要約
- Archieは、離れたFTPサイトのディレクトリ情報をファイル名と場所で検索できるようにした。掲載されたファイルを検索サーバーに複製したわけではない。
- 1991年5月のマニュアルによると、夜ごとに対象の一部を巡回する一方、各サイトの更新はおよそ月一回だった。結果の確かさを考えるには、観測時点を知る必要があった。
名前を見つけることと、ファイルを得ること
検索窓に名前を入れ、場所が返ってくる。そこで仕事が終わったように感じるかもしれない。Archieでは、その返答は次の接続先を示す案内だった。ファイルを置く場所と、その時点でそこから取得できるかどうかは、依然として別の問題だった。
1991年5月20日付のマニュアルは、Archieが約600のFTPアーカイブを把握していたと記す。データベース側の処理は毎夜、そのうちの一部へ匿名FTPで接続し、再帰的なディレクトリ一覧を受け取った。サイト側に一覧ファイルが用意されていれば、それを使うこともできた。各サイトの更新間隔は約一か月。圧縮された一覧はMcGill大学の quiche.cs.mcgill.ca に置かれ、Internet利用者は匿名FTPで取得できた。Archieが一元化したのはファイルそのものではなく、別々のサーバーにある名前とパスを探すための記録だった。(1991年版Archieマニュアル)
当時のコマンドは、この役割分担を隠していない。prog は名前を検索し、ホスト名、パス、容量、更新日時などを返す。site は登録済みサイトの一覧を表示し、list はサイトの一覧がいつ更新されたかを示した。検索に当たった後は、利用者自身が元のアーカイブに接続してFTP転送を行う。1992年のRFC 1325も、検索結果としてアーカイブ名、IPアドレス、ディレクトリ上の位置を挙げる。1994年のRFC 1689はArchieを「二次情報源」と位置づけ、実ファイルはFTPでアーカイブから取得すると説明する。(RFC 1325、RFC 1689)
この仕組みには更新の時計があった。最後に一覧を取得した後でディレクトリが変わることはある。ファイルが移動・改名・削除されても、次の収集までは以前の記録が残りうる。マニュアルは list コマンドで前回更新時刻を確かめられるようにしていたが、検索のたびに遠隔サイトを確認するとは言っていない。検索結果から分かるのは、名前と場所がその時点で観測されたことまでだ。現在の存在や転送可能性を示すには、元サイトの状態と実際の取得が必要になる。
対象範囲にも明記された限界があった。マニュアルはデータベースに含まれるのはUNIXサイトだけとし、特定サイトに検索を絞ることもできないと説明する。これは単なる使い勝手の問題ではない。対象に含まれるアーカイブを決め、結果をどこまで比較できるかを左右する。共有インデックスは多数の保管場所を探しやすくするが、Internet全体の完全な台帳でも、各アーカイブを同じ形式にそろえる仕組みでもなかった。
1991年5月のマニュアルは、約70MBのデータベースと、更新・検索が稼働中のSun 4/280に与える目立った負荷にも触れている。Archieはまだ開発段階で、ソフトウェアを外部サイトへ配布する段階にはなく、サーバーを他の場所へ広げるのは将来計画だった。更新頻度、保管容量、問い合わせ処理は一体の設計課題である。巡回を頻繁にすれば観測の古さは抑えられるが、遠隔アーカイブへのアクセスと、収集結果を処理するホストの仕事は増える。
数字を比べるときは測定日をそろえてはならない。EmtageとDeutschが1992年冬のUSENIX会議で発表した論文には、1991年10月30日時点の表がある。既知のサイトは1,025、インデックス済みは886、ファイル参照は1,502,976件、重複を除いたファイル名は686,104件だった。参照件数と固有名数は異なる。同じ名前がネットワーク上で唯一の物体を指すとは限らない。1992年5月のRFC 1325は約900のアーカイブに約150万のファイル名があり、Archieサーバーが世界に9台あると記録する。近いサーバーを選べばMcGillの負荷をいくらか減らせるとも述べる。これはアクセス地点の広がりと負荷分散の意図を示すもので、各サーバーの一覧が完全に同じ、または同じ鮮度だった証拠ではない。(EmtageとDeutschのUSENIX 1992年論文、RFC 1325)
1993年11月1日更新のArchie項目を載せたRFC 1689は、商用サーバーが約27台あり、一部は一般公開されていなかったとする。McGillの一台から複数のサーバーへ広がったことで接点は増えた。それでも、検索と提供元の責任が一つになるわけではない。ファイルの実体を保つのはアーカイブの運営者であり、Archieがまとめたのは、その名前を以前どこで見かけたかという記録だった。(RFC 1689)
Archieの意義は、中央の検索結果を遠隔ファイルの現在形に見せかけたことではない。公開アーカイブを探せるようにしながら、それを自分が所有しているとは主張しなかった。問いは「このファイルはどこにありそうか」から「その記録はいつのもので、今も提供元から取得できるか」へ移った。検索は証拠への道筋であって、証拠の出所そのものではない。
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