要約
- Chris WendtとJon PetersonによるRFC 9970は、特定のSIP応答に、到達先を示す
destへ署名するrspPASSporTを載せることを可能にする。適切な資格情報を持たない終端側は送信してはならない。 - これは応答シグナリングに関する証拠であって、メディアの出所、通話中の同一人物性、到達保証、あるいは発信者の行動を自動的に証明するものではない。
Connected Identityという名称は、発信者に「目的の相手につながり、会話相手も変わらず、端末が安全性を判断済みだ」という安心を連想させる。しかしRFC 9970が扱うのはもっと限定された問題である。SIPの暫定応答または最終応答にIdentityヘッダを持たせ、rsp PASSporTで到達した相手のアドレス・オブ・レコードをdestとして署名する。要求側でorigを扱う従来の方向とは役割が異なる。
100、180、183、200といった応答でこの情報を得られれば、発信者は単に「応答が来た」ではなく、「どの到達先が署名付きで示されたか」を見比べられる。途中で正当に転送された通話では、div PASSporTも応答に含められる。期待した宛先、実際の宛先、転送の連鎖を別々に読み取れるようになるため、成功したダイアログそのものを身元証明と取り違えずに済む。
ただし、トークンが正しい形式であることと、信頼すべきトークンであることは別である。終端側はdestについて署名する適切な資格情報を持つときだけrspを送れる。受信側も、署名証明書を信頼し、その証明書が該当番号について署名する資格を持つと合理的に確認しなければならない。検証は鍵に対する文の整合性を示す。資格の発行根拠や、この通話でその根拠を受け入れるべきかまでは示さない。
宛先が変わったときには、この分離が明文化される。元のダイアログ形成要求と異なるdestをrspが示すなら、少なくとも一つのdiv PASSporTが必要になる。それでもrspやdivを信用するかは依存当事者のローカル方針である。金融窓口への通話なら事前に登録した転送だけを許す設計もあり得る。別の発信者なら既知の当番転送を受け入れるかもしれない。プロトコルは検討材料を運ぶが、結論を一つに固定しない。
応答は要求のようには拒否できない点も重要である。問題のあるPASSporTを含む応答を受け取っても、発信者は送信者へ拒否を返せない。暫定ダイアログならCANCEL、成立後ならBYEで対話を切るほかない。暫定応答は適切な信頼性手段なしには確実に届かず、中継者に消費される場合もある。したがってrspが見えないことを、ただちに不正の証拠とすることはできない。
さらに、RFC 9970の範囲はシグナリングである。応答後の通話は転送や保留によって別の当事者へ移り得るが、発信者はそれを知れない場合がある。標準はこのメディア置換の問題を認証したとは述べない。偽造BYEや偽造re-INVITEなど、ダイアログ中・終了時のSIPメッセージを装う経路を減らせるとしても、応答に付いた有効な署名が後続の音声や映像の発信元を保証するわけではない。
Lu HengのRunning-Code Primacyに照らせば、ここで守るべきなのは証明可能な範囲の正確さである。rspは応答の主張を検査可能にする。証明書ガバナンスは誰が署名できるかを決め、依存当事者はその証拠を採用するかを決め、メディア保護は必要なら別の仕組みで担う。画面上の一つの安全表示にこれらを圧縮すれば、持ち運び可能なトークンが本来持たない決定権を得てしまう。
RFCは発信者向けの体験を定めず、重要な宛先ごと、または通話ごとに認可姿勢を選べることを想定する。高い損害につながる金融、行政、緊急連絡先では、この設計が特に重要になる。必要なのは緑の表示ではなく、期待宛先、署名dest、証明書資格、許容した転送、検証結果、実際に選んだ行動を追える記録である。
出典
- https://datatracker.ietf.org/person/chris%40appliedbits.com
- https://heng.lu/running-code-primary-the-patch-needed-to-preserve-the-internet-original-design/
- https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9970.html
- https://www.somos.com/insights/somos-inc-announces-new-hire-chris-wendt-vice-president-systems-engineering
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