要約

  • Libyan International Telecommunication Company(LITC)は、自社の説明では Libyan Post, Telecommunications and Information Technology Holding Company(LPTIC)に属し、2008年に設立され、リビアの国際ゲートウェイとみなされ、国際電話・国際データ・インターネットサービスを提供し、国際ネットワークを管理するとされる。
  • 2025年5月16日、Cloudflare はリビアの複数の事業者で前週比50%超のトラフィック低下を計測し、AS328733 Awal Telecom では完全な停止を記録した。NetBlocks も同日、接続障害を確認した。
  • 公表された計測は国内アクセス事業者ごとのものであり、LITC の国際ゲートウェイに帰属する計測も、遮断を命じた機関の特定も含まれていない。
  • LITC が所有する海底ケーブル Silphium の就役時期と容量は、情報源のあいだで一致しない。
  • LITC によれば、Silphium は2013年10月29日に故意に損傷し、その修理は2016年7月に始まった。

ゲートウェイを名乗る会社

LITC の自社説明(litc.ly の2020年4月29日のアーカイブ)はアラビア語で、同社が LPTIC に属し、2008年に設立され、リビアの国際ゲートウェイとみなされ、国際電話・国際データ・インターネットサービスを提供し、国際ネットワークを管理すると記している(アーカイブされた自社説明)。LPTIC の企業サイトは LITC を子会社の一つとして挙げ、設立を2008年とし、同じ一覧に Libya Telecom & Technology(1997年)、Aljeel Aljadeed、Libya Post、Almadar Aljadid、Libyana を並べている(LPTIC の子会社一覧)。

リビアの通信セクターを概観する業界団体の解説も、LPTIC が LITC を含む子会社を所有し、LITC がリビアの国際通信接続を管理する一方、固定電話とインターネットは General Post and Telecommunications Company(GPTC)が提供すると記述する。同じ解説は移動体市場を Libyana、Almadar、Libya Telecom and Technology が担い、Libyana が50%超のシェアを持つとする(セクター概観)。

Silphium:所有と、食い違う数字

海底ケーブルのデータベース Submarine Networks は、Silphium を Darnah(リビア)と Chania(ギリシャ)を結ぶ425 km の無中継ケーブルで、LITC が完全に所有する最初の海底ケーブルシステム、Chania の陸揚げ設備と欧州への接続は OTEGLOBE が提供、初期容量は1.2 Tbps(10 Gbps DWDM)で40 Gbps および100 Gbps へ増強可能、供給者は Huawei Marine(現在の HMN Technologies)、商用稼働は2013年1月と記載する。同データベースはリビアに至る国際海底システムとして Europe India Gateway、Italy-Libya、Silphium を、国内の Libyan Fiber Optic Network とあわせて挙げている(Submarine Networks の項目)。

Libya Herald は2016年7月17日、LITC が Derna の陸揚げ点で Silphium の修理作業を始めたと発表したと報じ、LITC の説明として稼働開始を2012年6月、クレタ島までの425 km をリビア東部初の国際通信リンクとし、現行容量70 Gbps、1.2 Tbps まで拡張可能と伝えている。同じ記事は LITC を、国営の LPTIC が所有する主要7社の通信会社の一つと位置づける(Libya Herald の報道)。就役時期(LITC 発の2012年6月 対 Submarine Networks の2013年1月)と容量(LITC 発の70 Gbps 対 初期1.2 Tbps)は一致しない。本記事はどちらかを平均したり、黙って一方を採ったりしない。

2019年10月3日、Telecom Italia Sparkle は Sparkle と LITC が Italy-Libya 二国間ケーブルを100 Gbps 技術へ増強したとするプレスリリースを公表した(Sparkle の発表)。これは事業者側の発表記録であり、受注容量の独立した検証ではない。

2013年の損傷と2016年の修理開始

Libya Herald の報道によれば、LITC は Silphium が2013年10月29日に故意に標的とされ損傷したと述べ、修理は2016年7月に始まった(Libya Herald の報道)。損傷の認識から修理着手まで、およそ2年9か月である。この期間に国際容量へどのような影響が出たかを計測した公開資料は、本記事が確認した範囲にはない。

