要約

  • ROYA Communications and Internet Services Company Ltd(AS210837)は、複製されたRIPE記録上では ASSIGNED(ORG-RI63-RIPE、イラク・モースル)とされる一方、Hurricane Electricの観測では2026年2月11日以降、全球経路表に現れていない。
  • 本稿の実行では権威あるRIPEオブジェクトの現在版を直接読めず、登録情報はすべて第三者ミラーの複製に依存している。
  • 複製は改訂日(2023-03-20 と 2026-09-24 の二群)、連絡先ハンドル(OA2932-RIPE と DUMY-RIPE)、/24の帰属(Pitline Ltd、TECHNOX-INTERNET-TEKNOLOJILERI、OMEGATECH-AS SC、45.151.234.0/24)の三つの論点で割れている。
  • PeeringDBの自己申告(2022年更新)と収集器のゼロ可視性は直接比較できず、休眠登録と稼働中のネットワークを区別する公開証拠は今回確認できていない。

登録は生きているが、経路は見えない

複製されたレジストリ記録の上では、AS210837の登録状態ははっきりしている。as-name は ROYA-Communications-and-Internet-Services-Company-Ltd、org は ORG-RI63-RIPE、admin-c と tech-c は OA2932-RIPE、status は ASSIGNED、作成日は 2021-08-26T11:45:54Z、last-modified は 2026-09-24T23:40:37Z とされる。組織オブジェクトの複製は、組織名を ROYA Communications and Internet Services Company Ltd.、国コードを IQ、登記番号を M.SH. A.-02-0000029678、org-type を OTHER、所在地をイラクのモースル(ニーナワー県)と記し、宣言された upstream の import/export の組として AS200697、AS212890、AS202354、AS50597、AS59458、AS203735 を挙げ、経路数は IPv4 0・IPv6 0 と表示している。 (https://ipgeolocation.io/browse/asn/AS210837)

経路の観測はこの絵を裏切る。Hurricane Electric の AS210837 のページは、このASNが2026年2月11日以降、全球経路表に現れていないと報告し、アナウンス済みプレフィクスは IPv4・IPv6 ともに 0、originate されたプレフィクスは1つ(193.30.241.0/24)、観測された BGP ピアは1つ(AS212330、Civilisation Information Technology, communication and internet services Co., LTD、イラク)、RPKI起点検証で valid とされたプレフィクスは0、と記している。 (https://bgp.he.net/AS210837) (https://ipv4.bgp.he.net/AS210837)

一次資料は読めなかった

この図の弱さは出発点にある。RIPEデータベースのウェブ照会ページを AS210837 で検索しても、返ってきたのはJavaScriptアプリケーションの外殻のみで、RPSLオブジェクトの本文は取得できなかった。つまり、権威ある aut-num オブジェクトの現在の改訂版を、本稿の実行は直接確認できていない。 (https://apps.db.ripe.net/db-web-ui/query?searchtext=AS210837)

RIPEstat の AS Overview の文書は、announced=true を「起点プレフィクスが少なくとも10の RIS フルフィード・ピアから可視であること」と定義し、トランジット専用のASNは announced=false と報告されうると注記する。したがって、announced=false という値単独では非稼働の証明にはならない。 (https://stat.ripe.net/docs/data-api/api-endpoints/as-overview) 今回の実行では、RIPEstat の AS210837 のページそのものの応答を取得できておらず、現在のアナウンス状態を RIPEstat から検証するには至っていない。 (https://stat.ripe.net/AS210837) 照会手段として、RIPEデータベースの逆引きクエリの公式文書も存在するが、今回の実行は権威あるオブジェクトの現在版の取得に結びつかなかった。 (https://docs.db.ripe.net/Types-of-Queries/Inverse-Queries)

ミラーが食い違う三つの論点

IPIPの複製(whois.ipip.net)は、as-block AS208189–AS214345(記述は RIPE NCC ASN block、mnt-by は RIPE-NCC-HM-MNT)が 2026-02-12T14:40:05Z に作成されたと示し、aut-num の last-modified は 2023-03-20T15:53:34Z、admin-c と tech-c は OA2932-RIPE、組織オブジェクトの last-modified は 2026-05-13T05:06:32Z と記し、sponsoring-org として ORG-DTUL2-RIPE を示し、route および route6 オブジェクトは見当たらない。 (https://whois.ipip.net/AS210837)

ip.cc の複製は、このASNのIPv4プレフィクスをちょうど1つ、193.30.241.0/24(国は Turkey、説明は TECHNOX-INTERNET-TEKNOLOJILERI、RIR は RIPE)と列挙し、その複製 whois は status ASSIGNED、org ORG-RI63-RIPE、sponsoring-org ORG-DTUL2-RIPE、ロールオブジェクト OA2932-RIPE(Huthaifa Alaani)、組織の last-modified は 2024-06-27 と示す。 (https://ip.cc/topic/asn/AS210837/)

