要約
- 対象となるIridium株1株につき、27ドルの現金と交換比率に応じたRocket Lab株が交付される。54ドル相当が必ず届く契約ではない。
- Rocket Labの算定価格が67.50ドルを上回り112.50ドルを下回る場合、株式部分をおおむね27ドルに保つよう比率が変わる。下限以下では0.4000、上限以上では0.2400に固定される。
- 算定価格は最初の効力発生日の2完全取引日前までの連続10営業日VWAPだ。比率確定後も株価は動くため、レンジ内でも交付時の市場価値は54ドルからずれ得る。
9月に決め、価格は2027年に測る
Iridiumは8月26日、最終版の委任状・目論見書を提出した。臨時株主総会は9月24日午前8時30分(米東部時間)にオンラインで開かれ、基準日は8月21日である。合併契約の採択には、議決権を持つ発行済み普通株式の過半数の賛成が必要だ。投票に参加した株主だけを分母にする多数決ではない。
株主が9月に判断する一方、両社が見込む完了時期は2027年半ばだ。Rocket Lab株の交付数を決める価格観測期間は、クロージングが近づくまで始まらない。つまり株主は、実際の交換比率が存在しない段階で、その決定方法を承認する。
6月の発表は1株54ドルという名目価値と約80億ドルの企業価値を掲げた。54ドルは契約の中心を示すには便利だが、支払手段を表してはいない。現金27ドルは固定され、もう27ドルはRocket Lab株で目指す価値である。その株式部分を安定させる仕組みに境界がある。
中央部は水平、両端は株価に開く
交換比率は3段階に分かれる。契約上のRocket Lab株価が67.50ドル以下なら0.4000株。67.50ドルを上回り112.50ドルを下回るなら、27ドルをその株価で割り、小数第4位までに丸める。112.50ドル以上なら0.2400株だ。
境界で計算すると設計が見える。67.50ドルの0.4000株は27ドル、112.50ドルの0.2400株も27ドルである。その間では株価が下がるほど交付株数が増え、上がるほど減る。丸め誤差を除けば株式部分が約27ドルに保たれ、現金と合わせて約54ドルになる。
下限を割ると、株数はもう増えない。計算例として算定価格が60ドルなら、0.4000株は24ドルで、合計は51ドルになる。50ドルなら株式部分は20ドル、合計は47ドルだ。これは予想株価ではなく、公表式の性質を示す例にすぎない。
上限を超えると、株数はもう減らない。125ドルなら0.2400株は30ドル、合計57ドル。150ドルなら株式部分36ドル、合計63ドルになる。
この価格カラーは変動をなくすのではなく、誰が負担するかを変える。中央ではIridium株主の株式対価が比較的安定する代わりに、Rocket Lab既存株主は可変の発行株数による希薄化を負う。67.50ドルより下では0.4000の上限が追加希薄化を止め、さらなる下落をIridium側に渡す。112.50ドルより上では0.2400の下限が売り手の上昇参加を残し、買い手側の市場価値負担を増やす。
54ドルを固定買収価格と呼べば、このリスク移転が消えてしまう。
VWAPが株数を決め、残る2日が価値を動かす
契約は発表日や株主総会日の終値を使わない。「Rocket Lab株価」は、最初の効力発生日の2完全取引日前を最終日とする、Nasdaqの連続10営業日の出来高加重平均価格である。Bloombergのデータを用い、掲載がなければ両社が選ぶ別の権威ある情報源を使う。
10日平均は1日の極端な値動きが交換比率を支配するのを抑える。しかし、価格リスクそのものを消すわけではない。株主総会時点では観測期間がまだ遠く、どの段階に入るか分からない。観測期間が終わって初めて、実際の比率を計算できる。
さらに、その後に2つの完全取引日が残る。比率はVWAPで固定されても、Rocket Lab株は取引され続ける。効力発生日や受取後の市場価格は、株数を決めた平均価格と異なり得る。最終委任状が、投票時点では実際の比率も株式対価の市場価値も分からないと注意する理由である。
