要約

  • RFC 741は、パケット音声を単なるサンプル列とは扱わなかった。音声データの前に、通話相手、符号化、送信間隔、応答可能な状態をホスト同士で合わせる必要があった。
  • 双方向の制御・データに分けた四つの役割、符号化方式の交渉、利用者の応答待ちがNVPの実像を示す。文書が挙げる四拠点は、広範な普及の証明ではない。

分析

WHATを提案しHOWを選ぶ――符号化方式の交渉

両端の音声機器が同じ仕様である必要はなかった。片側がWHATで条件を示し、HOWで候補を挙げ、相手が受け入れるか拒む。対象はvocoder、標本化周期、version、最大メッセージ長、parcel sizeなどだ。RFC 741は、対話音声には不向きだったデータ転送中心のhost-to-host通信に、この交渉を加えた。

一つの音声通信には、方向別に四つの役割があった。Lは発呼側から応答側への制御、Kはその逆方向の制御に使う。音声データは発呼側からL+1、応答側からK+1を通る。LとKは八進数340から375の範囲で割り当てられ、同じ値でもよかった。最初の接続にはリンク377を使う。

発呼側は377で誰から誰への呼び出しかを示し、Kを提案する。応答側は拒否するか、受け入れてLを割り当てる。その後、発呼側がLでもう一度呼びかけ、互換性の交渉が始まる。一方がWHATの項目とHOWの選択肢を示し、もう一方が受け入れるか拒否する。対象には音声符号化方式、標本化周期、バージョン、最大メッセージ長、音声パーセルのサイズなどが含まれた。RFCはLPCやCVSDなどを定義しており、両端の機器が同じでなくても、共通の設定を選べた。

1976年の計画が解こうとした問題

会話は、最初のサンプルを送れば始まるわけではない。送信側は相手を見つけ、双方の音声機器が共通の表現を使えるか確かめ、受信側が応答できるまで待つ。ファイル転送なら欠けた情報を再送できる。リアルタイムの会話では、遅れて届いた言葉を再送しても本来の会話時点には戻らない。

Danny Cohenは、この違いをRFC 741に明記した。表紙の日付は1977年11月22日だが、タイトルページでは本文を1976年1月29日付のNSC Note 68とし、先行する三つのノートの改訂版と説明している。ARPAのNetwork Secure Communications計画は、パケット交換ネットワーク上で低帯域・高品質・全二重のデジタル音声を実証することを目指した。前書きによれば、デジタル化した音声は既存の暗号装置で保護できる。NVPは計画の一部であり、暗号化方式そのものではなかった。

謝辞は実装の範囲を示す。CohenはNVPが1973年12月に初めて実装され、それ以来ARPANET上のローカルおよびネットワーク間のリアルタイム音声通信に使われたと記している。Information Sciences Institute、Lincoln Laboratory、Culler-Harrison、Stanford Research Instituteの四拠点を挙げ、機器と符号化方式の違いも記録した。これは拠点間の取り組みを示す直接の報告だが、利用者数、通話品質、一般向け電話サービスの成立を示す統計ではない。

技術的に接続しても、人が応答したとは限らない

最初の交渉が成功すると、応答側はベルを鳴らしてRINGINGを送る。人が応答した後、READYによって音声データを始める。RINGINGなしのREADYも許されていたが、技術的に接続できることと、相手が話せる状態であることは区別された。

リンクを決めた後も、どちらかが再交渉を求めることができた。リンク番号は変えず、それまでの設定を交渉し直す。READYで成功を知らせるまでは、音声データは無視する。任意機能のECHO REQUESTは遅延の測定に使えたが、実装は必須ではなく、応答がなくても接続を終了してはならないとされた。これは観測の手掛かりで、遅延保証ではない。

RFC 741を現在のIP電話の直接の祖先と呼ぶのは正確ではない。WHOとWHOMの欄はホスト、IMP、拡張番号を表し、通信機器を宛先にする。人間を認証したり、発話の権限を決めたりする仕組みではない。安全な音声通信という目標は計画全体のもので、暗号化には既存の装置を使うと前書きが述べている。NVPは音声交換を開始して調整する方法であり、それだけで安全な電話サービスになるわけではなかった。

1986年のRFC 980は、NVP-IIを「Minor Host Protocols」に分類した。これは文書の目録上の位置づけであり、その後どれだけ使われたかを示す証拠ではない。より確かな歴史的事実は、1970年代半ばまでにARPANETの研究者が複数拠点で音声を実装し、異なる機器が会話するための交渉、メッセージ識別、応答待ちを文書化していたことだ。音声データはホスト同士の合意の後に流れた。

出典