要約

  • 議会を通過したデジタルインフラ法案は、設計上のIT向け電力容量3 MWを基準とする持続可能性の制度と、10 MWを基準とする主要施設サービスの強靱性の制度を分ける。大規模IaaS・PaaSには利用者売上高の基準も設ける。
  • 政府は2027年の段階的施行を見込む。顧客のサーバーと運営者の設備の責任分担、効率の測り方、申請と改修の期限は、区別して読む必要がある。

普段使う決済サービスが、どのデータセンターで動いているかを知る人は少ない。利用者に施設の名前が見えなくても、その施設の故障は届いてしまう。シンガポール政府によると、2023年10月の冷却障害では銀行・決済サービスが12時間以上影響を受け、決済やATMの取引250万件が失敗した。人数ではなく取引件数だが、機械室の不具合が及ぼす範囲は小さくない。

2026年10月7日に議会を通過したDigital Infrastructure Billは、このような依存関係を監督するための法案だ。IMDAが担当する許認可の仕組みは、サービスを止めないことと、施設が使う資源を抑えることを別の課題として扱う。

小さい電力使用量でも、対象外とは限らない

施設の持続可能性に関する基準は、重要IT負荷3 MW。ここでいう負荷は今使っている電力ではなく、IT・ネットワーク機器に供給するよう設計された最大電力容量を指す。冷却なども含めた建物全体の電力容量とも異なる。

対象には企業の自社利用のための商用施設も入り得る。一方、特定の政府・公的機関の施設、研究施設、免許事業に専用される公益サービスの施設などには例外がある。政府の業務を受託する商用データセンターまで一律に除外する規定ではない。

10 MWは主要データセンター施設サービスの基準であり、該当するコロケーションや第三者向けクラウド施設などを対象とする。物理・サイバーセキュリティー、事業継続、災害復旧、事故報告が中心になる。純粋な内部利用の施設サービスは別の扱いなので、3 MWを超えたかどうかだけで二つの制度を判定することはできない。

大規模クラウドサービスには、設備容量とは別の物差しがある。IaaSとPaaSについて、直前3年間のシンガポール利用者からの年平均売上高が1億シンガポールドル以上という基準だ。SaaSはこの定義に含まれない。あらゆる法律から除外されるという意味ではない。

政府の推計では、国内のデータセンターは約70施設で、約3分の2が10 MWの基準に達する。ただし、これは将来の免許保有者を一件ずつ確認した名簿ではない。

冷却は直せても、顧客のサーバーは交換できない

コロケーション事業者は電源、冷却、入退室を管理する。顧客はサーバーを所有し、更新時期や運用を決める。同じ施設に置かれた機器でも、操作できる主体が違う。

MDDIとIMDAの意見募集への回答は、その違いを認めている。施設の強靱性に関する義務は運営者の直接の管理範囲を対象とし、管理できない顧客機器には及ぼさない方針だ。クラウド施設とコロケーション施設には別々の実務規範を準備する。複雑な企業グループで誰が実効的な管理権限を持つかも、今後の説明が必要になる。

この境界は省エネにも関わる。初期の要件は施設側の効率に重点を置き、PUEを用いる。施設全体のエネルギーをIT機器のエネルギーで割る指標で、1に近いほど付帯設備の負担が小さい。ただし、計算処理が増えればPUEが下がっても総使用量は増え得る。

PUEだけでは水の使用量や排出量も分からない。顧客の機器を把握・管理できない場合があるため、IT機器の効率要件は当初から義務化しない予定だ。追加の水効率要件も今後の協議対象となる。他の制度による既存の環境規制がなくなるわけではない。

復旧計画をつなぐ仕事が残る

政府は法案可決後、関連法令、実務規範、申請手続きを整え、2027年に段階的に施行する見通しを示した。議会通過を、すでに施行されたことと混同してはいけない。既存事業者には該当部分の施行から6か月の申請期間があり、期限内に申請すれば、許可、最終的な不許可、申請取り下げまで営業を継続できる。あらゆる設備改修を6か月で終える期限ではない。

サイバー事故については、報告義務が類似し重複する場合にIMDAへ報告し、IMDAからCSAへ関連情報を共有する方針だ。二重報告を減らす話であり、他の報告義務をすべてなくす話ではない。

Lu HengのNote 64は、インターネットの調整で共通に必要な最小限の規則と、その後の自発的な選択を分ける考え方を示す。制度設計を比較する手掛かりにはなるが、シンガポールの法的根拠ではない。適用される実務規範は拘束力を持つ。

個々の事業者に復旧計画があっても、同じ電源やクラウドに依存していれば同時に止まり得る。IMDAが見るべきなのは一社の計画だけでなく、計画同士を結ぶ依存関係だ。利用者が再び決済できるまでの道筋が、どこかの会社の責任範囲の端で途切れないようにする必要がある。

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