要約

  • ITUの1998年資料は、ティンプー中央病院と地方病院を結ぶ遠隔医療回線を同年7月の計画に記載したが、地方病院名も、インターネットを使うとの説明もない。
  • 後年のITU報告では、テレセンターは稼働していた一方、医療機器は未設置だった。ブータン保健省は後にジャカルとティンプー間の画像伝送を報告したが、それが1998年の項目と同じ事業だったとは明記していない。

表の年月日は診療結果ではない

計画表から年月日だけを抜き出すと、サービス開始日にも見える。ブータンの遠隔医療史に残る資料は、その読み方が危ういことを示す。病院間の回線計画、テレセンター、医療機器、画像伝送が異なる時点で登場するものの、それらを一つの事業の経過として結ぶ記録はそろっていない。

1998年の世界電気通信開発会議に向けたITU文書は、1996年のブータン遠隔医療調査を挙げる。別紙1の見出しは「実施済みまたは実施中の遠隔医療ミッションとプロジェクト」。そこには、ティンプー中央病院と「小規模な地方病院」を結ぶ回線が1998年7月の日付で記載されている。協力機関として保健サービス局、保健・教育省、通信省、Abe Sekkei Inc.が並ぶ。

これは事業が公的な計画表に載っていた証拠だが、完成確認ではない。表は地方病院の名前、伝送網、設置機器を示さず、試験成功も記録していない。特に、公共インターネットを使ったとは書いていない。「回線」という語だけで欠けた事実を補うことはできない。

テレセンターの稼働と医療システムの準備は別だった

2002年のITU事例研究は、より詳しい一方で段階の違いも記している。多目的コミュニティ・テレセンターの試行事業と、ジャカルの病院からティンプーの国立紹介病院への遠隔放射線診断回線が紹介される。計画では、画像読取装置付きの端末をジャカルに、もう一台をティンプーに置き、テレセンターを介して地方と首都を結ぶ。

現状欄は重要な境界を引く。テレセンターは稼働を始めたばかりだが、遠隔医療機器はブータンに届いたものの「まだ設置されていない」。この二つは別の節目だ。共用の接続拠点が開いても、診療用端末からX線画像や心電図を送れるとは限らない。報告が画像送信、専門医の意見、遠隔研修を挙げるのは、機器設置後に期待される用途であって、その時点ですでに達成した成果ではない。

同じ報告は、インターネットが有用となる可能性も説明する。医療従事者が疾病データベースや研修資料にアクセスし、電子メールで国外の同業者と連絡できるという内容だ。これは事業が期待した追加機能であり、特定の医療画像がインターネットを通過した証拠でも、遠隔診療が完了した証拠でもない。

後の記録はさらに別の段階を示す

ブータン保健省の2004年年次保健公報は、1997年にWHO事務局長H・中嶋氏が国王に謁見したことをきっかけに、遠隔医療が「始まった」と記す。また、ITUが1999年に多目的テレセンター事業を始め、1999~2000年にはジャカルとティンプー国立紹介病院を結ぶ遠隔放射線診断事業が行われたとする。X線画像と心電図画像の伝送に成功したというのが同公報の報告だ。

この資料群の中で、医療画像が実際に送られたことを最も明確に示す記録である。ただし、無名の地方病院を挙げた1998年7月の回線計画をジャカル事業が完了させたとは明記していない。2002年のITU報告と2004年の政府公報は、一つの事業の変遷、異なる段階、または関連する別事業を指している可能性がある。現存資料だけでは決められない。

インターネットの導入時期も別に扱う必要がある。保健省とITUの国別報告はいずれも1999年6月を導入時期とする。それでも、1998年の計画がインターネットを使ったことや、1999年の公衆向けサービスが直ちに医療画像を運んだことは証明されない。ネットワーク接続、病院の遠隔医療システム、完了した医療画像伝送は別々の主張であり、それぞれ根拠が要る。

記録から言えること

資料を並べると、ITUの調査、計画表に載った病院間回線、医療機器が未設置のまま稼働したテレセンター、そして1999~2000年の画像伝送を報告した政府資料という、複数の状態が見える。1998年7月の予定が守られたこと、すべてが同じ事業の連続した工程だったこと、あるいはインターネット・プロトコルを使ったことまでは証明されない。

経路が到達可能でもアプリケーションが未設置のことはある。端末があっても画像経路の試験が済んでいるとは限らない。一度の送信成功も、継続サービスや医療成果の改善を示さない。インフラの歴史を正確に記すには、接続両端、伝送媒体、機器の状態、試験日、観察された結果を分けて記録したい。

出典:ITU、CMDT98/102-E、遠隔医療プロジェクト、ITU『Telemedicine and Developing Countries』ブータン事例、ブータン保健省『Annual Health Bulletin 2004』「Bhutan Health Telematics Project」、ITU『Telecom World 2003』ブータン国別報告。