要約
- 9月17日のInternet Society Pulse寄稿は、東南アジア10か国ごとにCrUXで人気上位1,000のオリジンを取り、3種類の照会手法でCDNとIP基盤の会社・法域を特定したと説明する。
- CDN×登録法域、IP基盤×登録法域、CDN×事業者、IP基盤×事業者という4つのHHIは、技術層も集約単位も異なる。トラフィック、利用者、売上、完全な市場、実効支配の同義語ではない。
- 調達・規制・運用判断に使う際は、標本、期間、技術層、特定と照合の方法、集約単位、重み、重複処理、HHI、予定する措置と法的・運用上の権限を結ぶ「測定から判断への受領票」が必要になる。
この研究で最も高いHHIは、CDN事業者を登録法域ごとにまとめた場合に現れる。最も低い組み合わせは、IP基盤を事業者別に見た場合だ。両者の差を「同じ市場が別の方法で見えた」と理解すると、測定設計の半分が消える。
人気オリジンは入口であって、通信量ではない
Yu Shing “Jason” Hungは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの各国について、Chrome User Experience Reportから人気上位1,000サイトを取得した。公開記事は、その後に3種類のCDN・IP基盤照会を用いて、サービスする会社と法域を割り当てたとしている。
Chromeの公式説明では、CrUXは条件を満たしたChrome利用者による実環境データである。オリジンは公開検索可能で、非公開の最低人気基準を満たす必要がある。人気順位はオリジンへのナビゲーション回数に基づく相対指標で、粗い区分として提供される。
したがって、上位オリジンへの採用は1人の利用者、1バイト、1リクエスト、1契約、1単位の設備容量を意味しない。各国の1,000件は利用頻度の高いWebを観察する枠であり、国全体のサイトや通信を悉皆調査したものではない。
公開された本文には、3手法の名称・版・不一致率・照合規則がない。観測への重み付けや国・月をまたぐ重複処理も説明されていない。欠落を推測で埋めず、判断時に追加開示を求めるのが安全である。
技術層を替えると依存の位置が替わる
CDNを登録法域でまとめたHHIは、2024~2026年に8,950~10,000だった。米国登録の事業者は報告された観測シェアの95.9~99.6%、中国登録の事業者は最大3.9%である。
IP基盤を登録法域でまとめると、2025年3月~2026年6月のHHIは5,150~7,550になる。米中いずれにも登録されていないISPは14.2~30.8%を占める。
CDNはコンテンツを終端・キャッシュ・配信できるが、アドレスや経路は別のネットワークが担いうる。ローカルなIP事業者が多くても、前段のCDNが集中することはある。逆に、CDNの会社数だけで底層の経路多様性は証明できない。
期間も一致しない。CDNは2024年から、IP基盤は2025年3月からである。この時間差を消して比較すれば、構造差と期間差が混ざる。
事業者別と法域別は異なる権限を指す
事業者別のCDN HHIは3,280~7,280で、10か国中8か国が期間の大半で5,000を超える。Cloudflareは2026年の各国・各データセットで最も多く観測されたCDNで、報告シェアは42.9~83.0%だった。寄稿者はこれを単一障害点の問題と結び、Cloudflare停止が10か国に重大な影響を与えると論じる。
これはリスク推論であり、停止試験の結果ではない。公開ページにはトラフィック行列、キャッシュ命中率、オリジンへの回帰経路、切替設定、復旧時間がない。HHIは試験対象を絞れるが、試験を済ませたことにはならない。
IP基盤を事業者別に見るHHIは1,800~4,060で、どの国も月次で5,000に達しない。ただし6か国はなお高集中とされる。事業者数の広がりは見えるが、障害領域の独立性、余剰容量、代替可能性までは分からない。
登録法域は法的接点を示す属性であり、最終支配や実際の運用場所そのものではない。Pulseの一般方法論も、本社と親会社が異なる国にある場合の法域の曖昧さを認めている。法域HHIを政府の命令可能性へ直結させるには、法人、契約、インフラ、適用法を別途確認する必要がある。
数式は市場を定義してくれない
HHIは各シェアを二乗して合計する。大きな主体を強く反映する一方、入力が売上なのか容量なのか、Webオリジンの観測なのかは式の外にある。
米司法省も、集中指標の証拠力は、競争上の懸念に合った関連市場とシェア尺度に依存すると説明する。人気サイトのサービス帰属は依存を探すスクリーニングになり得るが、反トラスト市場や市場支配、排除、共同行為、損害を自動的に証明しない。
判断までの鎖を残す
Daniel Kadeが提案する受領票は、情報源と取得日、国、標本、観測期間、CDNかIPか、照会手法と版、不一致と照合規則、事業者か法域か、重み、除外、重複処理、元のシェア、HHIと不確実性、予定する措置、判断主体、影響を受ける者、法的・契約上・運用上の権限を記録する。
運用者なら実トラフィック、経路、キャッシュ、フェイルオーバーを加える。買い手なら契約と切替費用を調べる。競争当局なら市場と代替性を定義する。法域リスクを扱う政府なら、対象法人と行使可能な権限を特定する。
4つの数字は、4つの点検を始めるためにある。一つの市場を宣告するためではない。
出典
- https://pulse.internetsociety.org/en/blog/2026/09/tracking-south-east-asias-internet-concentration-problem/
- https://pulse.internetsociety.org/en/concentration/
- https://pulse.internetsociety.org/en/about-the-data/
- https://www.internetsociety.org/fellowships/pulse-research/2026-fellows-and-mentors/
- https://developer.chrome.com/docs/crux
- https://developer.chrome.com/docs/crux/methodology/
- https://developer.chrome.com/docs/crux/methodology/metrics
- https://www.justice.gov/atr/herfindahl-hirschman-index
- https://www.justice.gov/atr/merger-guidelines/tools/market-shares
- https://heng.lu/the-policy-mirror/
- https://heng.lu/running-code-primary-the-patch-needed-to-preserve-the-internet-original-design/
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