要約

  • EI TowersとRai Wayの統合協議は2024年12月の非拘束覚書に始まり、2026年6月15日と6月30日の期限を過ぎても合意に至らなかった。
  • 争点は統合後の株式構造と、RAIが求めるEI Towers–MFE間サービス契約の2037年以降への15年間延長である。
  • イタリアではINWITが22,000基超、Cellnexが8,000基超の鉄塔を運用しており、統合の規模効果は大きいが、支配権の配分が決まっていない。

EI Towers S.p.A.はイタリアの通信鉄塔事業者であり、2022年末時点で約2,400のサイトを運用していた。その資本構成はF2i SGRが60%、MFE-MediaForEuropeが40%である。この構図の起点は2018年7月、2i TowersがEI Towersに対する公開買付け提案を示したことにさかのぼる(EI Towersの規模と株主構成に関する報道)。

F2iは2018年10月にEI Towersの独占的支配を確立した。EI Towersの株式は同年10月19日にミラノ証券取引所から上場廃止となり、以後は非上場企業としてF2iとMFEの共同支配下に置かれた(EI Towersの上場廃止に関する報道)。EI Towersの事業は、放送事業者への送信サイト提供と、Lega Serie Aの試合信号の伝送およびDAZN、Sky Italia、Rai、Mediasetへの配信を含む(イタリアの放送伝送事業に関する資料)。

統合協議そのものは2024年12月に動き出した。RAI、F2i SGR、MFE-MediaForEuropeの3者が、EI TowersとRai Wayの統合に向けた非拘束の覚書に署名したのである。協議は2026年6月15日と6月30日の期限を越えて続いたが、6月30日までに合意は成立しなかった(EI TowersとRai Wayの統合協議に関する報道)。

長期化の理由は明快である。第一に、RAIはEI TowersとMFEの間のサービス契約を2037年から15年間延長するよう求めた。第二に、統合後の株式構造をめぐって当事者の見解が分かれた(EI TowersとRAIのサービス契約をめぐる報道)。公開サービス事業者であるRAIにとって、送信網の安定確保は編成や周波数とは別の層の利害であり、契約期間の延長要求はその現れである。

市場の側では規模の差がすでに大きい。INWITは22,000基を超える鉄塔を運用し、Cellnexはイタリア国内で8,000基を超えるサイトを保有する(イタリア鉄塔市場の競争環境に関する資料)。EI Towersの約2,400サイトはこの二社に対して小さい。統合による規模効果は理論上大きいが、統合後の議決権配分が定まらなければ、シナジーの設計は進まない。

なお、EI Towersの財務指標については古い基準値が流通している。2017年末時点で純負債は3億1,770万ユーロ、レバレッジは約2.4倍と報じられたが、これは約9年前の数値であり、現在の資本構成や統合協議の評価にはそのまま使えない(EI Towersの財務情報に関する資料)。本稿が確認できるのはここまでであり、統合比率や統合後の負債水準は公開情報では確定していない。

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