要約
- 2025年のマーケット基準スコープ1・2は6万5001トン CO2e だった。
- 2024年の2036トンとの報告書間比較は約32倍となる。
- 2025年の同排出量の99%をデータセンター運用が占めると Nebius は説明した。
- 稼働拠点は7カ所に増えており、固定した施設群の効率比較ではない。
- スコープ3は、境界、供給者データ、集計手順が代表性を持つ段階にないとして算定されなかった。
- ポートフォリオ PUE の1.25と Finland-1 の WUE 0.018リットル/kWh は、それぞれ別の運用指標である。
先に見るべきは99%の所在
マーケット基準のスコープ1・2の99%がデータセンター由来なら、排出量を左右するのは電力調達、非常用・オンサイト発電、冷却、そして設備の稼働率である。オフィスの節電だけでは変化の大半に届かない。
新しい容量をどこに置き、どの電源で動かすかが、気候面の実績を決める。排出量管理は完成後の報告業務ではなく、立地と電力契約の段階に入る必要がある。
今後はマーケット基準とロケーション基準を併記し、地域別の消費電力や直接燃料を示すことが望ましい。契約上の電源属性と物理的な供給実態を分けて読めるからだ。
約32倍は総量の差を示す
6万5001を2036で割った比率は、二つの公表値の関係として正しい。しかし、新設拠点、稼働率、電源構成、バックアップ発電、会計境界の変化を分解してはいない。
Nebius は稼働基盤が7拠点に広がったと説明する。AI 計算設備の総量が急増すれば、個別機器の効率改善よりも絶対消費量の増加が上回り得る。
従って「効率が32倍悪化した」とは言えない。確認できるのは運用排出量の急拡大であり、効率要因を評価するには同一境界での再計算が要る。
スコープ3が空欄のままでは全体像にならない
GPU、サーバー、電気設備、建物には、製造と建設の段階で排出が発生する。拡張局面の AI インフラでは、この埋め込み排出が大きくなりやすい。
Nebius は、供給者データや算定プロセスが未成熟で、2025年の代表的な在庫を作れなかったと認めた。限界を明記した点は重要だが、6万5001トンを企業全体の足跡として扱うことはできない。
次回は対象カテゴリー、推計方法、データ品質、組織境界を示し、方法変更があれば基準年を再表示する必要がある。
PUE が良くても低炭素とは限らない
ポートフォリオ加重 PUE 1.25は、IT 電力に対して施設全体でどれだけ電力を使ったかを示す。電力1kWh 当たりの排出量は示さない。同じ PUE でも電源が異なれば炭素結果は変わる。
Finland-1 の WUE 0.018リットル/kWh は、閉ループ液冷と外気冷却を利用する単一拠点の値だ。寒冷地の条件を他地域へそのまま移すことはできない。
対象期間と測定範囲を固定し、エネルギー、水、排出の絶対量と並べてこそ、両指標は意味を持つ。
燃料電池328MW は将来の発電枠
米国拠点では、メーター内側に328MW の固体酸化物形燃料電池を置く計画が取り上げられた。系統接続を待たずに電源を確保し、局地的な汚染物質や水使用を抑える可能性がある。
ただし天然ガスを使えば温室効果ガスは残り、上流のメタンも評価対象になる。電気化学的に発電することと、無炭素であることは同義ではない。
この数字は計画発電容量であって、2025年の実績でも IT 負荷でもない。燃料投入、発電量、排出原単位、可用率の開示が必要だ。
数値目標が設備増設に追いつくか
排出削減と資源使用の定量目標は、なお策定中とされた。7拠点の運用と新たな電源計画を抱える段階では、基準年と中間年を持つ目標が必要になる。
絶対量と原単位、スコープ1・2と将来のスコープ3、新キャンパスの扱いを分けるべきだ。再生可能電力の契約上の主張も、時間帯ごとの実供給と区別する必要がある。
今回の報告は、インフラ拡大が開示済み排出量を支配していることを示した。次の評価点は、会計と目標が設備の成長速度に追いつくかである。

