要約

  • 2026年第2四半期の売上高に占める上位25顧客の比率は約20%となり、前年同期の約9%から上昇した。公表売上高にこの概数を掛けると、差額は約3660万ドル、全社増収額の約59%となる。ただし同一顧客を追った会社開示ではない。
  • 2億3400万ドルの「AI Customer ARR」は、顧客がAIまたは機械学習製品を一つでも利用すると、そのアカウントのIaaSとPaaS/SaaSの売上高をすべて年率換算する。AI製品売上高そのものではない。
  • 100万ドル超の顧客、AI利用顧客、上位25顧客、年間9桁ドルのコミットメントがどこまで重なるかは不明で、顧客の出入り、利用量、粗利益、回収現金も開示されていない。

DigitalOceanの第2四半期売上高は2億1870万ドルから2億8118万ドルへ増えた。増収額は6248万ドル、伸び率は29%である。これと並び、同社のForm 10-Qは、上位25顧客が売上高の約20%を占めたと記載する。前年同期は約9%だった。

概数から規模感を計算すると、今期の20%は約5620万ドル、前年同期の9%は約1970万ドルで、差は約3660万ドルとなる。これは全社の前年同期比増収額の58.5%に相当する。もっとも、これはBTWによる説明用の試算であり、DigitalOceanが報告した指標ではない。比率は丸められており、二つの四半期で同じ25社が並んでいたかも分からない。

順位と固定コホートは違う

上位25という呼び名が同じでも、中身は決算期ごとに並べ替えられる。ある顧客の支出が増えた場合だけでなく、別の顧客が縮小した場合や境界付近の順位が入れ替わった場合にも構成は変わる。顧客を継続的に識別した期首・期末の照合がなければ、固定された25社の売上高が急増したとは言えない。

支出額別の顧客数も、足し合わせてはいけない。年間支出10万ドル超は582社から632社へ、50万ドル超は68社から92社へ、100万ドル超は26社から45社へ増えた。100万ドル超の45社は、下二つのしきい値にも含まれる入れ子の集合である。

決算資料のARRも同様で、10万ドル超の顧客から3億9500万ドル、50万ドル超から2億9100万ドル、100万ドル超から2億5900万ドルとしている。分布の上側が重くなったことは分かるが、各帯の中の偏りや上位25社との重なりは分からない。

AIのラベルは通常のクラウド利用も含む

AI Customer ARRは7500万ドルから2億3400万ドルへ増え、ARR全体に占める比率は9%から21%になった。ここで重要なのは定義である。顧客がAIまたは機械学習製品を少なくとも一つ使えば、その顧客のIaaSとPaaS/SaaSの売上高をすべて年率換算して指標に入れる。

したがって、一つのアカウントが推論やアクセラレーターを使いながら、通常の仮想マシン、ネットワーク、ストレージ、データベース、アプリケーションサービスも買う場合、それらすべてが2億3400万ドルに含まれる。この金額をAI製品の売上高と呼ぶのは定義に反する。

ARRも受注残ではない。DigitalOceanは通常、直近四半期の売上高を4倍して年率換算する。AI Customer ARRから機械的に逆算した直近四半期の対象アカウント売上高は約5850万ドルだが、今後4四半期の購入義務や売上保証を意味しない。

内訳の説明も、この指標が複合的な顧客関係であることを示す。AI Customer ARRの85%はベアメタル以外の製品から生じた。同じ範囲内で、コアクラウドは158%増、推論は762%増、ベアメタルは20%減とされた。ただし、2億3400万ドルをAI固有のワークロードと通常のクラウド利用に金額配分したものではない。

大型契約と経済価値の間に空白がある

経営陣は、支出額の大きい顧客と高度なAIネイティブ企業が成長を押し上げ、年間9桁ドルのコミットメントを獲得し始めたと説明した。一方、件数、顧客名、開始時期、稼働スケジュール、利用率、解約条件、粗利益、現金回収は開示していない。

これらの大型コミットメント、100万ドル超の45社、AI Customer ARRの対象、現在の上位25社を結ぶ表もない。大きく重なる可能性はあるが、一部だけかもしれない。四つの開示を同じ顧客群として扱えば、実在しない顧客台帳を作ることになる。

その違いはコスト面で重要だ。売上原価は44%増の1億2652万ドルとなり、売上高より速く増えた。GAAP粗利益率は60%から55%に低下した。DigitalOceanは、売上高の発生に先行したデータセンター拡張費用を主因として挙げる。上期の営業キャッシュフローは1億5690万ドルで、前年の1億5650万ドルとほぼ変わらなかった。

需要に先行して容量を設置すれば、稼働率が上がるまで粗利益率を押し下げ得る。大型コミットメントは容量を埋める助けになるが、署名、容量の稼働、実利用、売上計上、粗利益、入金は別々の状態である。集中は販売効率と計画精度を高める一方、大口顧客の遅延、最適化、離脱の影響も大きくする。

必要なのは顧客単位の増減表

Digital Native Enterpriseの顧客数は約2万社から約2万2000社となり、売上高構成比は約59%から67%へ上がった。顧客数は月末値の平均であり、四半期中に区分を移ることもある。この数字だけでは期首から期末までの顧客移動を追えない。

顧客名を公開せずとも、安定したコホートについて期首残高、新規、拡大、縮小、離脱、期末残高を示すことはできる。AI対象アカウントならAI固有製品と通常のクラウドを分け、大型コミットメントなら契約、導入、利用、売上高、粗利益、回収現金、更新を段階別に示すべきだ。

現時点で言えるのは、DigitalOceanがより大きな顧客を獲得し、AIを使う顧客が幅広いクラウド製品も購入していることまでである。成長のうちどれほどが継続的なAI製品需要で、同じ大口顧客にどれほど集中し、先行投資した容量が粗利益と現金に転換しているかは、まだ立証されていない。

出典