要約

  • almazcloud.networkの運営者AO ALMAZ(AS210328)は、BGPアナウンス(1プレフィックスあたり月額99ドルから)、Cloud Connect(10G物理ポートあたり月額499ドルから、Yandex・Sberbank・ROSTELECOMへの直接物理ピアリング接続を明示)、NO-BGP GREトンネル、法人クラウドVPN、クラウド再販の5製品を自社サイトで販売している[1]。
  • しかしHurricane Electric、ping.pe、IPregistryの観測では、AS210328は3つのIPv4プレフィックス(77.91.65.0/24、185.136.15.0/24、185.218.138.0/24)を originate し、うち2つがRPKI有効なROAを持ち、1つ(185.218.138.0/24)はNOT-FOUNDである[3][4]。上位接続はAS202425、AS201814、AS48693の3つで、観測されたピアと下位ネットワークはゼロである[5][7]。
  • 現行のRIPE aut-num(最終更新2026年8月21日)は輸出入ポリシーとしてAS48693のみを記述しており、2021年当時の旧版(AS12695参照、as-name ALMAZCLOUD)とは内容が異なる。複数のミラー間でオブジェクトの版が分裂している[2][10]。
  • PeeringDBの記録は2022年7月27日時点で凍結されており、プレフィックス0件と表示され、現在のルーティング活動と矛盾する[6]。Yandex、Sberbank、Rostelecomへの直接物理ピアリングを裏付ける独立系データは観測されていない[1][5][6]。

商業層は運営者の自己申告にのみ存在する

almazcloud.networkのランディングページは、この対象に関する商業情報の唯一の情報源である。同社はDIAMOND(露語でALMAZ)を名乗り、次の価格でサービスを提示する:Cloud Connectは10G物理ポートあたり月額499ドルから、BGP Announcementsはアナウンスプレフィックス1本あたり月額99ドルから、NO-BGP GREトンネルは100Mbps帯域あたり月額99ドルから、法人Cloud VPNはユーザー1人あたり月額9ドルから、Cloud Resellingは接続クラウド1件あたり月額99ドルから。中でも重要なのは「Yandex、Sberbank、ROSTELECOM、Selectedおよびその他の著名クラウドプロバイダへの直接物理ピアリング接続」という文言である[1]。

この文言は自社の広告文であって、登録データやルーティング観測では裏付けが取れていない。PeeringDB(記録19111)は、AS210328をNSP型として3つのモスクワの施設(Berzarina Data Center、IXcellerate MOS1、Moscow M9)に登録するが、これはコロケーションの所在を示すのみで、名指しされたクラウド企業との相互接続を証明しない[6]。IPtraceは同じ施設にCloudflare、MegaFon、RETN、Selectel、Digital Network(AS12695)が同居していると示すが、同一施設への収容は直接ピアリングではない[9]。

Yandex Cloud自身のInterconnect価格文書は、この種の専用物理接続が実際には大手クラウド運営者の管理下にある商用回線商品であることを示しており、99〜499ドル/月という価格帯が既存の大手事業者の料金体系とどう位置づけられるかの比較基準になる[16]。ただし、Yandexの文書はAO ALMAZとの関係を何も証明しない。

ルーティング層が示す実体

独立系の観測は一貫して狭いネットワーク像を示す。Hurricane Electricは3つのIPv4プレフィックスのorigin、2件のアナウンス、2件のRPKI有効、512個のIPv4アドレスを記録する[3]。ping.peはプレフィックス別のRPKI状態を明確化する:77.91.65.0/24と185.136.15.0/24はVALID、185.218.138.0/24はNOT-FOUNDでROA保護がない[4]。ピア観測では、上位3社(AS202425は290パス、AS201814は267パス、AS48693はわずか1パス)に対し、ピア0件・下位0件である[5]。IPregistryも「直接ピアリング契約なし」「下位ネットワークなし」と結論づける[7]。

この非対称性は重要である。BGPアナウンス販売は、顧客プレフィックスがAS210328自身の下で(またはGRE製品経由で)アナウンスされる形態ならば、観測上の下位ASNを必ずしも生じない。つまり「0下位」は商業活動の不成立を証明しないが、少なくとも従来型のトランジット顧客関係は観測されていないことを意味する。逆に、月額499ドルの「Yandexへの直接物理ピアリング」は、観測されたどの接続とも整合しない。観測された上位3社はYandex、Sberbank、Rostelecomのいずれでもない[1][5]。

