要約
- 2023年9月11日、裁判官は、AFRINICには取締役会を構成して行動するための定足数がなく、CEOもおらず、2021年の決議では係争中の手続における弁護士の現在の権限を裏づけられないと判断した。翌日、職員が会社を代表して話そうとしても、現行の取締役会決議がなければ会社の声にはなれなかった。
- 当時の取締役は4人で、定款上の定足数は5人だった。4人それぞれが取締役であることと、その4人が「取締役会」として会社の意思を形成できることは別である。しかも4人の任期は6日後に終わる予定だった。
- Commercial/Bankruptcy Divisionは9月12日、モーリシャスのOfficial Receiverを選任し、会社財産の現状と事業価値を保全し、適正な取締役会とCEOを成立させる道筋を命じた。これは、内部機関が適法な代理を生めない間に会社法が一時的な代理経路を供給した措置と読むべきである。
- 強制力の源は、私的な会員組織、技術コミュニティー、Cloud Innovation、あるいはAFRINICの運用上の重要性ではなく、国内法を適用するモーリシャスの国家裁判所にあった。受領者の権限も、選任命令と法令によって区切られた会社上の権限にすぎない。
- AFRINICは重要な技術レジストリだが、主権者でも、立法者でも、警察・検察・懲罰機関でもない。今回の記録は、経路、RPKI、WHOISやRDAPの記録、番号資源の移転、ネットワーク停止、所有権判断のいずれも立証していない。会社の継続性と、実際に経路を運ぶネットワークの継続性を混同してはならない。
9月12日に欠けていたもの
この事件を「レジストリを誰が支配したか」という大きすぎる物語から読み始めると、肝心の法的な故障箇所が見えなくなる。問題はまず、会社が法廷で誰を通じて話し、誰の決定によって弁護士を指揮し、誰が会社を拘束できるかという、ごく普通の会社代理の問題だった。
事件番号SC/COM/MOT/000156/2023では、前日の9月11日、裁判官が、AFRINICには必要な定足数がなく、取締役会を設けて行動することができないと判断した。さらにCEOは不在で、2021年の決議も、進行中の事件で弁護士に現在の権限を与えるものとしては頼れなかった。翌12日には、AFRINICのステークホルダー開発部門の責任者が、経営陣と職員のために発言したいと申し出た。それでも裁判所は、取締役会決議による委任がない以上、会社を代表して話す適法な権限はないとした。
ここには、組織が日々動いているように見えることと、その組織が法律上の意思を形成できることの隔たりがある。職員は会社の事実を知っている。取締役は肩書を持っている。弁護士は事件の経過を理解している。それでも、知識、在席、経験、善意のどれも、それ自体では会社からの委任にならない。法人は抽象的な存在であり、定款や会社法が認めた機関と代理経路を通じてしか行動できないからだ。
9月12日の命令は、この空白に応答した。Commercial/Bankruptcy Divisionは、Official Receiverを受領者として選任し、AFRINICの財産の現状と事業価値を保ち、定款に沿った選挙過程を通じて適正な取締役会とCEOを整えるよう命じた。最初の期限は6か月とされ、必要なら裁判所へ戻って延長を求める経路も置かれた。中心にあるのは、永続的な支配の移転ではなく、会社が再び自らの正規機関を持つまでの「適法に誰が会社を担うのか」という問いである。
4人の取締役と、存在しない取締役会
後の公式な控訴審記録によれば、選任時のAFRINICには取締役が4人いた。一方、定款19.6条が取締役会の定足数として求めたのは5人だった。この4対5という算術は争われていなかったと同判決は記している。簡単な数字だが、制度の意味は重い。
取締役である個人が4人存在することは、4人が取締役会として有効な会社行為をできることを意味しない。定足数は、単なる会議運営上の作法ではない。どの人数と構成がそろえば、個人の意向が会社機関の意思へ変わるのかを定める境界である。5人を必要とするところに4人しかいなければ、その4人が熱心で、全員一致し、会社の利益を願っていたとしても、定足数を必要とする取締役会業務を適法に処理する力は生まれない。
これは「取締役が一人もいなかった」という話ではない。むしろ、人はいるのに機関がないという、より厄介な状態だった。名前、肩書、会議への参加、メールによる同意が外形的な活動をつくっても、定款の閾値を越えなければ取締役会としての法的な声にはならない。後の控訴審が、継続して在任する取締役がいたとしても、その一人だけで取締役会業務を処理し、会社名義の控訴を開始することはできないとしたのも、同じ区別を示している。