Robtex の記録は、単一の/24の帰属を OMEGATECH-AS SC と示す点で上の二つと食い違い、その aut-num の改訂日は 2023-03-20 の群に属する。 (https://robtex.com/en/as-numbers/AS210837)

さらに IPInfo、IPTrace、TheIPAPI の複製も同一のASNの記録を返したが、本稿が数値的主張を立てる箇所は、これら三つの複製を根拠としていない。 (https://ipinfo.io/AS210837) (https://iptrace.net/en/as/210837) (https://theipapi.com/asn/210837)

まとめると、同じ aut-num を名乗る複製の間で、last-modified は 2023-03-20 と 2026-09-24 の二群に割れ(ipgeolocation.io とメインの bgp.he.net が 2026-09-24、IPIP、ip.cc、Robtex、IPTrace、IPv4版の bgp.he.net が 2023-03-20)、連絡先ハンドルは OA2932-RIPE と DUMY-RIPE が並立し、単一の/24の帰属は Pitline Ltd(Hurricane Electric)、TECHNOX-INTERNET-TEKNOLOJILERI(ip.cc)、OMEGATECH-AS SC(Robtex)、45.151.234.0/24(45.151.232.0/22 のより具体的な広告として CIDR Report)の四つの説明に分かれている。これらの分裂は、前節までに引用した複製の記述から直接導かれる。

収集器が示すものと、示せないもの

CIDR Report は、AS210837 は現時点でプレフィクスのアナウンスにも、可視なトランジットASとしての利用にも使われておらず、そのスナップショットの直近7日間には 45.151.232.0/22 のより具体的な広告として 45.151.234.0/24 が1件記録されたとする。ただし、この7日間の窓はスナップショットの日時が不明なため相対的なものである。 (https://www.cidr-report.org/cgi-bin/as-report?as=AS210837&view=6447)

PeeringDB のネットワーク 30448 は ASN 210837 を ROYA Communications and Internet Services Company Ltd.(別名 Roya ISP)として掲載し、種別は Cable/DSL/ISP、IPv4プレフィクス 22、IPv6プレフィクス 29、トラフィックは 5〜10 Gbps、スコープは中東、IRR の as-set は AS-ROYA-ISP、ルートサーバは r.roya-isp.com、ルッキンググラスは lg.roya-isp.com、ウェブサイトは roya-isp.com、RIR 状態は ok(2024-06-26 更新)、レコード自体の更新は 2022-07-27 と自己申告している。 (https://www.peeringdb.com/net/30448) これらの数値は2022年時点の自己申告であり、収集器が示すゼロ可視性と直接比較することはできない。「経路0」という表示も、IRR の route オブジェクトの数なのか BGP のアナウンス数なのか、複製の上では曖昧なまま残る。

先行報道と、まだ答えられていない問い

2026年2月11日の可視性の喪失と収集器間の矛盾自体は、先行するBTWの報道がすでに確立しており、その時点でも一次レジストリの照会は行われていなかった。 (https://btw.media/en/as210837-roya-routing-continuity-gap) 先行報道はさらに、登録から運用の継続性への証拠連鎖を描き、現在のプレフィクス・経路・RPKI状態・継続性イベントを断定できる生のレジストリ応答も観測系の応答も得られなかったと結論づけている。 (https://btw.media/en/roya-as210837-what-routing-evidence-can-and-cannot-prove)

だから本稿が追加できるのは、この記録の現状の写像と、その分裂の明細である。どの公開証拠が、休眠しているが生存する登録と、稼働中のネットワークとを区別できるのか。一次レジストリの応答も RIPEstat のペイロードも得られず、複製が改訂日と、この起点が実際に運ばれていたプレフィクスについて食い違う現状では、公開情報だけではこの問いに答えられていない。本稿は事実関係の報告にとどめ、ROYA の現在の運用状態について断定しない。対象ディレクトリの項目は次のとおり。 (https://btw.media/ja/directory/roya-communications-and-internet-services-company-ltd-profile-2)