要約
- Balsamは1,125通の違法な商用メールを受けたとして112万5,000ドルの欠席判決を得たが、実際の運営者を特定して回収することができなかった。
- 裁判所は、RAA第3.7.7.3項が別の登録契約に入れるべき条項である一方、第5.10項はRAA上の第三者の権利を否定していると判断した。
- 判決が退けたのは第三者受益者としての請求である。下流契約の履行、開示の是非、ICANN自身の契約執行権までは判断していない。
勝訴判決だけでは相手に届かなかった
この事件で足りなかったのは裁判上の勝利ではない。第9巡回区控訴裁判所の公式判決によれば、Daniel Balsamは2005年10月から2006年5月までにadultactioncam.comを宣伝する1,125通の迷惑メールを受け取ったと主張した。2008年3月、連邦地裁はAngeles Technologyに112万5,000ドルの欠席判決を言い渡した。
判決は回収可能な相手を自動的に示さなかった。公開登録データには当初、Tucowsがレジストラ、Angelesが登録名義人として表示されていた。控訴判決は、その後AngelesがContact Privacyを利用したようだと記す。代理登録の仕組みについての詳細はBalsamの主張であり、完全な技術構成を審理して確定した事実ではない。
Balsamが頼ったのは、ICANNとTucowsのRegistrar Accreditation Agreement(RAA)第3.7.7.3項だった。登録名義人がドメイン名の使用を第三者に許諾した場合、不正使用による損害について責任を負う。ただし、法的請求につながる損害の合理的証拠を示した相手に、利用者を速やかに明らかにすれば別だという構造である。
判決、非公開の身元情報、開示しない場合の責任。この三つを結べば、Balsamの要求は一見明快だった。Tucowsに運営者を明らかにするか、判決額を支払うよう求めたのである。
しかし、その一文が誰にどの権利を与えるかは、文言だけでは決まらなかった。
条項は別の契約に置かれるものだった
RAA第3.7.7項は、レジストラに対し、各登録名義人との登録契約に所定の条項を含めるよう求めていた。第3.7.7.3項はその一つである。つまりRAAが課したのは下流契約に文言を入れる義務であり、ICANNやTucowsが被害を訴えるすべての人に直接約束したものではなかった。
第5.10項はさらに明示的だった。RAAはICANNまたはレジストラから非当事者への義務を生じさせず、登録名義人もその非当事者に含む。ICANNの過去契約一覧には2001年5月17日版が掲載され、ICANNのPool.com訴訟資料にも当時の契約が収録されている。
Balsamは、代理登録を扱う具体的な条項が第三者排除の一般条項に優先すると主張した。裁判所は、そのような当事者意思を示す証拠はないとした。別の契約に条項を入れさせることと、その条項で想定される人に上位契約の執行権を与えることは同じではない。
手続上の選択も決定的だった。Balsamは、契約違反、過失、民事共謀、確認判決の四つの請求がすべて第三者受益者という地位に依存すると認めていた。その前提が崩れると、独立した請求経路は残らなかった。控訴裁判所は再提訴を許さない棄却を維持した。
判決が決めなかったこと
本件を「開示義務は存在しない」と要約するのは広すぎる。裁判所が否定したのは、Balsamが主張した理論でRAAを執行する権利である。登録名義人が自らの登録契約に入った条項を無視できるとは述べていない。
判決は、Tucowsが第3.7.7項所定の別契約を結ばなかったという主張をBalsamがしていない点も指摘した。そのため、その契約の全文、想定受益者、履行状況は判断されていない。下流契約に基づく請求なら、当事者、文言、準拠法、原告適格を別に立証する必要がある。
ICANNの権利も失われていない。ICANNはRAAの当事者で、Balsamは違う。第三者に執行権を認めないことは、契約当事者の権利を消すことではない。ICANNが何を知り、どのコンプライアンス措置を選べたかは、この控訴の審理対象外だった。
ICANNの2010年5月付ドラフト助言は、この空白を別の角度から示す。同文書は「法的請求につながる損害の合理的証拠」も「速やか」もRAAでは定義されていないとし、裁判所または仲裁人による判断を想定した。
これは明確にドラフトである。5営業日への言及は提案された目安であり、拘束力ある規則でもBalsam判決の基準でもない。それでも、証拠の受領と責任の確定の間に、権限ある判断者が必要だという制度認識は読み取れる。
費用と権限は別の場所にあった
Balsamはメール、訴訟、回収不能の費用を負った。Tucowsは登録サービスを管理し、主張上は非公開の身元情報も保持した。ICANNは認定契約を執行する立場にあり、裁判所は原告適格と強制手続を扱った。
第3.7.7.3項は被害を受けた人が出す証拠に触れているため、その人に向けられた条項に見える。だがRAAは、その人を執行者にはしなかった。制度の運用上は登場する人が、法的な実行回路から外れていることはあり得る。
この分離には正当な理由もある。民間の要求書一通で顧客情報を開示すべきではない。正当な利用者には証拠基準、通知、反論の機会が必要だ。第三者を排除する条項は、認定制度が多数の訴訟でばらばらに解釈されることも防ぐ。
一方、執行権の集中は費用を外部化する。ICANNもレジストラも回収不能の判決を抱えていない。権限を持つ機関が証拠を受け取り、理由を示し、次の手続へつなぐ仕組みを用意しなければ、表に出た責任条項は被害者にとって作動しない。
限定された申立て手続
代案は自動開示ではない。必要な証拠を明示し、身元・支払い・アカウント変更の記録を保存し、申立人を確認する。証拠保全を害する事情がなければ顧客にも通知する、という限定手続である。
短い期限内に、権限ある受領者への保護付き開示、理由を付した拒否、一時保全、ICANN・規制当局・裁判所への移送のいずれかを決める。顧客は反論でき、申立人は次の判断者が誰かを把握できる。
これはRAA上の第三者受益権を新設するものではない。執行権を保持する機関に、記録と再検討が可能な窓口を運用させる設計である。
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