要約

  • Wasabiが最低課金期間を90日から30日に変更した場合、新しい条件が適用されるのは変更後にアップロードしたオブジェクトだけだ。変更前のオブジェクトには従来の期間が残る。
  • バージョン管理を無効にしたバケットでも、上書きに伴って削除された旧オブジェクトが課金対象に残り、新オブジェクトには別の最低期間が始まることがある。
  • 現在の容量、削除済みで課金が続く容量、アカウントごとの最低料金、契約価格は別々に確認する必要がある。月末のファイル一覧だけでは費用全体を説明できない。

月末に請求を締めれば、その月の利用に関する責任も一区切りつく。そう考えたくなるが、ストレージでは請求の区切りとオブジェクトの課金期間が一致するとは限らない。Wasabiの公開文書は、二つの日付を明確に分けている。

同社が最低ストレージ期間を90日から30日に変更する場合、30日の条件が適用されるのは変更後にアップロードされたオブジェクトだけだ。それ以前にアップロードしたものには90日の条件が残る。新しい料金条件を得た日と、すべての保存データがその条件に移る日は同じではない。そもそも文書に変更時の扱いが書かれていることは、どの顧客でも自由に短縮できる権利を意味しない。最低ストレージ期間の説明。

変更を実施すると、進行中の請求期間はいったん終了し、その時点までの利用に対する請求書が発行され、カードに請求される。新しい請求期間は変更日から始まる。しかし、この処理は古いオブジェクトの90日という条件を取り消さない。支払いを区切る日付と、個々の課金責任を区切る日付は、別の役割を持つ。

購買部門が期間短縮を成果として報告した後も、経理部門が従来の条件に由来する費用を見つけることはあり得る。直ちに契約不履行や請求ミスを疑う前に、どちらの部門がどのアップロード世代を見ているかをそろえる必要がある。

上書きしても消えない経済上の履歴

問題を複雑にするのは、ファイル名からアップロードの回数を読み取れないことだ。アプリケーションが毎日同じ名前でファイルを更新しても、一覧には現在の一つしか表示されない。保存しているデータ量が変わらないように見えても、課金上の履歴は増え得る。

Wasabiによると、バージョン管理のないバケットでオブジェクトを上書きすると、以前のオブジェクトは暗黙に削除される。ただし、削除した時点で必ず課金が止まるわけではない。旧オブジェクトには最低期間などの規則が適用され続け、新しいオブジェクトには独立した最低期間と最小課金サイズが適用される。

公式の説明例では、1 MBのオブジェクトを同じ名前で30日間、毎日アップロードすると、最大で30世代が課金上重なる可能性がある。現在の一世代に加え、最大29世代が削除済みの課金対象となる。これは仕組みを示す例であり、実際の顧客請求を検証した結果ではない。また、30個の取り出せるバックアップが保存されているという意味でもない。上書きと削除済みストレージの課金。

通常のオブジェクトストレージの従量課金では、最低期間は原則90日である。予約容量のRCSでは30日で、Wasabi Cloud NASやSurveillance Cloudの従量課金にも30日の規則がある。製品や個別契約を確認せず、すべてを90日として扱うのは正しくない。

90日の説明例では、初日に保存して16日目に削除したオブジェクトは、15日分のアクティブストレージと75日分の削除済みストレージとして計算される。ここで継続するのは最低限の支払い責任であり、復旧できる権利ではない。Wasabiは、実際に削除されたファイルは復元できないと説明している。払い続けているから取り戻せる、という推論は成り立たない。削除後の課金と復旧の扱い。

バージョン管理を有効にした場合の削除マーカーは、古い版そのものの完全な削除とは別に考えなければならない。不変性の設定で保護され、まだ保存されているオブジェクトはアクティブストレージである。課金の最低期間、データを残す義務、復旧のための保存期間は、同じ「保持」という言葉でまとめられがちだが、互いに代わりにはならない。

単価の変更には、もう一つの適用範囲がある

Wasabiは2026年7月1日から、通常のHot Cloud Storage従量課金の公開価格を、北米、欧州・中東・アフリカ、アジア太平洋で1 TB当たり月額7.99米ドルとしている。既存の対象顧客では、7月1日以降に始まる最初の請求期間から新価格が適用される。この日付は単価のための日付であり、オブジェクトの最低期間を一斉に変更するものではない。価格改定の通知、価格改定のFAQ。

RCSにはさらに契約の区切りがある。新規契約や更新には新しい基準価格と期間・容量に応じた割引が使われる一方、7月以前に発効した既存契約は、その契約期間中、一般的な値上げの対象外とされる。ただし超過利用は別扱いで、7月1日から新価格で課金される。旧契約があるから追加利用まで旧価格だとは限らない。

個別に合意した価格やPay-Go Flexも一般的な改定とは範囲が異なる。販売代理店やサービス事業者経由の利用者は、自分の契約に適用される価格を確認する必要がある。公開単価だけでは税や有料の追加サービスを含めた最終請求額も分からない。本稿は、各社の現行価格を比較して最安サービスを決めるものではない。

