Summary

  • RFC 10041では、エリアのLSDBにRouter-LSAを持つ全ルーターがUnreachable Link能力を通知した場合に限り、LSLinkInfinity(0xffff)を該当SPFから除外できる。
  • 非対応ルーターの参加は条件を失わせる。能力LSAの伝搬中に解釈が割れると、一時的な転送ループが起こり得る。
  • Daniel Kadeは、実際の参加者、能力証拠、収束区間、対象リンク、再計算、撤回条件を結ぶ「エリア意味論の有効化証票」を提案する。

同じLSAから逆の判断が生まれる

新しいルーターは0xffffのリンクをSPFから外す。隣の旧ルーターは、そのリンクを最大コストの到達可能経路として残す。ある宛先について双方の次ホップが互いを向けば、ローカルには正しい計算がループを作る。

RFC 10041が扱うのはこの移行問題だ。OSPFの固定形式では、広告したリンクが基本SPFへ入る。トラフィックエンジニアリング専用、またはRFC 9350のFlexible Algorithm専用にしたいリンクも、通常経路に選ばれ得た。

新仕様はリンクを可視のまま該当計算から除外する。しかし最大値の旧来の意味を部分的に変更すれば危険になる。

合意は設定台帳ではなくLSDBにある

対応ルーターはエリアスコープのRouter Information LSAで機能ビットを通知する。新解釈を使えるのは、エリアLSDBの全Router-LSAに対応するルーターがそのビットを示す場合だけだ。

資産管理表で全機種が対応済みでも、それはプロトコルの証拠ではない。非対応数がゼロになれば新解釈へ移り、ゼロから正数になれば互換解釈へ戻って経路を再計算する。

したがって合意には時刻がある。参加、離脱、LSAの失効、ソフトウェアの後退によって新しい意味論の期間が始まる。

伝搬途中を成功扱いしない

能力LSAは同時には届かない。RFC 10041は、全面対応したエリアへ旧ルーターが参加すると、各装置が順番にその存在を知り、一時的に意味が割れると説明する。

変更証跡には、設定投入だけでなく、条件を変えた最初のLSA、伝搬時間、代表ルーターの再計算、共通解釈が観測された時点が必要だ。相互に向く次ホップやTTL失効は異常の手掛かりになる。

LSDBの一致は転送の証明ではない。経路計算、FIBへの反映、パケット観測は別の段階として残すべきである。

0xfffeは「最後の手段」を守る

Stub Router Advertisement、LDP-IGP同期、Graceful Link Shutdownは、リンクを消すのではなく利用を強く避けたい。RFC 10041はMaxReachableLinkMetric(0xfffe)へその役割を移し、RFC 5443、6987、8379、8770を更新する。

一つの差が、到達可能な非常口とSPFからの除外を分ける。運用画面で両方を「高メトリック」とまとめてはいけない。

帯域幅から自動計算する場合も、結果を0xfffeで止める必要がある。遅いが使えるリンクを算術だけで到達不能に変えてはならない。

どの文脈で到達不能なのか

基本SPFから外れたリンクは、物理的に停止したとは限らない。TEには見え、別のメトリックを用いるFlexible Algorithmでは利用できる場合がある。0xfffeも稼働中の予備経路かもしれない。

広告、解釈、除外、計算、実装、観測を分ける必要がある。物理運用、IGP、TE、Flexible Algorithm、転送装置は別々の主語を持つ。RFC 10041は一つの計算規則を変えるだけで、トンネルや実トラフィックを証明しない。

エリア意味論の有効化証票

私はエリア意味論の有効化証票を提案する。これはDaniel Kadeのガバナンス案であり、RFC 10041やIETFの追加要件ではない。

証票はエリアとRouter-LSAから見た実参加者を固定する。各ルーターについて能力LSAの限定的参照、状態、鮮度、観測点を記録する。

次に、有効化または撤回、責任者、非対応数の前後、決定的LSA、伝搬窓、SPF再計算、収束カナリアを結ぶ。後から参加者が変われば別の期間として扱う。

リンクごとに0xffff、0xfffe、TEやFlexible Algorithm用途、自動コスト上限を分ける。物理障害という別の主張はしない。

撤回条件は、非対応参加者、LSA失効、LSDB不一致、能力フラップ、ループ観測である。誰が能力通知を止め、互換動作へどう戻すかも残す。

完全なLSDBや機密トポロジーを公開する必要はない。時刻、件数、ハッシュ、限定リンク参照で判断は監査できる。

権限と安定性と合意

RFC 10041のYANGはRFC 9129を拡張し、能力とリンク広告を設定可能にする。不正な書込みは解釈を止めたりリンクを到達不能として広告したりできる。安全な相互認証通信とRFC 8341のNACMがアクセスを制限する。

侵害されたルーターが能力を高速に変えれば、SPF再計算が繰り返される。RFC 8405のback-offは負荷を抑える。アクセス制御は変更主体、back-offは頻度、分散証拠は合意を扱う。役割は異なる。

IANA登録はビットの識別を安定させるが、運用上の全員合意を永続化しない。参加者、版、ポリシー、LSAが変わるたびに証票を更新する。

RFC 10041が示すのは、分散プロトコルでは「意味」も共有状態だということだ。一つの数値だけでは道を閉じる権限にならない。観測されたエリア全体の一致が、その権限を与える。

情報源

  1. Lu Heng — Data Sovereignty: Technical vs Practical Realities
  2. Lu Heng — Why BTW Media Exists
  3. Lu Heng — Running-Code Primacy
  4. RFC 10041 — OSPFの到達不能リンク広告
  5. RFC 2328 — OSPFv2
  6. RFC 5340 — IPv6向けOSPF
  7. RFC 5443 — LDP-IGP同期
  8. RFC 6987 — Stub Router Advertisement
  9. RFC 7770 — Router Information Advertisement
  10. RFC 8341 — NACM
  11. RFC 8379 — OSPF Graceful Link Shutdown
  12. RFC 8405 — SPF back-off
  13. RFC 8770 — OSPFv3 Stub Router
  14. RFC 9129 — OSPF YANGモデル
  15. RFC 9350 — IGP Flexible Algorithm
  16. IANA — OSPF Parameters