要約

  • ICTAの草案は、独立した一社に全国の番号ポータビリティー基盤を独占運営させる案を示す。事業者間の相互出資制限、平等なアクセス、All Call Query方式も盛り込まれている。
  • 信頼性、復旧、安全、サポート、報告の義務は列挙される一方、運用の細部の多くは応募者の提案に委ねられている。最終免許では測定可能な水準を定め、移転やルーティングの障害時に誰が責任を負うかを検証可能にすべきだ。

番号を変えずに会社を変える

携帯電話会社を選び直すことは商取引上の判断だが、電話番号は仕事、銀行の認証、家族との連絡や社会的な識別に結びついている。モーリシャス情報通信庁(ICTA)によれば、現状では乗り換え時に番号変更が必要だ。モバイル番号ポータビリティー(MNP)はこの障壁を下げ、競争を促す構想である。

政策は免許設計の段階に進んだ。ICTAの公開ページは、2026年の規則でMNPサービス事業者の免許区分を設け、選定された一社に免許を付与する方針を示している。募集資料では、その一社が全国システムを構築・運営し、独占的にサービスを提供する。ただし資料は草案で、申請期限も未記入のまま。公開情報から入札完了、免許交付、サービス開始は確認できない。

したがって現段階で問うべきは、利便性が実現したかではなく、唯一の共有制御点をどう調達し監督するかだ。利用者が元のネットワークを離れた後、新しい番号の帰属を他社ネットワークがどう把握するのかが核心となる。

データベースは通話経路の一部

草案の方式はAll Call Query(ACQ)。各ネットワークが移転情報を参照し、通話の宛先ネットワークを決める。免許保有者は中央清算機関と番号ポータビリティーデータベースを整備し、関係する携帯・固定・国際事業者に最新情報を提供する。音声のほか、SMS、USSD、ローミング、金融サービスのワンタイムパスワードをどう扱うかも応募書類の対象だ。

これは単なる番号名簿ではなく、通話の経路と認証の入力となる仕組みである。移転申請が受理されても、下流システムに古い情報が残ることはあり得る。中央データベースが稼働していても、接続インターフェースや各社の複製データの同期が遅れる可能性がある。草案が、旧事業者の承認から中央更新、各社への反映までの所要時間を応募者に説明させるのは、その連鎖が重要だからだ。

一元化は共通の参照元を作る一方、各社のローカル複製は中央への常時依存を減らせるが、データが一致していることを証明する必要が生じる。ICTAの10月の会合議題には、中央型とローカル型、同期、データ所在、拡張性が並ぶ。議題に載ったことは、方式が決まったことを意味しない。

所有の独立だけでは運用の中立性にならない

草案は公共通信事業者によるサービス会社への直接・間接出資と、その逆方向の出資を禁じ、携帯各社への透明で差別のないアクセスを求める。株主と最終受益者の開示、5年の運用実績、10年間の財務計画も求めている。これは利益相反を抑えるが、インターフェースが等しく使えるか、更新が遅れないか、障害処理や料金が公平かまでは証明しない。

免許期間は15年で、ICTAが条件を定めてさらに10年更新できる。授与後9か月以内のサービス開始も求められる。高可用性、故障率、平均修理時間は記載されるものの、稼働率、照会遅延、復旧時間、移転完了時間の数値基準は示されていない。料金方式も未確定だ。ICTAは比較型の定性的な「ビューティーコンテスト」で選び、最低価格が決定要因とは限らない。長期独占を認めるなら、評価の根拠と開始後の監督記録が重要になる。

未決のデータ所在と、免許に必要な証拠

草案は一方で国内オンプレミス設備を求め、別の箇所では協議後にクラウドも検討すると記す。最終方式をどちらかと断定できない。所在地だけで回復力は測れず、国内設備も単一拠点や電源に依存し得る。クラウドならデータアクセス、委託先、記録移行、監督検査の規則が要る。

セーシェルの2023年規則は限定的な法制度比較となる。清算機関に事業者との直接契約、業務規則による費用分担、取引記録の最低7年保存を求め、設備の国内外設置を認める。制度上の選択肢を示すもので、実際の品質を示す証拠でも、モーリシャスに適用される規則でもない。

最終免許には、照会遅延、稼働率、同期、移転完了、事故受付、復旧の数値基準を盛り込む必要がある。利用者の異議申立てと誤りの訂正、各段階の責任者、事業者間の同一条件、変更通知、監査可能な料金、紛争手続きも定めたい。授与後は時刻付き状態変更、事故記録、標本ルーティング試験、災害復旧訓練、拒否理由、定期統計を残すべきだ。集計結果を公開すれば、機微なネットワーク情報を守りながら約束の履行を検証できる。開始日の公表だけでは、規模が拡大した後も安定するとは言えない。

出典