要約

  • RFC 9719 の was-the-last-lie-accepted は、一つのインターフェースで最後に受信した Link Information Element が受理されたかを示す。ThreeWay 隣接、正しい階層、TIE 同期、RIB/FIB、実トラフィックの到達は別の証拠である。
  • clear-neighbor や clear-all-neighbors の成功は、再構築を開始したという事実にすぎない。復旧判定には、その後の状態遷移、データベース、経路、ハードウェア転送、配送試験が必要だ。

受理と相互確認の間

RFC 9719 は RIFT のための YANG 1.1 モデルを定義し、IETF の routing モデルを拡張する。NMDA に沿うため、設定した意図と実際の運用状態を同一視しない。その中で was-the-last-lie-accepted は読み取り専用の運用状態であり、直近の LIE が受理されれば true になる。拒否された場合は last-lie-reject-reason と neighbor-error 通知が理由を示す。

この値は有用だが、射程は短い。対向がこちらを正しく認識したか、隣接が ThreeWay まで進んだか、ZTP が意図したレベルを選んだか、トポロジー情報が揃ったか、経路が転送装置に入ったか、パケットが宛先に届いたかは答えない。

RFC 9692 の隣接 FSM は、その境界を明瞭にする。TwoWay は有効な LIE を受信した状態だが、有効な ThreeWay LIE をまだ得ていない。ThreeWay になって初めて隣接が広告され、TIE、TIDE、TIRE の交換が許される。したがって「LIE が受理された」と「相互関係が成立した」は連続する事実であって、同じ事実ではない。

RFC 9719が用意する観測点

モデルには、単一の健康指標ではなく、因果関係を追うための部品がある。インターフェースの受理状態と拒否理由、隣接 FSM、送受信した ZTP offer、best offer と removal の判断、LIE/TIE/TIDE/TIRE のカウンターとキュー、ローカル TIE データベース、SPF の開始・終了時刻と契機となった TIE、さらに neighbor error と TIE error の通知である。

調査は受信口から始める。拒否であれば、変更前に理由、通知、対向、時刻を保存する。実装ごとのログ表現に差があっても、標準化された状態を失わなければ比較可能性が残る。

受理されていれば FSM に進み、ThreeWay に到達して安定したかを見る。TwoWay で止まる観測は矛盾ではない。入力は妥当だが、相互確認が終わっていないという具体的な故障位置を示している。

次に offer と階層を確認する。受理できる LIE が届いていても、選択されたレベルや方向が設計意図と一致するとは限らない。sent offer、received offer、best offer、removal reason を別々に読む必要がある。

その後に同期を見る。TIE データベースの内容、TIDE/TIRE の動き、キュー、近隣数、SPF の契機と所要時間を照合する。ThreeWay が安定していても、情報ベースが不完全なら経路の正しさは証明できない。

最後は管理モデルの外側だ。RFC 9692 は転送面への実装方法を規定しない。RIB と FIB、ASIC のカウンター、実際の配送プローブは独立した検査になる。RIFT が何を信じているかと、パケットが何を経験したかを分ける必要がある。

clearの戻り値が復旧証明にならない理由

RFC 9719 は一つの隣接を消去するアクションと、インターフェース上の全隣接を消去するアクションを定義する。呼び出しが成功しても、それは命令が受け付けられたことを意味するだけだ。接続の再確立、原因の除去、サービスの回復は示さない。

しかもセキュリティ考慮事項は、無許可の clear が接続再構築を繰り返し、安定性を損なう可能性を指摘する。よって実行前の証拠保存、最小範囲の操作、実行後の全証拠列の再確認が必要になる。clear は古い状態を除去できるが、原因を説明する手掛かりも同時に消し得る。

「一つの緑」ではなく境界の機械可読化

自動化は、拒否の反復を検知し、ThreeWay 到達後にデータベース検査を開始し、SPF を引き起こした TIE と処理時間を関連付けられる。意図した設定と運用 offer の差も監視できる。

だが一つの boolean を fabric 全体の緑信号に昇格させてはならない。RFC 9719 の強みは万能な答えではなく、それぞれの答えがどこまで証明するかを機械が扱える形にしたことにある。