購入担当者が管理すべきなのは、価格、容量契約、オブジェクトの最低期間が、それぞれどの利用に適用されるかだ。この三つを一つの更新日で管理すると、古いオブジェクトの費用や超過料金を見落としやすい。

一つの請求書にまとまっても、下限は一つとは限らない

通常の従量課金には、アカウント当たり月1 TBのアクティブストレージ最低料金がある。使用量が下限未満なら、実際のアクティブストレージ料金と不足分を埋める料金の合計が、公開価格で7.99米ドルとなる。オブジェクトが一つもない場合も、この下限は適用される。削除済みで最低期間が残るストレージの料金は別の項目であり、月7.99米ドルが請求総額の上限になるわけではない。月額最低ストレージ料金。

管理用アカウントとサブアカウントには、それぞれ最低料金が発生する場合がある。公式の例では、二つのアカウントの使用量が合計750課金GBでも、合計2 TB分の下限があり、アクティブストレージ料金の最低合計は15.98米ドルとなる。この額は実利用分と不足分の補填を合わせたもので、実利用料金に15.98米ドルを丸ごと上乗せする意味ではない。特定のパートナー契約にも同じ価格が適用されるとは断定できない。

集中管理が費用の下限まで統合するとは限らない点は、顧客ごとに環境を分離するサービス事業者にとって重要である。技術的な隔離単位が経済的な最低購入単位でもあるなら、画面上の合計容量だけでは収支を説明できない。

オブジェクト自体にも別の下限がある。4 KB未満のファイルは4 KBとして課金される。小さなオブジェクトに対するこの調整と、アカウント当たり1 TBの月額下限は異なる仕組みだ。保存された複数の版やバケットのログも課金される。何が差額を生んだかを調べるには、サイズ調整、最低期間、アカウントの数を分けて考える必要がある。従量課金の公開FAQ。

使用量の数字を同じ物差しにそろえる

Wasabiの計測では、現在の調整前の容量、最小課金サイズを反映したアクティブ容量、削除済みで最低期間が残る容量を区別する。現在のファイルの合計は、最後の項目を十分に表さない。頻繁に上書きするアプリケーションでは、現在量が一定でも課金対象量が異なる動きをすることがある。

単位もそろえなければならない。WasabiはGB、TBという表記を使う一方、計算は二進法による。1課金TBは1,099,511,627,776バイトであり、同社の課金GBで1,024に相当する。十進法の容量とそのまま比較すれば、料金とは無関係の換算差が生まれる。これは追加料金の仕組みではなく、数量の定義の問題である。課金計算に使う単位。

ダウンロードできる利用明細には、削除済みバケットの行が残ることもある。そのため同じバケット名が複数現れても、それだけで二重請求とはいえない。バケット番号とUTCで示された計測区間を見れば、別の記録かどうかを判断しやすくなる。新しいバケットがCSVに現れるまでには、最大24時間と一つの請求サイクルを要することがある。請求と利用明細の説明。

コンソールの見込み額も、現在の利用からの予測であって確定請求額ではない。新規利用を直ちに反映して予算を止める装置と考えるべきではない。記録の反映を待つ必要と、利用が有料であることは両立する。表示されない一日を無料とみなせば、予算側の計測が先にずれてしまう。

長く置くデータには、合理的な交換になり得る

この仕組みは、低価格の容量が必ず割高になることを示してはいない。長期間保存し、若いオブジェクトをあまり上書き・削除しない用途なら、現在量と削除済み課金量の差は小さくなり得る。公開された最低期間を受け入れる代わりに、容量単価や通常利用の料金体系を選ぶことは合理的である。

ただし、データ転送の「無料」には利用条件がある。Wasabiは月間ダウンロード量がアクティブストレージ量を超えない利用を適切な対象とし、繰り返し超過する場合には制限や停止を行う可能性を示している。この場合に誰にも共通する1 GB当たりの超過単価が示されているわけではない。予算表に架空の超過価格を置くことも、無料を無制限と読み替えることもできない。APIにも非効率で過大な負荷に対する利用条件があり、七月の価格改定でこれらの方針は変わっていない。本稿は具体的な顧客への制裁事例を確認したものではない。

契約の選択は、別の自由との交換にもなる。通常の従量課金に固定の契約年数がなくても、オブジェクトの最低期間は残る。Pay-Go CommitやRCSには1年、3年、5年の契約がある。Pay-Go Commitは月ごとに約定容量と実利用の大きい方を基準とし、RCSは30日のオブジェクト最低期間と容量の約束を組み合わせる。短いオブジェクト期間が、契約全体の短さを意味するわけではない。製品別の契約条件。

RCS Cappedは購入した容量に達すると、新しいアップロードを止める仕組みを持つ。容量の確認は日次で行われ、空きを確保するか追加容量を購入するまで、新規書き込みが制限される。これは既存データの読み出しまで拒むという説明ではないが、費用の上限と無制限の書き込み継続を同時に約束するものでもない。

価格が予測しやすいかどうかは、単価の見やすさだけでは決まらない。誰がどの世代のオブジェクトを作り、どの条件がいつまで残るかを説明できて初めて、単価は使える予測材料になる。締め日にファイルを数えるだけでは、その履歴は戻ってこない。