レジストリ層の書き換え

RIPE Databaseの現行aut-num AS210328は、as-name ALMAZ、組織ORG-ZA238-RIPE(AO ALMAZ、登記番号1196501003357)、import「from AS48693 accept ANY」、export「to AS48693 announce AS210328」、作成2021年12月27日、最終更新2026年8月21日である[2]。一方、IPIP.NETやIPtraceのミラーには旧版(as-name ALMAZCLOUD、import/export AS12695、最終更新2021年12月28日)が残る。2026年8月21日の書き換えは、ポリシーをAS48693単一に集約した点で、BGP観測(AS48693経路がわずか1パス)と食い違う。AS48693はウクライナのRices Privately owned enterpriseであり、ロシア国内大手クラウドではない[2][10][5]。

注目すべきは、RIPEの個人データ除去(dummification)方針の文脈である。RIPE NCCは2026年時点で個人データの扱いを議論しており[12]、その改善提案も公開されている[13]。オブジェクト内の「personal data has been removed」注記とプレースホルダのメールアドレスはこの方針の産物だが、一方でプレフィックスの登録説明には「Vlad Cojuhari」や「Foton Telecom CJSC」といった第三者名が残る。つまり、RIPEデータ除去の現状が不完全である実例が、このAS内で見られる[2][10]。

データプロバイダ間の見解の相違

ASNメタデータはプロバイダ間で大きく異なる。IPinfoは「ピア0、上位0、下位0、ping応答IPなし」と報告する[8]。ping.pe、Hurricane Electric、IPregistryは2〜3の上位接続を観測している。IPinfoの値は収集範囲の制約を示唆し、単独では判断材料にならない。対照的に、複数ソースで一致する事実(プレフィックス3、RPKI有効2、上位3、ピア0、下位0)は高い信頼度で成立する[3][4][5][7]。

PeeringDBの「プレフィックス0件」表示と2022年7月の最終更新も、自己申告ディレクトリの陳腐化を示す例である。運営者は2021年12月にASNを取得した直後にプロフィールを作成したが、2026年の実際のルーティング活動(ROA2件、アナウンス2件)を反映していない[6]。

Qratorのas-setと参照の側面

radar.qrator.netのAS-ALMAZCLOUD-NETWORK as-setは、同ASが自らのメンバーシップ集合を公開しているか、少なくとも第三者がその集合を追跡していることを示す。as-setの存在自体はネットワーク運用の証拠になるが、内容が空または陳腐化していれば、ピアリング契約審査の実務的障害になる[14]。

BTWの前回調査(2026年9月11日の記事群と9月19日のブリーフィング)は、登録層とルーティング層の分離を確立した[15]。本稿の新規性は、商業層(価格、製品定義、名指しされた相互接続先)を初めて系統的にその観測の裏付けと突き合わせた点にある。

証拠の境界

本稿の限界は明確である。第一に、RIPEオブジェクトのフィールド値はミラー経由の引用であり、公式のRIPE Web UIが検証時に直接取得できていない。第二に、「下位0件」「ピア0件」は観測収集器の視界の制約であり、不存在の証明ではない。第三に、物理相互接続の真偽は外部から直接観測できない。公衆インターネット上のルーティング観測では、Ixcellerate等の施設内で確立され、かつBGPアナウンスに現れないプライベートピアリングは原理的に不可視である。本稿は、商業宣伝が独立系データと矛盾することを文書化するものであり、サービスが提供されていないと断定するものではない。

参考資料

  1. https://almazcloud.network/
  2. https://apps.db.ripe.net/db-web-ui/query?searchtext=AS210328
  3. https://bgp.he.net/AS210328
  4. https://records.ping.pe/210328
  5. https://records.ping.pe/peers/AS210328
  6. https://www.peeringdb.com/net/19111
  7. https://ipregistry.co/AS210328
  8. https://ipinfo.io/AS210328
  9. https://iptrace.net/en/as/210328
  10. https://whois.ipip.net/AS210328
  11. https://ipgeolocation.io/browse/asn/AS210328
  12. https://docs.db.ripe.net/removal-of-personal-data/
  13. https://labs.ripe.net/author/kranjbar/proposed-improvements-to-dummification-of-personal-data-in-the-ripe-database/
  14. https://radar.qrator.net/as-set/AS-ALMAZCLOUD-NETWORK
  15. https://btw.media/en/almazclouds-as210328-registration-versus-real-network-operation
  16. https://yandex.cloud/en/docs/interconnect/pricing
  17. https://btw.media/ja/directory/almazcloud-network