要約
- ADD-PATH は、同じプレフィックスに対する新しい広告が前の広告を暗黙に置き換えず、複数経路を伝えられるようにする。
- Path Identifier は送信側がローカルに割り当て、値自体に意味はない。二つの番号は二つの独立経路の証拠ではない。
- 能力は方向別、AFI/SAFI 別に交渉され、経路選択、FIB 導入、物理的多様性は別の判断である。
- 耐障害性の主張には、広告を出口、上流、設備、共有リスク、FIB、切替試験へ結ぶプレフィックス単位の証跡が要る。
ある route reflector の画面に、同じ顧客プレフィックスの二つの行が表示されたとする。Path Identifier は異なり、ADD-PATH 能力は正常、変更票には「冗長経路あり」と記録された。しかし一つの伝送障害で二行とも同時に消えた。広告は別でも、同じエッジルーター、同じ上流接続、同じメトロ回線に収束していたからだ。
これは特定ネットワークの事故報告ではなく、仮想的な運用例である。ルーティング表の行数はトポロジー監査にはならない、という限定された教訓を示す。
ADD-PATH が実際に保持するもの
RFC 7911 は、同じアドレスプレフィックスまたは NLRI に複数経路を広告し、新しい広告が直前のものを自動的に置換しないよう BGP を拡張する。NLRI の前に四オクテットの Path Identifier を置き、プレフィックスと識別子の組をキーにする。
識別子は割り当てる speaker にとってローカルな値である。経路を再広告する speaker は自分の値を生成し、受信側は番号に意味があると想定してはならない。したがって 17 と 29 を「二事業者」「二拠点」「二管路」と読み替えることはできない。番号が区別するのはセッション上の広告であり、その下の物理依存ではない。
能力交渉にも方向と範囲がある。各 AFI/SAFI について、speaker は複数経路の受信、送信、または両方を示す。送信側と受信側の役割が一致したときだけ複数経路形式を使う。「ADD-PATH 有効」という一行の台帳では、特定アドレスファミリー、方向、セッションで無効な状態を見落とす。
RFC 7911 は、追加経路が潜在的な代替やバックアップとなり、収束や振動対策に役立ち得るとする。ここで重要なのは「潜在的」である。どの経路を広告するかという選択算法、全経路の FIB 導入、経路間のトラフィック切替は保証しない。
見かけの多様性が同じリスクへ戻る場所
RFC 6774 は、複数 BGP 経路の配布を収束、到達性回復、負荷分散の必要性から説明する。同時に、peer 間の多様性を含め、多様性は選択して伝えるべき属性であり、二行あれば自動的に得られるものではないと分かる。
二広告の AS_PATH が違っても、同じルーター、ラインカード、光伝送、建物を共有し得る。別の peer アドレスが同じ上流事業者に属し、同じ借用回線を通ることもある。二つの next hop が同じ IGP 隣接へ再帰解決される場合もある。外部経路が本当に別でも、ポリシーと best-path 処理の後で同じ転送出口に集約され得る。
部分導入も境界を作る。一つのセッションは複数経路を保っても、次の reflector やエッジが一つしか広告しないことがある。再起動後に識別子が変わることもあり、能力交換を知らないパケット解析は UPDATE を誤って読む可能性さえある。証拠にはセッション、AFI/SAFI、方向、観測点が必要だ。
RIB の行は転送結果ではない
プレフィックスごとに、受信経路、適格性、best と backup、next-hop 解決、RIB と FIB への導入を結ぶ。その上で各候補の出口ルーター、上流 ASN、施設、回線、共有リスクグループを記録する。
最後にトラフィックを観測する。制御された withdraw または障害試験で、検出、新選択、FIB 遷移、損失時間、回復後の実経路を測る。この記録がなければ、ADD-PATH は選択肢を余分に運べると証明するだけで、独立した退避路を証明しない。
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