要約

  • Internet Society Pulseの寄稿記事は、2026年7月の72時間にCertstreamで観測したIP証明書の99.21%をLet’s Encryptが発行していたと報告した。これは明示された短期標本であり、年間市場の全数調査ではない。
  • 同じ研究の2025年データではZeroSSLが証明書数と一意IPの双方で先行した。証明書、SAN内のIP、稼働ホスト、アドレス保有者、経路広告主体は別の単位である。
  • 集中度を政策判断に使うなら、期間、取得経路、集計対象、除外範囲、帰属の結び方を記した測定票が必要になる。

72時間の流れだけを見れば、変化は劇的だった。研究者は2026年7月に約37万2000枚の証明書と29万6000件のSAN IPをCertstreamで収集した。証明書ベースでLet’s Encryptは99.21%、ZeroSSLは0.76%だった。

ところが2025年を通年で集めたデータでは、ZeroSSLが31万2816枚、Let’s Encryptが18万6390枚である。両者の合計は観測証明書の96.44%を占めた。Let’s EncryptがIP証明書を一般提供したのは2026年1月なので、短期窓が急な普及を捉えた可能性は十分ある。

それでも、通年と3日間をそのまま結ぶことはできない。期間も技術の利用可能性も異なるからだ。さらに、何を一件とするかで景色が変わる。

発行枚数は稼働サービス数ではない

2025年のデータには51万7619枚の一意なIP証明書があったが、一意なアドレスは約22万8000件だった。Let’s Encryptの18万枚を超える証明書は、IPで数えると約4600件に縮む。約17万6000枚が二つのCloudflareアドレスを指定していた。

寄稿記事は顧客が借りた基盤かもしれないと述べる一方、それを確認する証拠はないとも明記する。この留保を消してはならない。160時間の証明書は更新回数が多くなる。一つのアドレスは複数の用途や利用者を受け持ち得る。一枚に複数のIPが入ることもある。

したがって、発行物を分子にした比率は、まず発行活動の集中を表す。独立サービス、顧客、通信量、依存関係の比率へ自動的に変換されるものではない。

研究は別の帰属も試みた。約21万8000件のIPについて、保有側は2137組織、経路側は1635組織、国は120以上にまたがった。1.1.1.1はAPNIC Labsのアドレス空間だが、経路はCloudflareのAS13335が広告する。

登録上の保有、現在の経路広告、ACME検証への応答、サービス運用、顧客利用は異なる関係である。データセットを結合しても、主体が同一になるわけではない。

IPの支配を証明する瞬間は短い

Let’s Encryptは2025年7月に最初のIPアドレス証明書を発行し、2026年1月に一般提供した。有効期間は160時間である。IPはドメイン名より移りやすいため、検証を頻繁に行うという設計だ。

RFC 8738では、申請者が対象IPでhttp-01またはtls-alpn-01に応答する。dns-01は利用できない。そこで確かめるのは検証時点のIP識別子への支配であり、CAは追加制約を課せる。Let’s Encryptの資料は、複数地点とエニーキャストによって検証者ごとに別のサーバーへ到達し得ることも説明している。

CA/Browser Forumの基準は、申請者がIPを支配しているか利用権を与えられていることを求める。RFC 5280はsubjectAltNameiPAddress表現を定める。これは公開信頼証明書の発行規律であって、永続所有、明日の経路、テナント契約、現在のサービス動作を認定する制度ではない。

公開ログと公開サービスの間には実行がある

Certificate Transparencyは追記型で公開監査できる発行面をつくる。CAの私的な統計に頼らず大規模分析を行える点は大きい。研究リポジトリーは対象をChromeが信頼するCAのIP SAN証明書とし、自己署名証明書を除外している。

対象を明記したことは研究の強みだ。ログ登録は発行の痕跡だが、サーバーがその証明書を提示したことまでは示さない。登録後に使われなかった証明書も、公開ログに入らない私設PKIもある。クライアントの信頼設定も一様ではない。

そこで研究者は選んだポートへ能動的に接続した。21ポートで信頼されるIP TLS証明書を提示したホストは約3万8000。観測の91.1%は443と8443、853は0.16%だった。

この測定は運用に近いが、全数調査ではない。ポート一覧、到達可能性、観測地点、発行から接続までの時間に依存する。CT上の全証明書を配備済みとする根拠にはならない。

複数の順位を残すことが公共的価値になる

プロジェクトはコード、ノートブック、データ取得先を公開した。誰が首位かだけでなく、発行者別、一意IP別、保有者別、経路組織別、稼働ホスト別に結果が分かれることを検証できる。

調達担当者は更新依存を見たい。運用者は代替経路と失敗時の復旧を見たい。競争当局は市場を定義したうえで力や損害の証拠を必要とする。普及研究では到達可能なサービス数が要る。99.21%という発行比率だけで、これらを同時に判断することはできない。

現在の確かなニュースは、明示された3日間に公開IP証明書の流れがLet’s Encryptへ大きく傾いたことだ。同条件の窓を繰り返して初めて、持続的構造かどうかを問える。

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