要約
- D-Waveは10万量子ビットのアニーリング機と、1万個の物理量子ビットを100個の論理量子ビットへ変換し、100万回超の演算を目指すゲート方式機を掲げた。方式も単位も異なるため合算できない。
- 公開契約が示す共通の証拠の順番は、装置導入、QPU試作、プロセス統合、そして大規模プロセッサーの較正・ベンチマークである。
- 評価には二つの技術台帳と、一つの契約台帳が必要だ。政府による支払い区分の承認は商用性を意味せず、歩留まりや誤り率を欠く物理数は能力を意味しない。
今回の発表を読むとき、最も簡単にできて、最も避けるべき計算がある。10万と1万を足すことだ。
10万という数字は量子アニーリング方式の物理的な規模を指す。もう一方の1万はゲート方式における物理量子ビットの出発点であり、目標はそこから100個の論理量子ビットを構成し、100万回を超える演算を維持することにある。両方に「量子ビット」という名が付いていても、果たす役割は同じではない。
アニーリングでは、結合された量子系に問題を埋め込み、エネルギー状態の変化を利用して解を探す。ゲート方式では、個々の操作を連ねる一方、物理素子の誤りを吸収する符号化層が必要になる。接続構造も、誤りの扱いも、有用性を示す試験も違う。二つの数字に共通の換算率は公表されておらず、作るべきでもない。
したがって、発表の核心は11万という総数ではない。米証券取引委員会に提出された契約に、規模を性能へ変換するための工程がどう配置されているかである。
支払いの前に並ぶ四つの工程
契約の対象は、超伝導型のアニーリング方式とゲート方式に必要な部品、サブシステム、システム、試作品の開発・統合に及ぶ。製造設備、事業拠点、研究活動も含む。公開資料で確認できる節目は大きく、装置の設置、QPU試作品の製造、製造プロセスの統合、大規模プロセッサーの較正とベンチマークに分かれる。
この順番は、前の成果で次の成果を代用できないことを示す。装置を据え付けても、動くQPUができたとは限らない。QPUを作っても、十分な歩留まりや再現性があるとは限らない。工程を統合しても、較正が安定するとは限らない。較正が完了しても、比較可能な試験で性能が示されなければ用途は判断できない。
詳細な期限や合格基準のすべては見えない。契約には伏せられた部分があり、別紙の一部も省かれている。一方、資金管理の骨格は公開されている。D-Waveは各支払い区分に属する全節目を完了した後、30日以内に裏付け資料を出さなければならない。条件を満たしたかどうかは商務省が単独の裁量で判断し、必要な活動が期限までに行われなければ、累計支払額を債務として回収できる場合がある。
これは厳格な証拠提出の仕組みだが、製品認証制度ではない。契約上の受領と、市場で使える計算能力は、同じ欄に書いてはいけない。
アニーリングの台帳は接続性を含む
現在の比較点はAdvantage2である。D-Waveはこれを一般提供中のアニーリングシステムとし、4,400個超の量子ビットと4万個超のカプラーを備えると説明する。Zephyrトポロジーでは一つの量子ビット当たり最大20接続が可能で、前世代比でエネルギースケールが40%高く、コヒーレンスが2倍、ノイズが4分の1になったと主張している。
ここで重要なのは、数字の大きさそのものより、評価軸が複数あることだ。問題をどれだけ自然に埋め込めるかは結合グラフに左右される。製造した面積のうち、どれだけを使えるかは歩留まりで変わる。ノイズと較正のばらつきは、同じ解が繰り返し得られるかを左右する。外部からの利用方法や待ち時間は、実験装置とサービスの差を明らかにする。
10万量子ビットを追う表には、製造数だけでなく、使用可能数、実現した結合、較正分布、試験の定義、反復回数、比較対象、アプリケーションでの結果を載せる必要がある。研究用試作機なのか、外部利用できるシステムなのかも区別しなければならない。
大きなチップは、より大きな問題を置ける可能性を広げる。同時に、配線、冷却、制御、均一性の難しさも広げる。規模は長所だけを増幅するわけではない。
ゲート方式では物理数は入口にすぎない
ゲート方式の評価表には、少なくとも三段階が要る。1万個の物理量子ビット、100個の論理量子ビット、そして100万回を超える演算である。最初の段階だけを切り出せば、誤り訂正を含むシステム目標が、半導体の個数競争に見えてしまう。
物理量子ビット100個で論理量子ビット1個を作るという比率は、この計画が掲げた目標であって一般法則ではない。必要な冗長性は、採用する符号、物理誤り率、制御操作、接続性、訂正サイクルの負荷に依存する。論理量子ビットが一度動くだけでは足りない。長い演算列の間、論理誤りを抑え続ける必要がある。
そのため、1万素子の製造発表が最大の節目になるとは限らない。機能する素子数、誤り分布、論理符号化、持続できる回路深度、第三者が追試できる手順が伴って初めて能力が見える。現在の公開資料にそれらの値はない。契約の詳細な合格線もすべては開示されていない。
不明な部分を不明なままにしておくことは、悲観ではない。物理的な目標を論理的な成果として先取りしないための最低限の会計である。
1億ドルには別の進捗表がある
契約額は最大1億ドルで、最初の支払い区分は5,355万2,620ドルである。その後に最大907万5,000ドル、1,669万5,000ドル、2,039万ドルが続き、予定された完了時には最大28万7,380ドルが残る構成だ。
この比率を技術完成率に置き換えることはできない。公開された別紙からは、各ドルが量子ビット数、歩留まり、誤り率、特定のベンチマークのどれに対応するかは分からない。支払い区分の承認が示すのは、商務省が契約条件を満たしたと判断したことまでだ。
引き出した資金は通常30日以内に使い、使わなければ返還する。実施期間は全節目の完了時か5年経過時の早い方で終わる。これらは資金を無期限の運転資金と見なさないために重要だが、将来の顧客価格や採算性を示すものではない。
D-Waveは第2四半期末に現金・市場性有価証券5億4,620万ドルを持っていた。同四半期の売上高は307万6,000ドル、上半期は593万4,000ドルだった。上半期の研究開発費は5,403万2,000ドル、営業キャッシュフローの支出は7,350万ドルである。
政府資金は研究と製造基盤の負担を大きく変え得る。しかし、それだけで顧客需要、利用頻度、単価、粗利が生まれるわけではない。契約台帳と事業台帳の間にも、換算式はまだない。
三つの線を同じグラフに重ねない
評価の枠組みは明快にできる。アニーリング欄には製造、歩留まり、実接続、較正安定性、比較試験、外部アクセス、用途別成果を置く。ゲート方式欄には機能する物理量子ビット、符号化負荷、実証した論理量子ビット、論理誤り率、持続演算、再現性を置く。契約欄には節目の提出・承認、引き出し、使用・返還、残る義務、期限を置く。
三つは同じ速さでは進まない。設備導入が試作より先に進むのは当然だ。書類が受理されても、公開ベンチマークが後になることもある。物理数が先に増え、歩留まりや誤りの把握が追いかけることもある。実験性能が伸びても、収益モデルは遅れるかもしれない。
そのずれこそが情報である。一つの合計値にまとめると、最も重要な情報が消える。
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