要点
- Hut 8は Beacon Point で2件目となる352MW、15年間の IT 容量賃貸契約を結び、基本契約価値を98億ドルとした。
- 相手は5月の第1期と同じ、名称非公開の高投資適格テナントであり、同社のキャンパス契約は合計704MW になった。
- 1GW の電力容量は AEP Texas との系統接続契約で確保済みだが、第2期最初のデータホールは2028年第2四半期の引き渡し予定である。
- 契約価値と予想 NOI は将来15年の流れであり、現在の売上でも保証利益でもない。資金調達、建設、納入と顧客集中は残る。
電力は確保されている。賃貸契約も締結された。それでも第2期の最初のデータホールは、2028年第2四半期まで引き渡されない予定だ。
この順序が、Hut 8の Beacon Point 計画の価値とリスクを同時に説明する。テキサスで1GW の系統容量を押さえたことで、建物が完成する前に352MW 単位の契約を取れる。しかし契約を運用収入へ変えるには、電力の権利だけでなく、資金、設備、工事と顧客の受け入れが要る。
2件目は新しい出来事である
Hut 8は5月に、Beacon Point 第1期として352MW、15年間の契約を公表した。7月20日の発表はその再掲ではない。同じテナントがさらに352MW を契約し、キャンパス内の合計を704MW に増やした出来事だ。
相手の名称は明かされず、高投資適格とだけ説明されている。憶測で社名を補う根拠はない。公開事実のままでも集中度は明確だ。一つの顧客が二つの同規模フェーズを持ち、基本契約価値は1件98億ドル、全体196億ドルとなる。
同じ顧客の追加契約は、需要の強い検証になる。設計や運営を揃えやすい利点もある。一方、顧客の資金、AI 設備の構成、配備時期や技術要件が変われば、影響を受けるのは352MW ではなく704MW である。
系統接続を先に商品化する
Hut 8によれば、Beacon Point の1GW の電力は AEP Texas との系統接続契約で全て確保され、第2期に追加の系統容量は要らない。大規模データセンターが接続待ちで遅れる市場では、これは土地や建物と同じく販売可能な希少性を持つ。
現場準備は進み、納期の長い重要機器も調達済みだという。初回の通電は2027年第1四半期、第2期最初のデータホールは2028年第2四半期を予定する。
賃貸条件は第1期とほぼ同じで、トリプルネット方式と年間3%の基本賃料上昇を含む。契約で定めた不動産運営費をテナント側が負担するため、所有者の収益は安定しやすい。しかし建設費の増加、工期、融資条件、請負業者、性能達成は Hut 8の実行課題として残る。
98億ドルは15年間の数字
Hut 8は、第2期の基本期間中の累積 NOI を98億ドル、安定稼働後の年平均を6.55億ドルと予想する。キャンパス全体では年平均13.1億ドルとなる。
予想 NOI は非 GAAP の将来指標であり、保証利益ではない。会社の定義では、賃貸収入から払い戻されない不動産運営費を引くが、販売費及び一般管理費、減価償却費などは含まない。未知の将来費用を不自然な精度で見積もれないとして、GAAP 営業利益との調整表も示していない。
Hut 8の2026年第1四半期売上は7,100万ドルで、前年同期の2,180万ドルから増えた。四半期売上と15年契約価値を直接比べることはできないが、98億ドルを「今の売上」と読めない理由はよく分かる。完成前の施設と長期の履行を前提にした数字だ。
各契約には5年の延長オプションが3回ある。全て実行されれば、キャンパスの潜在価値は502億ドルに達すると Hut 8は試算する。これは選択可能な上振れで、現在の基本期間196億ドルとは別である。
ポートフォリオは拡大し、集中は残る
Hut 8の AI データセンター契約は合計949MW になった。Beacon Point が704MW、River Bend が245MW で、対応する電力容量は1,330MW、基本契約価値は266億ドル、予想年平均 NOI は17.5億ドル超だという。全容量が投資適格の相手に賃貸されるか、その信用で支えられているとしている。
River Bend があるため、会社全体が一つの場所だけに依存しているわけではない。それでも Beacon Point の二つのフェーズは同じテナントに依存する。
Reuters は発表後、Hut 8株が市場開始前に約6%上昇したと伝えた。市場が評価したのは、確保した電力が契約容量に変わったことだ。次に必要なのは、契約容量を受け入れ済みの設備に変えることだ。その工程が、長期価値を実際のキャッシュフローへ変える。