しかも9月18日には4人の任期が終わる予定であり、9月12日時点で残されていたのは6日だった。封印された資料から、各人の動機や責任、職務能力について推測することはできないし、すべきでもない。確認できるのは、定足数に一人足りず、CEOがおらず、現職取締役の任期終期が迫るなか、通常の機関を通じて会社の現在の意思を示す回路が成立していなかったということだ。
過去の委任は、現在の権限ではない
AFRINICには、2021年8月23日の取締役会決議があった。その決議は当時のCEOに訴訟上の指示を委ねていた。しかし、そのCEOは2022年11月4日に職を離れている。2023年3月に申立てがなされ、同年9月に審理が進んだ時点で、過去に置かれた委任先は、もはやその職にいなかった。
法人の授権を、いったん発行すれば期限なく流通する通貨のように扱うことはできない。誰に、どの職務の範囲で、どの期間、どの事件または種類の行為について権限が与えられたかが重要である。委任先が退任した後、その人を宛先とする古い決議から、別の誰かの現在の権限が自然発生するわけではない。まして、定足数を満たす取締役会が新しい決議を採択できないなら、過去と現在をつなぐ通常の更新もできない。
弁護士の専門性も、この欠落を埋めない。弁護士は依頼人の適法な指示を受けて行動するのであって、依頼人である会社の意思形成機関そのものにはならない。職員も同様である。職員が業務の継続に不可欠であり、内部事情を最もよく知っていても、会社を代表する権限は知識量から発生しない。9月12日の法廷で職員の発言が認められなかったことは、人格や誠実さの評価ではなく、委任の鎖がどこにつながっているかという問題だった。
この区別を形式主義として片づけるのは危うい。会社を誰が拘束できるかが曖昧なら、契約、訴訟、財産管理、職員への指示、後継者の選任など、重大な行為の正当性が後から争われる。善意で続けた業務であっても、権限がなければ会社の行為としての足場を欠く。逆に、肩書だけで権限を推定すれば、会社の統治規則が守ろうとした合議性や会員の権利を空洞化させる。
会社法が供給したもの
こうして見ると、受領者の選任は、技術政策が行き詰まったためにインターネット独自の非常権限が発動した出来事ではない。モーリシャスで設立された私企業に、通常の会社法上の救済が適用された出来事である。会社内部の機関が現在の代理人を適法に立てられないため、国家裁判所が、会社を保全し再構成へ運ぶ一時的な法的主体を置いた。
その作用は、二段階に分けるとわかりやすい。第一に、誰も適法に会社を語れない空白に、裁判所命令に基づく目に見える責任の鎖を置く。第二に、その鎖を永続させるのではなく、会社が定款上の取締役会とCEOを再び持てる地点へ向ける。受領者は目的そのものではなく、私企業が自律的な機関を回復するまでの橋である。
9月12日のスキャン済み命令は、求められた救済が正当化され、合理的かつ公正だと述べ、財産の現状と事業価値を維持するため受領者を置いた。ただし、その命令文だけが4対5の定足数の細目をすべて記しているわけではない。直前の9月11日の授権判断と、後の公式控訴審判決が、定足数とCEO不在の経過を補う。証拠の役割を分けなければならない。
法的根拠の表記にも注意が必要だ。保存されている会社法178条2項は、将来の会社運営を規律する命令を(c)号に、受領者の選任を(e)号に掲げている。一方、スキャン済み命令は、将来行為の規律と受領者選任の双方について178条2項(C)を引用している。資料の範囲では、この(c)と(e)の食い違いがなぜ生じたかも、それがどう評価されたかも解決されていない。したがって、命令の表記を黙って法令の文言へ「修正」して引用するのも、反対にこの差だけから選任全体の無効を断定するのも適切ではない。確認できる不一致として明示し、結論を越えないことが必要である。
会員向け解説
プロフィールの詳細
適切な会員レベルでログインすると、解説全文と出典メモをご覧いただけます。
Strategic Circle 限定
Strategic Circle
すべての読者に公開されています。参加してログインすると プロフィール解説 を閲覧できます。
Strategic Circle に参加Leadership Alliance 会員限定
Leadership Alliance
対象となる IP 資産の所有者・管理者向けです。ログインすると Leadership Alliance の解説を閲覧できます。
Leadership Alliance に参加