2025年5月16日に計測されたもの

Cloudflare の2025年第2四半期のインターネット障害総括(2025年7月22日公表)は、2025年5月16日にリビアの複数のネットワーク事業者で障害が観測され、それは統一政府(Government of National Unity)に対する公開抗議への対応だったと報じられたとし、13:30 UTC(現地時間15:30)に前週比50%超のトラフィック低下が AS329129(Cloudflare は「Libyan International Company for Technology」と命名)、AS328539 Giga Communication、AS37284 Aljeel Aljadeed for Technology、AS328733 Awal Telecom で発生し、Awal Telecom は完全な停止になったと記録する。低調なトラフィックはおおよそ0:00 UTCまで続き、Giga Communication は5月17日02:00〜11:30 UTC に二度目の障害を記録した。同じ総括は、この四半期にリビア、イラン、イラク、シリア、パナマで政府主導の遮断があり、2025年第1四半期には政府主導の遮断が観測されなかったと述べる(Cloudflare の四半期総括)。

NetBlocks は2025年5月16日、リビアのインターネット接続に障害が起きていることを示すライブ指標を公表し、通信ブラックアウトに関する現地報道を裏づけ、抗議者と治安部隊の衝突が激化する情勢のなかに位置づけた(NetBlocks の発表)。

Freedom House の Freedom on the Net 2025 は、2025年5月にトリポリで局所的なインターネット遮断があり、約12時間続き、ほとんどのサービス事業者は部分的な帯域低下にとどまったが、少なくとも1社が完全なサービス停止を報告したと記録する。同報告は2024年6月から2025年5月について、政府が接続を制限するために技術的または法的にインターネット基盤を支配しているかを3/6と評価し、2024年7月に GNU 系の Presidential Council が Decision No. 14 を発して社会的な言論を取り締まる広範な権限を持つ Public Morality Protection Agency を設置したことも記す(Freedom on the Net 2025)。

その前年版は、2008年設立の LPTIC 子会社 Hatif Libya がリビアにサービスを提供する光ファイバー基幹網を支配しており、トラフィックが LPTIC に集中することが当局によるインターネット制限を可能にすると述べる。同じ報告は、2023年9月に Derna で洪水後の抗議のさなかインターネットと電話が遮断された件について、LPTIC が光ファイバーケーブルの切断を原因とし当日中に復旧したと説明する一方、他の報道は Libyan Arab Armed Forces が4日間遮断を維持したと伝えていると記録し、2023年10月の Benghazi での1週間超の遮断、Sirte での反復的な障害、2022年8月の Tobruk での Khalifa Haftar の訪問をめぐる5時間の無説明の遮断にも触れている。この版もインフラ支配のスコアを3/6とする(Freedom on the Net 2024)。

GeoCables はリビアの事業者と推定人口シェアを挙げ(Libyana Mobile Phone AS328286 35.46%、General Post AS21003 21.31%、Aljeel Aljadeed AS37284 14.99%、Giga AS328539 14.28%、Libyan International AS329129 4.01%)、リビアに至る海底ケーブルとして Europe India Gateway、Italy-Libya、LFON、Medusa、Silphium、Tobrok-Emasaed を列挙する。同サイトは自らの状態表示が公式な事業者声明ではなくヒューリスティックであると明記しており、取得できた検知ログは2026年6月21日以降で、2026年7月28日の劣化事象のみを示すため、2025年5月の事象を裏づけも反証もしない(GeoCables のリビアページ)。

計測が名指ししなかったもの

Cloudflare が AS329129 を「Libyan International Company for Technology」と呼ぶのに対し、GeoCables は同じ ASN を単に「Libyan International」と呼ぶ。本記事が保持する資料は、この網の法的同一性も、LITC との関係も確定しない(Cloudflare の四半期総括、GeoCables のリビアページ)。

2025年5月16日の遮断が LITC の国際ゲートウェイで実施された、あるいはそれに起因したと述べる資料はない。計測は国内アクセス事業者の水準にとどまる(Cloudflare の四半期総括、Freedom on the Net 2025)。遮断を命じた機関、命令、指示を特定する資料もない。Cloudflare は「報じられた」と書き、NetBlocks は現地報道を引く(Cloudflare の四半期総括、NetBlocks の発表)。

能力の集中は、その行使の証拠ではない。逆も同じで、行使を否定する証拠でもない。ここで確認できるのは、国際ゲートウェイを自認する主体と、実際に計測されたのは国内アクセス事業者であるという事実のあいだに、公開資料では埋まっていない空白があるということである。ディレクトリ上の対象エントリは Libyan International Telecommunication Company である。