要約

  • データ法第29条は2027年1月12日から切替手数料を禁止する。データ持ち出し料も対象で、移行期間中は切替に直接結びつく減額料金を認めている。
  • 料金の禁止は出口の価格を変える。データの整理、システムの再構築、通常のサービス料や早期解約金、移行中の継続運用までは消さない。

請求書から一項目が消える

2027年1月12日以降、規則(EU)2023/2854第29条により、データ処理サービスの提供者は切替プロセスに対する切替料を顧客に課せなくなる。データを外へ転送する「データ持ち出し料」もここに含まれる。

ただし、切替料の経過措置はその前日まで続く。2024年1月11日から2027年1月12日までは、提供者は切替に直接結びつく費用を上限として、減額された料金を課せる。データ法自体は2025年9月から適用され、料金禁止は2027年1月に最終段階へ入る。

「切替料」は契約に載るすべての費用ではない。第29条は標準サービス料と早期解約金を別に扱い、契約前の説明を求めている。規則の前文は、顧客が移行支援の第三者に対価を払うことや、適用法に従った有期契約と合理的な早期解約金も想定する。予算からデータ転送料を消し、サービス契約も移行人員もそのままにしておけば、出口計画ではなく表計算の修正で終わる。

移行作業は請求書一枚に収まらない

実際の移行には、データ転送だけでなく、アプリケーションの依存関係、IDとアクセス権、ログ、ネットワーク経路、セキュリティ確認、テスト、移転先の準備が絡む。法律は提供者の義務を定めるが、全案件に使える移行見積もりも、すべてのワークロードがそのまま動く約束も出していない。

第25条は、切替の権利と提供者の義務を契約に明記するよう求める。通常の移行期間は最長通知期間の後に始まり、30暦日を超えてはならない。その間もサービス契約は有効だ。移行期間後、顧客にはデータを取り出すため最低30暦日が与えられる。30日が技術的に不可能なら、提供者は14営業日以内に通知し、理由を説明したうえで最長7か月の代替期間を示す。代替期間もサービス継続が必要だ。

通知、エクスポート、転送、検証、切替、データ回収。契約に時計が書かれても、移転先、担当者、決裁権者が決まっていなければ動かない。

持ち出せるデータには境界がある

対象となるのは、顧客がサービスを使うことで生じた入力・出力データとメタデータなどの「エクスポート可能なデータ・デジタル資産」だ。提供者または第三者の知的財産権で保護されたデータや、営業秘密に当たるデータは定義から除かれる。経営側はアプリと管理サービスごとに、この境界の内側と外側を洗い出す必要がある。

機能的同等性も、サービス全体の複製ではない。基盤の上でOSやソフトウェア、アプリケーションを提供しないインフラサービスの場合、第30条は同種のサービスへ移る際、共通機能について同じ入力から実質的に比較可能な結果を得るため、提供者が合理的な措置を取ると定める。どの構成にも同じ代替品があるという約束ではない。プラットフォームやソフトウェアについて、欧州委員会はオープンインターフェースと一般的で機械可読な形式でのエクスポートを説明している。

出口を契約と演習に入れる

欧州委員会が2025年11月に公表したクラウド標準契約条項は、任意かつ拘束力を持たない。「切替と退出」「契約終了」「安全と事業継続」の条項は契約レビューに使える材料だが、交渉や移行計画の代役にはならない。

調達担当は、出力対象と形式、通知手順、提供者の支援、継続運用、回収期間、残るサービス料と解約金を確認する。技術担当は関係が良好なうちに実データを出力し、別環境に取り込む。財務は切替料、通常料金、解約金、顧客側の移行人件費を別々に見積もる。

扉が開いても、荷物は自動では運ばれない。何を持って出られるのか、新環境で何を組み直すのか、引っ越し中のサービスを誰が守るのか。そこまで決めて出口になる。

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