要約
- APNICの2026年調査のデータ表では、問14の対象となった1,157人のうち20%が、自分または所属組織が使うサービスとしてRDAPを選んだ。
- 問いは複数選択で、個人利用と組織利用を分けていない。組織を重複排除した件数、導入可能な組織全体、運用への組み込み度は示されていない。
- エンドポイントの稼働、問い合わせ量、送信元、クライアント実装、Whois依存の解消は、それぞれ別の状態である。
- 次回以降は20%という調査系列を残しつつ、観測単位と意思決定上の用途を明記したRDAP根拠表を併記すべきだ。
小さな欄に大きすぎる意味を載せない
公開された付表では、Whoisが60%、IRRが58%、RPKIが48%、逆引きDNSが37%、RDAPが20%だった。「いずれも使わない」は16%である。順位だけを見れば、「RDAPの導入は5人に1人」と要約したくなる。
しかし、問14が尋ねたのは導入の完了ではない。対象はAPNICの会員・アカウント保有者と、地域内NIRの会員で、設問は「あなた、またはあなたの組織」が利用するサービスをすべて選ぶ形式だった。個人が時々ウェブで検索する場合も、会社の自動処理がRDAPに依存する場合も、同じ一つのチェックになる。部門限定の試用や、NIRが提供する機能を念頭に置いた回答も区別されない。
したがって20%は無意味ではない。意味が限定されている。特定の設問と対象集団において、5人に1人が「利用している」と回答した。APNIC直接会員では19%、NIR会員では26%、地域別ではオセアニア14%から東アジア27%まで幅がある。この差は追加調査の手掛かりにはなるが、導入済みシステムの台帳にはならない。
導入率には単位が要る
何を一件と数えるかで導入の意味は変わる。個人、会員アカウント、法人、設定済みソフトウェア、NIRの提供サービス、問い合わせ、旧手順を廃止した業務――いずれも別の分母を持つ。今回の単位は回答者であり、しかも本人と組織のどちらについて答えたかは分離されていない。公開表から組織数を再構成することはできない。
複数選択である以上、各割合は合計100%の市場占有率でもない。同じ運用者がWhoisとRDAPを併用できる。登録情報にはRDAPを使い、RPSLを扱うIRRでは従来の仕組みを残すこともある。APNIC Blogが2021年に示した整理も、RIR全体と一部NIRでRDAPが展開済みである一方、Whois由来のデータやIRR機能への依存が残るというものだった。
問15の優先順位は別集団である。対象サービスを利用する回答者だけに順位を付けてもらい、母数は890だった。これを問14の1,157人と直結させても、利用に至る転換経路は求められない。
問い合わせ件数でも組織は数えられない
APNICには運用側の観測資料もある。WhoisとRDAPの時間別統計は、問い合わせ総数、送信元ASN数、種類別件数、異なる送信元IP数を公開している。負荷や問い合わせ構成を見るには有用だが、採用組織数の代替にはならない。
自動化された一つのクライアントが、人間による多数の単発検索を上回る通信を発生させることがある。一社が複数のネットワークから送る一方、共有基盤の一つの送信元が多数の顧客を代表する場合もある。トラフィックを組織数に換算するには、公開資料にない仮定が必要になる。
rdap.apnic.netから構造化データが返ることは、観測時点で一つの経路が動いた証拠だ。RFC 9082は問い合わせ形式、RFC 9083はJSON応答を定める。サービスの到達性とプロトコル準拠だけでは、会員の社内手順がどこまで置き換わったかは分からない。
2026年2月のAPNIC Blog記事は、より広いRDAPエコシステムについて、サーバ展開、問い合わせ量、クライアント利用、ソフトウェア数、Whois提供終了など複数の指標を使っている。どれも範囲を示せば正当な根拠だが、番号資源に関するAPNIC地域の一つの導入率へ混ぜるべきではない。
四段の根拠表をつくる
次回調査でも問14の系列は残した方がよい。その横に、総合点を作らない四段の表を置く。
第一段は申告利用で、設問全文、対象条件、回答者数、複数選択、地域別母数を記す。第二段は組織内統合で、任意かつプライバシーに配慮した区分として、手動検索、スクリプト、運用上の依存、顧客向け利用、不明を分ける。第三段はサービス観測で、APNICとNIRの提供範囲、方法が継続する通信指標、自動化の注意書き、分類変更を扱う。第四段は代替準備で、移行した公開機能、Whois工程から来るデータ、RDAP外に残るIRR用途を列挙する。
ECが研修投資を決めるときは調査結果が役立つ。技術部門がサポートを設計するなら到達性とクライアントが要る。NIRにはローカルな統合情報が要る。旧インターフェースの廃止には残存依存と復旧条件が欠かせない。一つの数字にすべてを代弁させないことが、意思決定の質を上げる。
残り80%を反対票にしない
RDAPを選ばなかった人が、拒否した、知らない、接続できない、Whoisを好む、とは限らない。この設問は品質、価値、通信量の比率、移行準備も測っていない。APNICのサービスが稼働していることや、RIR・NIRで展開されていることとも矛盾しない。
確実に言えるのは狭い事実である。2026年のこの問いで、対象回答者の20%がRDAPを選んだ。その境界を守れば、次に何を調べるべきかを正しく決められる。
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