資料は8月18日の終値を例にし、その価格なら交換比率は0.3411だったと示す。これは暫定比率ではない。レンジ中央の計算例だ。この例では、合併前のRocket Lab株主が統合後の議決権の約95%、旧Iridium株主が約5%を持つと見積もられた。実際の比率とクロージング時の発行済み株式数で最終割合は変わる。
したがって交換比率は、対価だけでなく統合会社の分母と議決権を決める。
HSRの時計は止まったが、免許の時計は動いている
Hart-Scott-Rodino法に基づく待機期間は8月12日午後11時59分(米東部時間)に満了した。1つの条件が前進したことは確かだ。ただし、米国の規制手続きがすべて終わったことも、その後の反トラスト措置が不可能になったことも意味しない。
Iridiumの価値は法人だけではなく、世界的な衛星網とその運用許可にある。FCCは、宇宙局、ゲートウェイ地球局、包括的な地球局、実験局、国際Section 214認可の支配権移転を承認しなければならない。案件がTeam Telecomに付託される可能性もある。衛星・通信法、国家産業安全制度、外国投資審査、各国の通信免許も別の判断主体を生む。
契約上の当初終了日は2027年6月28日だ。一定の規制承認または法的制約だけが残る場合、9月28日へ、さらに同じ条件なら12月28日へ自動延長できる。
規制の遅れは価格境界を変更しない。しかし観測期間を別の相場環境へ移し、恒久資金の不確実性と中間期間の経営制約を延ばす。法務カレンダーが対価に影響するのはこのためだ。
所有前の同意権
完了または契約終了まで、Iridiumは通常の事業運営を続け、組織、重要許可、衛星、コンステレーション、主要な取引関係を維持するよう努める。例外に該当しない重要行為にはRocket Labの同意が必要になる。
対象には、他社買収、新たな重要事業への参入、資産処分、開示済み予算を超える設備投資、重要な投資、許容例外以外で500万ドルを超える新規借入、特定の重要契約、衛星運用や通信許可の重大な変更が含まれる。Rocket Labにも、資本構成の変更や合併を妨げる行為を中心に、より限定された制約がある。
同意権は法的所有権ではない。Iridiumの取締役会と経営陣は引き続き会社を運営し、株主はまだ承認権を持ち、規制当局は免許移転を決める。買い手は契約時に評価した資産が大きく変わらないよう守る権利を得たにすぎない。
ただし、衛星事業は待機中も止まれない。保守、顧客契約、周波数機会、次世代投資には判断が要る。非公開の開示スケジュールや例外で合意済み行為が許されている可能性があり、公表条項だけで個別案件の禁止を断定してはならない。それでも、重要な新規判断に2社の承認中心が生じた事実は残る。
2億2,362万ドルは万能の補償ではない
Iridiumがより優れた提案を受け入れるために契約を終了する場合や、一定の推奨変更、勧誘禁止義務の違反などでは、Rocket Labに2億2,362万ドルを支払う可能性がある。一部の終了前に買収提案があり、終了後12カ月以内に条件を満たす代替取引を実行した場合の条項もある。最終委任状によれば、6月26日時点の当事者計算による株式価値の約3.75%だ。
必要な規制承認を得られないという理由だけで、この支払いが発生するわけではない。またRocket LabからIridiumへのリバース・ブレークアップ・フィーはなく、終了時に相手方費用を一律補填する規定もない。
現金部分には別の負担がある。Rocket Labは36億ドル、364日物のシニア担保付ブリッジ・ローンのコミットメントを確保した。手元資金と債務または株式調達を組み合わせて現金対価を支払い、ブリッジを恒久資金で減額または置き換える予定だ。8月26日時点で、その構成と条件は未確定だった。
株式を増やせば既存株主が希薄化し、債務を増やせば利払い、担保、借換リスクが増える。Rocket Labは同時にNeutronを開発し、統合後にはIridiumの将来のコンステレーション更新も負担する。価格カラーは売り手に渡す株数を決める。恒久資金は固定された27ドルの現金を誰が負担するかを決める。
54ドルは中央を示す座標としては有用だ。受取額として使うなら、価格帯、観測時点、規制、資金調達を必ず添える必要がある。
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