要約

  • 2014年のRob BlokzijlからHans Petter Holenへの引き継ぎは十分な支持を得たものだったが、同時に、議長職の継承を正式な仕組みにするという課題も残した。
  • 2016年からの公開議論とコミュニティの作業は、Vice Chair、任期制限、NomCom、確認手続きを含むRIPE-727とRIPE-728へ結実し、2020年の移行を個人の裁量だけに依存しないものにした。

個人の信頼から始まった引き継ぎ

2014年の出来事を、制度の欠陥を示す不適切な交代として読むべきではない。Rob BlokzijlからHans Petter Holenへの引き継ぎは、RIPEコミュニティに十分に支持されたものだった。むしろ重要なのは、そのように信頼を基盤として成立した交代であっても、同じ方法を将来にわたって繰り返すだけでは、継承の条件を明確にできないと認識された点にある。

BlokzijlはHolenに議長職を引き受けるよう求める一方、RIPEとして正式な選出プロセスをつくることも求めた。この二つの依頼は対立していない。目の前の役割を引き継ぐことと、次の世代が納得できるルールをつくることは、同じ統治課題の異なる時間軸だったからだ。Holenが議長として担ったのは、単に自分の任期を務めることだけではなかった。自分が受け取った個人的な信頼を、後任のために検証可能な手続きへ変換することでもあった。

2016年から始まった制度設計

Holenは2016年に、この正式なプロセスについての公開議論を始めた。その後、会合やメーリングリストで議論が重ねられ、2019年にRIPE-727として選出原則が文書化された。ここで注意すべきなのは、RIPE-727をHolen一人の設計として扱わないことだ。文書はコミュニティの議論から生まれたもので、複数の著者が関わっている。Daniel Karrenbergが編集し、本文の大部分を書いたことも、文書の来歴を理解するうえで重要である。Anna Wilsonを含む関係者とコミュニティの作業が、個人の提案を共同の手続きへと変えた。

RIPE-727が示した変更は、肩書きの追加にとどまらない。Vice Chairを再び設け、ChairとVice Chairの任期を結び付け、両職に5年の任期と2期までの上限を設定した。さらに、選出をコミュニティのNomComに委ね、一定の手続きによる確認を組み込んだ。これによって、次の議長が現職者の判断だけで決まる構図から距離を置き、役割の準備、候補者との対話、コミュニティによる確認を別々の段階として扱えるようになった。

制度化の効果は、決定権を一つの人物から別の人物へ単純に移すことではない。誰が候補者を知り、誰が評価し、誰が確認し、どの時点で交代が成立するのかを、参加者が参照できるようにすることだ。制度は個人の判断を消すのではなく、判断が行われる場所と責任の境界を見えやすくする。

NomComという手続き上の距離

RIPE-728はNomComの具体的な仕組みを定めた。そこでは、投票に参加するコミュニティのボランティアを無作為に選び、別に任命された投票権を持たない議長が手続きを支える。コミュニティへの相談、確認、リコールの手続きも含まれ、詳細な設計には確立されたIETFの実践が活用された。

この仕組みを、無作為抽出だから必ず公平になる、独立した判断になる、あるいは正しい結果が保証される、と説明してはいけない。無作為抽出が提供するのは、少なくとも候補者の選定に関わる集団をつくる際の、説明可能な手続き上の距離である。その距離を実質的な信頼へ変えるには、相談の質、情報へのアクセス、利益相反の扱い、確認とリコールの運用が必要になる。

RIPE 79でHolenが報告した時点では、36人のボランティアがNomComの候補プールに入り、10人の投票メンバーが無作為に選ばれていた。これは仕組みが紙の上だけに存在しなかったことを示す具体的なチェックポイントである。一方で、この人数や抽出方法だけから、その後の個別判断の中立性や候補者の優劣を推定することはできない。文書化された手続きと、実際にそこで行われる判断は、同じものではないからだ。

2020年、制度が試された移行

2020年3月、RIPE NCCのExecutive Boardは、HolenをManaging Directorに任命した。これにより、議長職の移行は抽象的な将来課題ではなく、直ちに処理すべき問題になった。Holenは5月にRIPE Chairを退き、その後もしばらく暫定的に職務を続けた。7月にはMirjam KühneがChair、Niall O'ReillyがVice Chairに選ばれ、9月1日に両者へ移行した。

ここでも、Holenが後任を選んだとか、Managing Directorへの任命がNomComの選択を決めたと考える根拠はない。確認できるのは、制度が必要とされた理由の一つが現実のものとなり、議長職の移行が、あらかじめ記録された役割と手続きに沿って進められたということだ。誰か一人が自分の後継者を指名するのではなく、コミュニティの仕組みが次のChairとVice Chairを迎える。その違いは、交代の結果だけでなく、交代を正当化する経路に現れる。

成果は「後継者を選んだこと」ではない

この期間についての編集上の推論は明確に分けておく必要がある。資料が直接示すのは、2014年の引き継ぎ、2016年からの議論、RIPE-727とRIPE-728の文書化、NomComの準備、そして2020年9月の移行である。そこから読み取れる制度的な意味は、Holenが自分の後継者を選んだことではない。むしろ、最初の引き継ぎを可能にした個人的信頼への依存を、次の交代では減らせるようにしたことである。

それは、現職者の影響力を否定することとも違う。現職者は議論を始め、文脈を提供し、必要な役割を説明できる。しかし、その影響力を最終的な人選と同一視しない境界線が、NomCom、確認、任期、Vice Chairという複数の要素によって描かれる。リーダーの仕事が、本人の権威を延長することではなく、本人がいなくても機能する継承条件を整えることになる瞬間である。

RIPEの手続きは法律でも企業の取締役会選挙でもなく、すべてのコミュニティにそのまま適用できる普遍的なテンプレートでもない。それでも、議長職のように公式組織と広いコミュニティの接点にある役割では、暗黙の信頼だけでなく、任期、役割、選出、確認、移行を記録することが、統治の耐久性を高める。2014年に必要だったのは信頼をもって引き継ぐことだった。2020年までに必要になったのは、その信頼を、次の人々が検証できる仕組みに変えることだった。

出典