦情を出してから少なくとも10日が経過した場合、または事業者の苦情処理規程の段階を終えた場合に、条件を満たす紛争をComRegへ付託できると定める。正式申請が受理されれば、同じ苦情は非公式のConsumer Careで扱われなくなる。
ComRegまたは指定された独立者が解決案を示し、受け入れるかはエンドユーザーが選ぶ。受諾すれば、案はサービス提供者を拘束する。ComReg 24/22aR1の手続は主に書面で行われ、他の期限が守られることを前提に、受理から60営業日以内の最終案を目指す。ComRegは延長し、当事者に通知することもできる。事業者の回答、暫定案へのコメント、最終案という順序があり、AIで作った文章だけが独立して判定されるわけではない。
だから提出資料に必要なのは、苦情を長く言い換えることではない。どの点が争われ、どの資料がそれを裏づけ、どの救済を求めるのかを示すことだ。AIが作った時系列も、各日付が元のメールや請求書に結びつけば役に立つ。事実、推測、法的表現の区別を消してしまうと、読み手は結局、根拠を一つずつ探し直すことになる。
明瞭さと証拠性
ComRegが例示するリスクは、確認できない・不完全な参照、捏造や誤りを含む事実や引用、法令・判例の不正確な扱い、そして処理を遅らせるほど長い書面である。これらは別々の問題だ。引用の誤りは出典の確認を要し、長さは関連性と審査能力に関わる。短くても誤った書面はあり、長い資料に必要な記録が含まれる場合もある。読みやすさだけでは足りない。
当事者が持つ記録にも差がある。事業者はアカウント、請求、顧客対応のログを保有することがあり、利用者はその一部にアクセスできない。利用者側は苦情メール、画面記録、支払い証明や通話メモを持っているかもしれない。AIはどちらの当事者にも整理を手伝えるが、より専門的に見える側の説明を自動的に正当化するわけではない。原資料とのつながりを残し、異議のある点は手続を通じて判断する必要がある。
AIが言語や文章の負担を軽くする効果は考えられるものの、確認した資料はその効果を測定していない。書面に不慣れな人が出来事を並べたり翻訳したりできる一方、同じ支援が長い主張や架空の法的根拠を作ることもある。利点が出るかは人による確認に左右される。ComRegが修正を求められるかどうかも重要だが、流暢さを証拠と混同してはならない。
郵便紛争は別の手続
ComRegの発表は郵便サービスも対象にするが、その手続を電子通信の紛争と混ぜるべきではない。郵便紛争はComReg 24/102aに従い、同手続は2025年3月18日に発効した。利用者には差出人と宛先人が含まれ、申請前に郵便事業者の苦情処理規程を終える必要がある。ComRegは、明快な説明、出来事の順序、可能な範囲での裏づけ書類を求めている。発送レシートや追跡記録が示すことは、ブロードバンド請求書の争点とは違う。
事業者も指針の対象となる紛争の一方だ。ComRegの苦情処理コードは、事業者の受付、応答期限、記録管理を規定する。これは正式な紛争解決の前段階であり、両者を混同すると必要な証拠や適用ルートを誤る。AIが介在しても、適用手続や受理条件は変わらない。
公表された統計が示さないこと
ComRegによると、2025年の国内正式紛争は36件で、19%が途中で終了し、平均解決期間は62営業日だった。これは2026年10月のAI指針より前の実績である。AIを使った当事者数、修正を求められた件数、AIが手続を長引かせた事例は公表されていない。62日という平均は、60営業日という目標の超過をAIが引き起こした証拠でもない。目標は他の期限が守られることを条件とし、延長も可能だ。
このデータ不足は評価を制限する。ComRegは管理すべきリスクを列挙しているが、使用率や生産性の変化、特定事例における遅延は示していない。ComRegが裁定にAIを使うとも、確認した資料からは分からない。一般的な使用禁止や承認ツールの一覧もこの案内には見当たらない。それ以上の主張には別の根拠が要る。
実務上の問いは具体的だ。提出者は重要な事実の出所を説明できるか。原資料とAIの要約を区別できるか。ComRegから求められた際に書面を修正できるか。良いAI利用は、これらの確認を簡単にするはずだ。出典を見えにくくするなら、文章が整っていても記録の検証性は下がる。
26/66が置く統制点は、材料を機関に提出する側にある。AIは紛争資料の準備を手伝えるが、事実、引用、判断の責任を引き受けない。この線引きなら、言語や整理の助けを残しながら、争議手続の基礎を守れる。提出した内容について答えるのは、提出した当事者だ。
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